252 / 385
フランス編
過去について・未来について
しおりを挟む
おおむね溌溂と、実年齢に比して若々しく、眼光を煌めかせていた老人が、ここでふと、歳相応に目を細めた。その身に刻んだ皴で、瞼が落ちるようにして、自然と。
「それにしても、変わらんの。ハク」
ほっほっほ。と、直近の殺伐とした宣戦布告から一転、まさに『家族』のように――久しぶりに再会した父親のように、優しい声音で老人は言った。
だから、いとも簡単に、男はほだされる。思わず感情がこみ上げるほどに、感化される。懐かしいその声で、その名を呼ばれたから。
「……変わってねえわけねえだろ。何年経ったと思ってんだ」
男個人としては、複雑な心境でもあった。というのも、地下世界――いや、別の惑星に行っていたせいで、地球上の経年に体が追い付いていない。実際に経過した月日より、男は六年ほど若さを保ったままなのだ。
とはいえ、それを差し引いても、数年単位で時を隔てているのはたしかではあったが。
「男子、三日会わざればなんとやらって諺があんだろうが。これでも成長してんだよ。たぶん」
言ってはみるが、さして自信があるわけでもなかった。しかし、変わっていないなどとも思いたくはなかった。この数年間は、本当に怒涛の日々だったから。特に、少女と出会ってからというもの、本当に。
「はっ。ガキが一丁前に、大人になった気でいやがる。……じゃがまあ、たしかに変わったようじゃ」
悪態をついてから、いともたやすく、老人は前言を撤回した。
「顔付きが変わった。いろんなことがあったんじゃろう。……じゃが、変わっておらんよ。そのコート。そして、その帽子」
行儀の悪いことに、相手を指さし、老人は言った。これも年齢によるものか、持ち上げたその指先は、わずかに震えている。それでも視線はまっすぐと、相手を射すくめるように鋭く、しっかと男を見つめていた。
男は指摘されたままに、羽織ったコートを、そして、かぶったボルサリーノを、順に正した。そして少しだけ、老人の言葉にいぶかしむ。
「どっちもあんた――『先生』からもらった大切なもんだ。そうやすやすと手放すかよ」
そんなことは、幼いころから変わっていないことだ。いまさら、たかが数年や、十数年で変わるものではない。それくらい、解っているだろうに。そう、男は思った。
「物は重要じゃない。……変わっておらんというのは、その物に込められた、感情じゃよ」
老人は遠い目をするようにして、言った。
だから男も、遠い過去を思い出すように、記憶を辿る。
「あの日――『先生』と、ホムラとジンと出会った、あの凍える日に、あんたからもらったコートだ。……そして――」
言いかけて、男は黙った。思い出せそうで、思い出せない。はて、はたして、そういえば。
このボルサリーノは、いったいいつから、どんな思い入れとともに、かぶっていたのだったか。
それは、コートと同じほどに古い記憶だ。しかし、どうにも、思い出せない。眼前の老人からもらったことだけは、たしかなはずだが。
「いまもあの子とは仲良くやれとるのか? なんという名じゃったか……ふむ……」
老人はわざとらしく腕を組み、首を捻る。唸り。やがて、答えを思い出したように、顔を上げた。
「アリス。……そうじゃ、アリス・L・シャルウィッチ」
その名に、どくん、と、男の鼓動が跳ねる。
「あのガキが、その帽子がおまえに似合うとか言い出したから、おまえはなかば強引に、それを持ってったんじゃろ。まったく、ガキが色気づきおってからに――」
途中から、老人の声は、男の耳に届かなくなった。水が詰まったように、音が遠くなる。その代わりに、いつかの、誰かの言葉が、強く頭に響いた。
――これからは俺がおまえの『家族』だ。だから――
無責任で幼く、しかし、力強い言葉。初めて、自分よりも誰かのためにと、胸を張って伝えた誓い。それを、いまさら――本当にいまさら、思い出す。
「遅えよ……」
自分自身に、毒づく。
