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6 地下からの招待
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しおりを挟む「おねえちゃん、雨」
杏ちゃんが、空に手のひらを向けた。
見あげると、さっきまで出ていた青空が、鉛色の雲に消されている。
と思ったら、大粒の雨が、滝みたいにふってきた。
「う、うわ~っ!! 集中豪雨~っ!! 」
「避難、避難~。木の下~」
「雷鳴ってるときは、木の下に行ったらダメなんだよ~」
「だれか、カサ持ってる人~っ!? 」
おとなも子どもも大あわて。
芝生広場は、見晴らしのいい山のてっぺんにあるかわりに、まわりには建物も木陰もない。
「ひとまず、下の植物園まで行って、雨宿りしま~す」
児童館の事務員さんがさけんだ。
「みんな、あつまって~。カサを持っている子は、ほかの子にも入れてあげて。レインコートがある子は着て。お友だちはいますか~?」
あたしたちボランティア組は、ビニールシートをたたんだり。お菓子をかたづけたり。子どもたちの数を数えたり。てんやわんや。
「二十三人全員いま~す」
誠が、事務員さんに手をあげた。
「じゃあ、ならんで山道をくだりますよ~。植物園までちょっと歩くけど、がんばろう」
子どもたちの列に、事務員さんやボランティア組がまじってならんで、みんなのようすに気を配りながら。
雨粒のふりそそぐ山道をゆっくりゆっくりおりていく。
ピカッと空が光るたびに、小さい子たちはキャアって身をちぢめる。
「へいきへいき。すぐに植物園につくから。植物園に行ったら、温室でサボテン見ようよ」
列の一番後ろで、あたしは杏ちゃんや由利ちゃんや菜奈ちゃんに笑いかけた。
「妖精のおねえちゃん。温室に、バナナもなってるかな~?」
にかにか笑ったのは、オバケの白い布をかぶった拓斗たくと君。
「あ、なってるかも。でも、拓斗君、取って食べたらダメだよ~?」
「い~じゃん。きょうはハロウィンなんだぞ~。オレ、『トリック・ア・トリート』って、植物園のおじちゃんをおどろかせてやるんだっ!」
鵤さんのおどろいた顔を想像して、ケラケラ笑っていたら、「おねえちゃん」って、由利ちゃんに、そでを引かれた。
「え?」
「杏ちゃんがいない」
「ウソ……」
ザアと雨がふりしきる山道を、あたしは見まわした。
どうしよう……さっきまでいたのに……。
細い道が、T字なって別れてる。
この先は外人墓地……。
「よ、ヨウちゃん!」
あたしの声に、数人前を歩いていた琥珀色の髪がふり返った。
「杏ちゃんがいないの。あたし、さがしてくる」
「は? 待て。そういうことはまず、おとなに言え。すみませ~ん、誠のお母さん!」
「ヨウちゃん、だって、こっちの道って……」
列の先に向かって手をあげたヨウちゃんのマントを、あたしはつかんだ。
「外人墓地……か」
「行ってくる!」
「綾、待てよ」
「へいき。浅山ならよく知ってる。杏ちゃんを見つけたら、ケータイに電話するから。先に植物園行ってて」
雨の中、足をとめる一行から抜け出して。
あたしはわき道へかけだした。
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