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5 天の川をわたって
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しおりを挟む「オレは先輩といて、幸せになろうとしなかった。それは先輩にも伝わっていて、だから先輩もオレといて、幸せを感じることができなかった。先輩には悪いことをしたと思います。
でも、卯月先輩なら、自分で自分の幸せをつかみとれる。お母さんも、今はもういない人間を惜しんでばかりいないで、幸せは自分でつかみとってください」
「は、はぁ~……?」
先輩の母親の口元が、片方だけ持ちあがった。
「なんなの、あんた? おとなに対して、上からエラそうに! あなたみたいなガキに、何がわかるって言うのっ!? 幸せが何かも、人を愛することも、どうせなんにもわかってないくせにっ!」
「ママ、お願い、はずかしいからやめてっ!! みんなが見てるっ!! 」
先輩が涙声でさけぶ。
顔をあげると、コンビニの窓越しに、立ち読みをしている人たちと目が合った。
駐車場にとまった車の運転席でも、おじさんがパンを食べながら、オレたちを見ている。
これ以上、オレがここにいたら、先輩にめいわくだ。
ぺこりと頭をさげ、オレは足早に、大通りの歩道へ歩き出した。
「待って、葉児君っ!」
ネオンのまぶしい大通り。
ふり返ると、コンビニから卯月先輩がかけてきている。
走るたびに舞いあがる、長い黒髪。
後ろで、歩道橋が影をつくっている。
「葉児君、言い逃げなんて、ズルい!」
オレの前まで来ると、卯月先輩は、ひざに手をついてハアハアと息を整えた。
キャミソールの細い肩ひもが、片方だけ落ちている。ミニスカートからのびるのは、人形のように細くて長い足だ。
「……すみませんでした。先輩のお母さんに、エラそうなこと言って……」
「ううん。ママに、ビシッと言ってくれてうれしかった!」
肩ひもを上に押しあげ直して、先輩が笑った。
「だけどね、葉児君。わたしからも一言、言わせて!『幸せは自分でつかむもの』っていうなら、葉児君だって、ちゃんと幸せになろうとしてっ!」
「……え?」
「葉児君て、自分の気持ちをないがしろにしてない? 本当はやりたいことがあるんじゃないの?『運命だ』って思う相手がいるんじゃないのっ!! 」
……運命……。
オレはため息をついた。
「だから、その言葉はキライなんです。運命なんて、ただの思い込みなんだって」
「思い込みでもいいじゃないっ!」
つけまつ毛をした大きな瞳が、キッとオレを見すえた。
「思い込みでもいいんだよ! 思い込みだって、ずっとずっと強く思い込み続けていて、それが一生続くなら、それはもう、本物の『運命』なんだからっ!」
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