そうか。俺の最初の『家族』は、おまえだったんだな。
脱いだボルサリーノに、その思いを乗せて、男はうなだれた。
本当に、まったく……もう遅い。
――――――――
数刻、目を離した隙に、暗雲が蜷局を巻いていた。おかしい。そう少女は思うが、先に用事を済ませるために、地下鉄へ急ぐ。
あれも、おかしい。そう思ったから、確認だ。そしてその件に関して言えば、おかしさの理由も、いちおう想定できなくはなかった。まさかとは思ったけれども。
唐突な暗雲のせいだろうか? 街を行き交う人々も、やや少ない。嫌な予感がする。そう思った。
その、矢先だった。
「ノラ」
ぱちり。と、瞬間だけ、気配を感じた。自らを呼ぶ声も。それだけで、理解する。
「ちっ」
感じた気配同様に、瞬間だけ、舌打ちする。
「なんだってのよ」
解らない。だから、少女は踵を返し、誘われた方へと、向かった。
*
『世界樹』のあるパリ9区から、さらに北上、パリ18区。そこに、パリで最も標高の高い街、モンマルトルの丘がある。その丘の上に建つ、サクレ・クール寺院。それは、建築家アバディによりデザインされた、ロマネスクビザンチン様式の大教会であり、パリの観光名所のひとつでもある。
その、人通りも雑多な一角にて、彼女は悠然と、少女を待っていた。
「で、なんなのよ。わたし、ちょっと用事があるんだけど」
パラちゃん。荒い息をゆっくりなだめて、少女は彼女の名を呼んだ。
180を越えた高身長。赤茶色の、腰ほどまである長い蓬髪。それを勢いよく振り乱して、彼女は、少女を振り向いた。
「……なんや、走ってきたん?」
サクレ・クール寺院へは、地下鉄12番線、アベス駅からほど近い。だのに、あえて走ってきたのか? そういう意図の、言葉だった。やや、棘のある、言葉だ。
「走った方が速いでしょ。それとも、急ぎの用事じゃなかった?」
さきほどの様子から、でき得る限り早く話したい。そう読み取ったから、走ってきたのに。そう、少女は言い含める。
「いや……」
女傑はそう言って、言葉を切った。それは、それだけでは、肯定とも否定ともとれる言い草だった。
やっぱり、おかしい。少女はそう、読み解く。
たしかに女傑は、いつからか、彼女の『雷』たる特性をもって、体も、頭も、人体の限界に到達していた。それはつまり、少女と同等ということ。ゆえに、ある程度に達観するのは、理解できる。
しかし、いま眼前にいる彼女は、さらに遥かなる高みから、少女を見下ろしていた。そう感じるのは、身長差や、やや彼女の方が坂の上に立っているから、という理由だけではないだろう。
そんなレベルの話ではない。いまの彼女は、まるで――。
「急いどるんやったな。ほな、さっそく本題に入ろか」
少女の認識を引き付けるように、女傑は言葉を紡いだ。ぴったりと、少女がその結論に到達するのを、遮るかのように。
「ワレぇ、いますぐ、ハクのそばから離れえや」
急に感情的に、女傑は言った。憤怒している。とさえ、見える。
「どういう意味よ」
少女は、ためらいがちにも、はっきりと、真意を問い質した。うすうす、理解しかけていた、彼女の真意を。
「ノラぁ……」
大きく息を吸って、自らを鎮めるように。そう努力してから、女傑は、少女の名を、呼んだ。
「イラつかせんなや……。殺したくなるやろ」
肺の、すべての息を吐き、うなだれる。そうして、なんとか自身を抑えている。そう、少女からは見えた。
ぱちり。と、瞬間、彼女の全身から、火花が散る。
「解らんよなあ? 解らんのやろ、ノラ。……ほな、はっきり言うたる」
思わず上がっていたらしい肩が、すとん、と、落ちる。そうしてから女傑は顔を上げ、少女を、まっすぐと、見据えた。
「うちは、未来を視た。……こないだ、いっぺん死にかけてん。いや、事実、死んだと言うた方が正しいかもな。……たしかに、舐めとったわ」
最後の言葉は、己に言い聞かせるように、すぼんだ声量だった。
