ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 広がりゆく闇

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 家のドアを開けると、玄関マットの上で、ママが仁王立ちしていた。


「綾、きょうも中条さんのおうちにおジャマしてたの?」


「……ほぇ? う、うん」


 びっくり。ヨウちゃんのあったかほっぺを思い出しながら、ふわふわ家に帰ってきたのに。

 ママは小顔。シワのないつるつるのお肌に、キッとつりあがり型にメイクした眉。子育てママのファッション誌でモデルをやっちゃうくらい、自分磨きに時間をかけてる人。

 だけど、きょうのママは、こめかみから血管がピクピク。胸のところでうち巻きにしている、キャラメル色の髪も、心なしかさかだってて。


 なんていうか……山からおりてきたヤマンバ……?


「あんた、きょうは、給食食べたら、すぐに下校のはずでしょ? なのに、もう、五時よ。まさか四時間も、中条さんちに、ごやっかいになってたってわけっ!? 」


「……そうだけど。でも、いつものことじゃん。冬休み中だって、しょっちゅうヨウちゃんちに行ってたし。ヨウちゃんのお母さん、いっつも、にっこりしてくれるよ?」


「あのね。笑ってくれるからって、ご迷惑をかけてないってことにはならないでしょっ!?  だいたい、あんたは昔っから、なんでも度がすぎるのよ。お正月に、葉児君とつきあい出したってきかされたときは、そりゃ、ママだって、『大物を釣りあげた! さすがはママの子』って感心したわよ。でもね、毎日のように、おうちに押しかけるのは、いくらなんでも、しつれいよっ!」


「……じゃあ、どのくらいならオッケーなの?」


「そうね。多くても、週一ね」


「え~っ!?  そんなの少なすぎ~っ!」


「それでも、多いくらいよ! あんたってば、遅くなったら調子にのって、お夕飯までごちそうになってきちゃうし。しかも、車でうちまで送ってもらっちゃうし。なんだかんだで、中条さんに甘えっぱなしで! あのお母さんがどんなにやさしくったってね! そのうち、あんた、笑ってももらえなくなるわよっ!! 」


 が~んっ!


「それは、ヤダぁ~……」


「なら、節度を持ちなさい! あ。あと、外でイチャつくのも禁止ねっ!」


「ええっ!?  あたし、イチャついてなんかないよっ?」


「ウソおっしゃいっ! あんたと葉児君が、外で抱きあってるのを見たっていう人がいるのよっ!」


「ええええ~っ!? 」


 顔がカーッと熱くなる。


「だ、だれそれっ!?  そんなのウソだよ! あたしたち、そんなことしてないっ!」


「お向かいの中村さんよ。中村さん、『つむじ風』の常連なんですって。クリスマスの前って、言ってたかしらね。『つむじ風』に行くとちゅうの坂で、あんたたちが抱きあってるのを見たって言うじゃない。なんでも、あんたから葉児君の背中にとびついたんですって?」


 う、うぎゃ~っ!!


 顔から火出そう!


 あ、あ、あれを、人に見られてたの~っ!?


「そ、それはね、ママ! たしかにあたしだけど。だけど、そうじゃなくてっ! だ、だって、ヨウちゃんが遠くに行っちゃう気がして……」


「なにが『遠くに行っちゃう』よっ! どっかの恋愛ドラマのマネして、いっぱしのこと言ってんじゃないのっ!!  まったく、『つきあう』の意味も、よくわかってないお子ちゃまのくせにっ! 葉児君は、パパとはちがうんですからね。気安く男の子に、ベタベタするもんじゃありませんっ!」


「ヒドイ、ママっ! あたしが恋バナしたときには、ちゃんときいてくれたのにっ!!  なんで、いざ、つきあいはじめたら、また、お子ちゃまあつかいなのっ!?  あたしだって、『つきあう』の意味くらい、わかってるもんっ!! 」


「わかってません! わかってるわけないじゃないっ! あんたはまだ、小学生なのよっ!?  恋愛のなんたるかを理解するには、十年早いわっ! 

ってわけで、相手の家に行くのは、多くて週一回。あと、外でイチャつくの禁止ねっ!」



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