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4 黒い妖精の黒いワナ
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しおりを挟むわ……ひさしぶりの、生ヨウちゃん。
夜遅くに、あたしの家にたずねてきてくれて以来。
ヨウちゃん、ママに、ちゃんとあいさつしてくれて。
マロウの液剤を持ってきてくれて。
それから――。
あたしはさっと、有香ちゃんの背中に隠れた。
「あの人、怖いっ!」
ビシッと、ヨウちゃんの鼻面を指さす。
「……え……?」
ヨウちゃん、口パックン。
真央ちゃんも有香ちゃんも、口パックン。
だって……だってぇ~……!
この人、あたしの羽を切るって、言った~っ!!
「綾ちゃん、どうしたのっ?」
「ま、まさか、休みの間に、中条になにかされたのかっ?」
「これから、されるのっ!! 」
さけんじゃったら、教室にいた男子も女子もふり返った。
「は、はぁ~? お、おいっ! 綾、なに言ってんだよっ!! 」
ヨウちゃん、あわあわ。みんなのほう見て、おろおろ。
「なにを宣言したのよ、中条?」
有香ちゃん、ジロリ。
「中条、サイテーだな」
真央ちゃんも、ギロリ。
「ち、ち、ち、ちがうっ!! ご、誤解だ! おまえらも、じろじろ見るなっ!! 」
「ひゅう」と大岩が口笛をふいた。
「いいじゃん、葉児、責めろ~」
「男らしく、ガンガン行け~」
「ヤダ~、男子たちって、サイテー。女の子がイヤがってるのに、そ~いうことしちゃダメなんだよ~」
「そうだよ、ママだって言ってたもん。いくら中条君でも、ね~」
男子たちも女子たちもわいわい。
真央ちゃんが、ふむと腕を組んだ。
「きょうは、中条をかばう女子がいないと思ったら、リンが試験でいないのか。あと、誠はきょうもインフルエンザで休み、と」
「え? 誠もインフルエンザなの? いつから?」
「きのうから」
「綾ぁっ! 世間話はいいから、さっさと訂正しろっ!」
ヨウちゃんのこめかみから、汗がだらだら。
なんでよ! ホントのことじゃんっ!
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