少女は、女傑の言葉に、目を細める。苛立ちに近い。その感情を、噛み殺した結果だった。
「そんで、まあ、同調した。表現が正しいかはともかく――意味は、解るよな?」
ノラぁ……。と、またもイラつきを露呈するように、少女を呼ぶ。
だから、ちっ、と、少女も感情を、表に出した。しかし、すぐに気持ちを切り替えて――前向きに思い直して、口元だけで、笑う。
「ってことは、うまくいくのね?」
そうだ。そういうことになる。でなければ、こんなことはしないはずだ。そう、少女は理解した。
「いかへんわ。ここでうちが、未来を変えるからな」
ばち。と、今度はたしかに、稲光が走る。彼女の高身長に則った、大きな手の、その広げた、指先と指先の間に。
それに呼応してか、彼女の長い髪が、天を突くように立ち上がった。さらに対応して、空が、轟音を低く、唸らせる。
それは、世界が、怒りに慄いているような、そんな光景だった。
「もう、とうに間に合わへん。けど、まだ救われる余地はある。……もっかい言って、それで最後にするで――」
はあああぁぁ――。聞こえよがしに荒く深呼吸して、女傑は、紡ぐ。
「いますぐ、ハクのそばから離れえ。二度とあいつの前に、姿を見せんなや」
「お断りよ。馬鹿じゃないの」
少女は、即答した。
「わたしはわたしのやり方で、ハクを救うわ」
交渉は、決裂だ。ゆえに、少女は、構えた。
女傑は、あえてこんな、人通りのある観光名所を選んだ。理由はいくつかあるだろうが、つまりは、真っ向から本気でやりあう気はない、ということ。そう、少女は理解する。ゆえに、真剣ではありながらもどこか、気が抜けていた。
たしかに、少女の理解は正しい。正しいことは、正しいに違いはなかった――。
「……いくらノラでもな、いまのうちには、勝てへんで」
戸惑うように言葉を探して、やがて――。
女傑も悲しそうに、構えた。
その指先で作る、幼稚な銃口を、少女へ、向ける。
少女が仮に、なにかを読み違えたとするなら――。
それはきっと、『家族』という関係性、そのものについてだろう。
「それにしても、変わらんの。ハク」
ほっほっほ。と、直近の殺伐とした宣戦布告から一転、まさに『家族』のように――久しぶりに再会した父親のように、優しい声音で老人は言った。
だから、いとも簡単に、男はほだされる。思わず感情がこみ上げるほどに、感化される。懐かしいその声で、その名を呼ばれたから。
「……変わってねえわけねえだろ。何年経ったと思ってんだ」
男個人としては、複雑な心境でもあった。というのも、地下世界――いや、別の惑星に行っていたせいで、地球上の経年に体が追い付いていない。実際に経過した月日より、男は六年ほど若さを保ったままなのだ。
とはいえ、それを差し引いても、数年単位で時を隔てているのはたしかではあったが。
「男子、三日会わざればなんとやらって諺があんだろうが。これでも成長してんだよ。たぶん」
言ってはみるが、さして自信があるわけでもなかった。しかし、変わっていないなどとも思いたくはなかった。この数年間は、本当に怒涛の日々だったから。特に、少女と出会ってからというもの、本当に。
「はっ。ガキが一丁前に、大人になった気でいやがる。……じゃがまあ、たしかに変わったようじゃ」
悪態をついてから、いともたやすく、老人は前言を撤回した。
「顔付きが変わった。いろんなことがあったんじゃろう。……じゃが、変わっておらんよ。そのコート。そして、その帽子」
行儀の悪いことに、相手を指さし、老人は言った。これも年齢によるものか、持ち上げたその指先は、わずかに震えている。それでも視線はまっすぐと、相手を射すくめるように鋭く、しっかと男を見つめていた。
男は指摘されたままに、羽織ったコートを、そして、かぶったボルサリーノを、順に正した。そして少しだけ、老人の言葉にいぶかしむ。
「どっちもあんた――『先生』からもらった大切なもんだ。そうやすやすと手放すかよ」
そんなことは、幼いころから変わっていないことだ。いまさら、たかが数年や、十数年で変わるものではない。それくらい、解っているだろうに。そう、男は思った。
「物は重要じゃない。……変わっておらんというのは、その物に込められた、感情じゃよ」
老人は遠い目をするようにして、言った。
だから男も、遠い過去を思い出すように、記憶を辿る。
「あの日――『先生』と、ホムラとジンと出会った、あの凍える日に、あんたからもらったコートだ。……そして――」
言いかけて、男は黙った。思い出せそうで、思い出せない。はて、はたして、そういえば。
このボルサリーノは、いったいいつから、どんな思い入れとともに、かぶっていたのだったか。
それは、コートと同じほどに古い記憶だ。しかし、どうにも、思い出せない。眼前の老人からもらったことだけは、たしかなはずだが。
「いまもあの子とは仲良くやれとるのか? なんという名じゃったか……ふむ……」
老人はわざとらしく腕を組み、首を捻る。唸り。やがて、答えを思い出したように、顔を上げた。
「アリス。……そうじゃ、アリス・L・シャルウィッチ」
その名に、どくん、と、男の鼓動が跳ねる。
「あのガキが、その帽子がおまえに似合うとか言い出したから、おまえはなかば強引に、それを持ってったんじゃろ。まったく、ガキが色気づきおってからに――」
途中から、老人の声は、男の耳に届かなくなった。水が詰まったように、音が遠くなる。その代わりに、いつかの、誰かの言葉が、強く頭に響いた。
――これからは俺がおまえの『家族』だ。だから――
無責任で幼く、しかし、力強い言葉。初めて、自分よりも誰かのためにと、胸を張って伝えた誓い。それを、いまさら――本当にいまさら、思い出す。
「遅えよ……」
自分自身に、毒づく。
そうか。俺の最初の『家族』は、おまえだったんだな。
脱いだボルサリーノに、その思いを乗せて、男はうなだれた。
本当に、まったく……もう遅い。
――――――――
数刻、目を離した隙に、暗雲が蜷局を巻いていた。おかしい。そう少女は思うが、先に用事を済ませるために、地下鉄へ急ぐ。
あれも、おかしい。そう思ったから、確認だ。そしてその件に関して言えば、おかしさの理由も、いちおう想定できなくはなかった。まさかとは思ったけれども。
唐突な暗雲のせいだろうか? 街を行き交う人々も、やや少ない。嫌な予感がする。そう思った。
その、矢先だった。
「ノラ」
ぱちり。と、瞬間だけ、気配を感じた。自らを呼ぶ声も。それだけで、理解する。
「ちっ」
感じた気配同様に、瞬間だけ、舌打ちする。
「なんだってのよ」
解らない。だから、少女は踵を返し、誘われた方へと、向かった。
*
『世界樹』のあるパリ9区から、さらに北上、パリ18区。そこに、パリで最も標高の高い街、モンマルトルの丘がある。その丘の上に建つ、サクレ・クール寺院。それは、建築家アバディによりデザインされた、ロマネスクビザンチン様式の大教会であり、パリの観光名所のひとつでもある。
その、人通りも雑多な一角にて、彼女は悠然と、少女を待っていた。
「で、なんなのよ。わたし、ちょっと用事があるんだけど」
パラちゃん。荒い息をゆっくりなだめて、少女は彼女の名を呼んだ。
180を越えた高身長。赤茶色の、腰ほどまである長い蓬髪。それを勢いよく振り乱して、彼女は、少女を振り向いた。
「……なんや、走ってきたん?」
サクレ・クール寺院へは、地下鉄12番線、アベス駅からほど近い。だのに、あえて走ってきたのか? そういう意図の、言葉だった。やや、棘のある、言葉だ。
「走った方が速いでしょ。それとも、急ぎの用事じゃなかった?」
さきほどの様子から、でき得る限り早く話したい。そう読み取ったから、走ってきたのに。そう、少女は言い含める。
「いや……」
女傑はそう言って、言葉を切った。それは、それだけでは、肯定とも否定ともとれる言い草だった。
やっぱり、おかしい。少女はそう、読み解く。
たしかに女傑は、いつからか、彼女の『雷』たる特性をもって、体も、頭も、人体の限界に到達していた。それはつまり、少女と同等ということ。ゆえに、ある程度に達観するのは、理解できる。
しかし、いま眼前にいる彼女は、さらに遥かなる高みから、少女を見下ろしていた。そう感じるのは、身長差や、やや彼女の方が坂の上に立っているから、という理由だけではないだろう。
そんなレベルの話ではない。いまの彼女は、まるで――。
「急いどるんやったな。ほな、さっそく本題に入ろか」
少女の認識を引き付けるように、女傑は言葉を紡いだ。ぴったりと、少女がその結論に到達するのを、遮るかのように。
「ワレぇ、いますぐ、ハクのそばから離れえや」
急に感情的に、女傑は言った。憤怒している。とさえ、見える。
「どういう意味よ」
少女は、ためらいがちにも、はっきりと、真意を問い質した。うすうす、理解しかけていた、彼女の真意を。
「ノラぁ……」
大きく息を吸って、自らを鎮めるように。そう努力してから、女傑は、少女の名を、呼んだ。
「イラつかせんなや……。殺したくなるやろ」
肺の、すべての息を吐き、うなだれる。そうして、なんとか自身を抑えている。そう、少女からは見えた。
ぱちり。と、瞬間、彼女の全身から、火花が散る。
「解らんよなあ? 解らんのやろ、ノラ。……ほな、はっきり言うたる」
思わず上がっていたらしい肩が、すとん、と、落ちる。そうしてから女傑は顔を上げ、少女を、まっすぐと、見据えた。
「うちは、未来を視た。……こないだ、いっぺん死にかけてん。いや、事実、死んだと言うた方が正しいかもな。……たしかに、舐めとったわ」
最後の言葉は、己に言い聞かせるように、すぼんだ声量だった。
少女は、女傑の言葉に、目を細める。苛立ちに近い。その感情を、噛み殺した結果だった。
「そんで、まあ、同調した。表現が正しいかはともかく――意味は、解るよな?」
ノラぁ……。と、またもイラつきを露呈するように、少女を呼ぶ。
だから、ちっ、と、少女も感情を、表に出した。しかし、すぐに気持ちを切り替えて――前向きに思い直して、口元だけで、笑う。
「ってことは、うまくいくのね?」
そうだ。そういうことになる。でなければ、こんなことはしないはずだ。そう、少女は理解した。
「いかへんわ。ここでうちが、未来を変えるからな」
ばち。と、今度はたしかに、稲光が走る。彼女の高身長に則った、大きな手の、その広げた、指先と指先の間に。
それに呼応してか、彼女の長い髪が、天を突くように立ち上がった。さらに対応して、空が、轟音を低く、唸らせる。
それは、世界が、怒りに慄いているような、そんな光景だった。
「もう、とうに間に合わへん。けど、まだ救われる余地はある。……もっかい言って、それで最後にするで――」
はあああぁぁ――。聞こえよがしに荒く深呼吸して、女傑は、紡ぐ。
「いますぐ、ハクのそばから離れえ。二度とあいつの前に、姿を見せんなや」
「お断りよ。馬鹿じゃないの」
少女は、即答した。
「わたしはわたしのやり方で、ハクを救うわ」
交渉は、決裂だ。ゆえに、少女は、構えた。
女傑は、あえてこんな、人通りのある観光名所を選んだ。理由はいくつかあるだろうが、つまりは、真っ向から本気でやりあう気はない、ということ。そう、少女は理解する。ゆえに、真剣ではありながらもどこか、気が抜けていた。
たしかに、少女の理解は正しい。正しいことは、正しいに違いはなかった――。
「……いくらノラでもな、いまのうちには、勝てへんで」
戸惑うように言葉を探して、やがて――。
女傑も悲しそうに、構えた。
その指先で作る、幼稚な銃口を、少女へ、向ける。
少女が仮に、なにかを読み違えたとするなら――。
それはきっと、『家族』という関係性、そのものについてだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる