ナイショの妖精さん

くまの広珠

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5 真夜中のダンスパーティー

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 それから、時計の長い針が、ぐるぐるぐるぐる回る中。

 あたしは、永遠、薬づくり。

 強火にしたり、中火にしたり、弱火にしたり。火の調節まで分刻みで決まってる。

 ちょっとでも、まちがったら、ゲームオーバー。


 おなべの中は、緑色のキレイな液体。……だったのが、煮こんでいくうちに深緑色。さらに濃くなって、なんかドス黒い茶色にかわって。

 もう、コンロのつまみを切っただけでもわかる。

 ――失敗。



「……綾ちゃん、だいじょうぶ?」

 顔をあげると、ヨウちゃんのお母さんが、あたしの肩にショールをかけてくれていた。
 湯気の立つティーカップが、つくえの上に置かれる。

「あんまりこんつめると、バテちゃうわよ。ちょっと休みましょうか?」

「あ……ありがとうございます……」

 涙がこみあげてきた。

 ヨウちゃんは、これをひとりでやってたんだ……。

 だれかに本を調べてもらうこともなく。だれかに声をかけてもらうこともなく。

「あ……あの……ヨウちゃんは……?」

「部屋で寝てるわ。あせらなくても、だいじょうぶ。あの子も落ちついてるから」

 だけど、あたしが薬をつくらなきゃ、ヨウちゃんはずっと治らない……。

「お母さん。あたし、やります」

 一口飲んだカモミールティーを置いて、あたしはイスから立ちあがった。

 千切りにした葉っぱはもう全部つかっちゃったから、また、包丁で刻むところから。

 涙は、手の甲でキレイにぬぐって。

 包丁持って、トントントン。


 あたしは、アホっ子で。

 ドジっ子で。ドンくさくて。

 どんなにやっても、失敗ばっかり。


 だけど、ヨウちゃんだって、何度も失敗したんだから。

 それでもがんばって、あたしを人間にもどしてくれたんだから。


 あたしも、がんばる!




「やった! きっちり、百ミリリットル!」


 次は、ビーカーにそそいだ濃縮液に、分量どおりのグリセリンとはちみつを入れること。

 ここまで来て、失敗したくないから、入れるときは慎重に。

 手がガタガタと震えてきた。何度も計量スプーンから、グリセリンがこぼれちゃう。

 落ちついて、落ちついて。

 一度、スプーンとグリセリンのビンをつくえに置いて。す~は~と深呼吸。

 そ~っとやったら、こぼさないで入れられた。

 ビーカーの中で、塗り薬っぽくドロドロになった液体を、混ぜ棒でまぜていく。

 ビンにうつしかえて、ふたをして、常温になったら完成……のはず……。


 ビンを目の前にして、あたしの心臓はバックン、バックン。


 成功したら、液体が虹色にかわる。
 
 失敗だったら、どす黒い茶色のまんま。



 書斎の窓の外が白くなりだしている。

 さっきまで真っ暗で見えなかった海が見える。ほんのりカーブを描く水平線。その上にはうす青色の空。

 あたしの手元が、ぽうっと光った。


 ビンの中で、液体の茶色が溶けるようにうすくなってく。色は見る間に透明になって、虹色にかがやきはじめる。


 熱い涙が、あたしのほおを伝った。


 アホっ子でも、ドンくさくても、もういいや。

 あたしは人間として生まれたんだから。

 みんなより歩くのが遅くても。

 一歩、一歩。

 人間として歩いていこう。





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