136 / 646
4 告白の後先
46
しおりを挟むあたしは、ヨウちゃんの平たい背中に手をまわして、後ろ頭にふれてみた。
くしゃっとやわらかい、琥珀色の細い髪。
「怖いよね……キツイよね……」
小さい子でも平気なオバケ屋敷でさえ、怖いのにね。
ガサっと、ヨウちゃんの左手から、紙袋が落ちた。自由になった両腕が、あたしの腰にぎゅうっと抱きついてくる。
そでがあがって、パーカのわきのしたの生地が引っぱられる。
ポケットから、虹色の花がこぼれ落ちた。
「……あっ!」
声を出して、「しっぱいした!」って、気づいたときは遅かった。
ヨウちゃんはもう、自分の足元を見おろしていた。
琥珀色の目が、時がとまったように、ヘアベルを見ている。
「……ヨウ……ちゃん」
ヘアベルは、地面に熱を吸いとられるかのように、虹色の光をなくしていく。
「――ふ~ん。そういうこと」
長い右腕が動いて、ヘアベルを拾いあげた。
「綾。おまえ、人を自白させたのか。……いい趣味だな」
うつむいた前髪の下で、ヨウちゃん、片口だけあげて笑ってる。
「じ、じはく……?」
「口を割らせるって意味だよ。どうせ、かあさんもグルなんだろ?」
ほおが、石膏みたいに硬い。
「ち、ちがう! ヨウちゃんのお母さんは、ヘアベルのことなんか知らないっ! これは、あたしが勝手に、ヨウちゃんのノートを読んで……」
言いかけて、あたしはバッと、自分の口を両手でふさいだ。
チラッと、冷たい視線があたしを見おろした。
「ふ~ん。やっぱ、おまえ、勝手に書斎に入ったのか。人を自白させる方法を調べるために、留守をねらって、人んちの書斎に忍び込む。やり方、すげぇ卑劣だな」
「ち……ちが……」
「ちがうかどうか、白状させてやろうか? 少しは人の気持ち、わかったほうが、おまえのためにもいいだろ?」
ぞくっとした。
手の中のヘアベルを、ヨウちゃんが、あたしの胸につきつけてくる。
一歩、足を後ろに引いたら、ひざに力が入らなくて、ガクッとなった。
「とにかく、もう帰れ。オレは二度とおまえと口をききたくないっ!」
地面に落ちた紙袋を拾いあげて、ヨウちゃん、家に向かって歩き出す。
寒い。
ヨウちゃんが氷みたい。
カフェの玄関が開いていて、ヨウちゃんのお母さんが立っていた。ドアに背中でもたれて、ヨウちゃんをにらんでいる。
「なに? かあさんもさっさと入って仕事すれば? 客、待ってんじゃねぇの?」
横を通りすぎようとしたヨウちゃんのほおを、パンっと、お母さんの手のひらが、はたいた。
――え?
目を見開いて、お母さんを見おろすヨウちゃん。
息子を見あげるお母さんの目に、涙が浮かんでる。
「あなたの許可をとらずに、綾ちゃんを書斎に入れたことはあやまるわ。でも、今の綾ちゃんに対する態度はなにっ!? もし、それがあなたの本心でも、人にあんな言い方するもんじゃない。本心じゃないのなら、人を傷つけない別のやり方を、考え直しなさいっ!! 」
0
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで
猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。
※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。
※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。
※2026.1.5に完結しました! 修正中です。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
にゃんとワンダフルDAYS
月芝
児童書・童話
仲のいい友達と遊んだ帰り道。
小学五年生の音苗和香は気になるクラスの男子と急接近したもので、ドキドキ。
頬を赤らめながら家へと向かっていたら、不意に胸が苦しくなって……
ついにはめまいがして、クラクラへたり込んでしまう。
で、気づいたときには、なぜだかネコの姿になっていた!
「にゃんにゃこれーっ!」
パニックを起こす和香、なのに母や祖母は「あらまぁ」「おやおや」
この異常事態を平然と受け入れていた。
ヒロインの身に起きた奇天烈な現象。
明かさられる一族の秘密。
御所さまなる存在。
猫になったり、動物たちと交流したり、妖しいアレに絡まれたり。
ときにはピンチにも見舞われ、あわやな場面も!
でもそんな和香の前に颯爽とあらわれるヒーロー。
白いシェパード――ホワイトナイトさまも登場したりして。
ひょんなことから人とネコ、二つの世界を行ったり来たり。
和香の周囲では様々な騒動が巻き起こる。
メルヘンチックだけれども現実はそう甘くない!?
少女のちょっと不思議な冒険譚、ここに開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる