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35 ピアス ①
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両想いになり、一夜が明けた。
今日は休みだったので、昨日のこともあり二人でゆっくりした時間に起きる。ミハイルが作ってくれたいつもより豪華な昼食を食べると、ソファーで寄り添い紅茶を飲んでいた。
「そうだ、マールと両想いになれたら渡そうと思っていた物があってね」
隣に座る彼は嬉しそうにラッピングした箱を手渡す。
「開けてみて」
そっと開けると中には片耳のピアスが入っていた。深い紫色のクリスタルに銀色の装飾が豪華に施され、シルバーのチェーンでぶら下がっている。かなりの魔力が込められているのか、クリスタルには特殊な存在感がある。
ひと目でわかる。
ミハイルの瞳と髪色をモチーフにされたピアスだった。
「私、穴開いてないよ」
「実は僕にもピアスを用意してるんだ。一緒に穴を開け合わない?」
魔力持ちは宝石類やクリスタルに魔力を込めて装備する習慣があり、みんな色々と着けるのが主流だ。昔からピアスには憧れていたが、なかなか勇気がなく私は家族から持たされているペンダントのみ着用している。
「いいよ」
私の返事を聞くとミハイルはものすごく喜んでくれた。
「本当に・・・いいの?とても嬉しいよ」
「でも、痛くしないでね」
「ああ、もちろん」
ミハイルの口元が嬉しそうに歪み、私はこの選択を後悔することになる。
「ちなみに僕のはこれなんだ」
箱から取り出し、彼のピアスを見せてくれる。そこには緑色のクリスタルに特殊加工された茶色の装飾だ。茶色のチェーンでぶらさがっている。
ひと目でわかる私モチーフのピアスに、照れてしまう。
「これ、お互いで着けるの恥ずかしいな・・・」
「みんな魔力持ちはアクセサリーを着けているよ。僕達も夫婦だし、お互いをモチーフにした物を着用するのはおかしくない」
「そう・・・だけど、夫婦は指輪が主流だよ。ピアスだと顔周りにあるから人目に付きやすいし、このデザインは特に存在感のオーラがすごいし・・・」
(あからさまに相手の所有物かのように、見えない・・・?)
「だから、いいんだよ」
満足そうに頷くと私をソファーにしっかり座らせ、その上から跨り向き合う形になる。全体重が乗っているわけではないが、ズッシリと逃げられない重みに、私は動けない。彼のしなやかな指が私の髪を耳にかけた。
ピアス穴を開けてもらうために緊張する顔を上げると、こちらを無表情で見下ろすミハイルと目が合う。
「怖い?」
「・・・うん」
「初めて、だもんね。マール、ずっと僕の方を見てて。痛くないように冷やすよ」
彼の指は氷のように冷たくなり、耳たぶに触れた。
「ヒャッア!!冷たい!・・・直接触らなくても、魔力で耳たぶに冷気を出してくれるだけでいいじゃないっ」
「ごめんごめん」
思わずミハイルを睨むと、彼はこの状況をとても楽しんでいるように見えた。
ミハイルの指に挟まれる冷たさで耳たぶの感覚が無くなり、清潔な布で拭いていく。
ピアスを開ける時は一般的に魔力で針を作り、突き刺す。
「ふっ・・・やっとこの時が来た」
彼は人差し指を針のように尖らすと一気に表情が恍惚になる。
「君に、穴を開けるよ」
彼のギラギラした表情と、直接指で刺されることが怖くなり慌てて声をかけた。
「ま、待って・・・」
「待てないよ、折角冷やしたのに」
耳たぶに尖った針が触れた。
・・・ブチッ
「いッ・・・やぁあぁああ」
ズズっ
痛みからか、ミハイルの雰囲気が怖いからか、目から涙が溢れ出る。
ズズズ
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ・・・はやく、、ぬいて・・・!」
ミハイルにしがみつき、縋るように見上げる。針が細いのか、あまり痛みの感覚は無いがミハイルは刺したまま動かない。
はやく、はやく終わって欲しい。
ボロボロと涙が出てミハイルに震える手で再度縋る。
「みっ・・・はいっる・・・おねがぃ」
「ああ」
スっと針が抜かれると、彼の指は元に戻った。テキパキと耳たぶの出血を拭き取り、消毒をしてくれる。ギフトボックスに同封されていた彼の紫の瞳色の宝石がはめ込まれたファーストピアスを着けてくれた。
「穴が安定するまでは、こっちを使っててね」
穴を開けた耳たぶはジンジンと熱い痛みがする。
「・・・・・・っひどい」
ミハイルを睨むとピアスを開けると決めたことに心底、後悔した。私の流した涙の跡を温かさが戻った指で優しく拭われる。
「僕の手でマールに穴を開けられると思うと、自分が抑えられなくて・・・僕に泣き縋る君の表情がたまらなくて・・・」
ピアスを着けた耳を甘く見つめながら、惚れ惚れした表情で語るミハイルに引いてしまう。
バッ
「もういや!回復魔法で塞いでやる」
強い魔力を出そうとする私の手首を、ソファーへ力強く抑え込む。
「君を縛ってでも何度でも開けるよ」
紫の瞳が私を射抜き、体が固まってしまう。
「・・・・・・・・・」
「ごめんね」
上に跨っているミハイルは、動けない私を愛おしそうに抱きしめる。
手がそっと耳たぶに触れ、魔力が込められると耳たぶのジンジンする痛みが引いた。
「・・・塞がないなら、上級魔法使わないで」
「ごめんね」
(はあ・・・)
動けない私は、ミハイルをあやす様に背中を撫でた。時たま出てくる、私を好き過ぎておかしくなったミハイルに毎回恐怖する。
(いつも通りにしてくれたら理想の王子様なのに)
今日は休みだったので、昨日のこともあり二人でゆっくりした時間に起きる。ミハイルが作ってくれたいつもより豪華な昼食を食べると、ソファーで寄り添い紅茶を飲んでいた。
「そうだ、マールと両想いになれたら渡そうと思っていた物があってね」
隣に座る彼は嬉しそうにラッピングした箱を手渡す。
「開けてみて」
そっと開けると中には片耳のピアスが入っていた。深い紫色のクリスタルに銀色の装飾が豪華に施され、シルバーのチェーンでぶら下がっている。かなりの魔力が込められているのか、クリスタルには特殊な存在感がある。
ひと目でわかる。
ミハイルの瞳と髪色をモチーフにされたピアスだった。
「私、穴開いてないよ」
「実は僕にもピアスを用意してるんだ。一緒に穴を開け合わない?」
魔力持ちは宝石類やクリスタルに魔力を込めて装備する習慣があり、みんな色々と着けるのが主流だ。昔からピアスには憧れていたが、なかなか勇気がなく私は家族から持たされているペンダントのみ着用している。
「いいよ」
私の返事を聞くとミハイルはものすごく喜んでくれた。
「本当に・・・いいの?とても嬉しいよ」
「でも、痛くしないでね」
「ああ、もちろん」
ミハイルの口元が嬉しそうに歪み、私はこの選択を後悔することになる。
「ちなみに僕のはこれなんだ」
箱から取り出し、彼のピアスを見せてくれる。そこには緑色のクリスタルに特殊加工された茶色の装飾だ。茶色のチェーンでぶらさがっている。
ひと目でわかる私モチーフのピアスに、照れてしまう。
「これ、お互いで着けるの恥ずかしいな・・・」
「みんな魔力持ちはアクセサリーを着けているよ。僕達も夫婦だし、お互いをモチーフにした物を着用するのはおかしくない」
「そう・・・だけど、夫婦は指輪が主流だよ。ピアスだと顔周りにあるから人目に付きやすいし、このデザインは特に存在感のオーラがすごいし・・・」
(あからさまに相手の所有物かのように、見えない・・・?)
「だから、いいんだよ」
満足そうに頷くと私をソファーにしっかり座らせ、その上から跨り向き合う形になる。全体重が乗っているわけではないが、ズッシリと逃げられない重みに、私は動けない。彼のしなやかな指が私の髪を耳にかけた。
ピアス穴を開けてもらうために緊張する顔を上げると、こちらを無表情で見下ろすミハイルと目が合う。
「怖い?」
「・・・うん」
「初めて、だもんね。マール、ずっと僕の方を見てて。痛くないように冷やすよ」
彼の指は氷のように冷たくなり、耳たぶに触れた。
「ヒャッア!!冷たい!・・・直接触らなくても、魔力で耳たぶに冷気を出してくれるだけでいいじゃないっ」
「ごめんごめん」
思わずミハイルを睨むと、彼はこの状況をとても楽しんでいるように見えた。
ミハイルの指に挟まれる冷たさで耳たぶの感覚が無くなり、清潔な布で拭いていく。
ピアスを開ける時は一般的に魔力で針を作り、突き刺す。
「ふっ・・・やっとこの時が来た」
彼は人差し指を針のように尖らすと一気に表情が恍惚になる。
「君に、穴を開けるよ」
彼のギラギラした表情と、直接指で刺されることが怖くなり慌てて声をかけた。
「ま、待って・・・」
「待てないよ、折角冷やしたのに」
耳たぶに尖った針が触れた。
・・・ブチッ
「いッ・・・やぁあぁああ」
ズズっ
痛みからか、ミハイルの雰囲気が怖いからか、目から涙が溢れ出る。
ズズズ
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ・・・はやく、、ぬいて・・・!」
ミハイルにしがみつき、縋るように見上げる。針が細いのか、あまり痛みの感覚は無いがミハイルは刺したまま動かない。
はやく、はやく終わって欲しい。
ボロボロと涙が出てミハイルに震える手で再度縋る。
「みっ・・・はいっる・・・おねがぃ」
「ああ」
スっと針が抜かれると、彼の指は元に戻った。テキパキと耳たぶの出血を拭き取り、消毒をしてくれる。ギフトボックスに同封されていた彼の紫の瞳色の宝石がはめ込まれたファーストピアスを着けてくれた。
「穴が安定するまでは、こっちを使っててね」
穴を開けた耳たぶはジンジンと熱い痛みがする。
「・・・・・・っひどい」
ミハイルを睨むとピアスを開けると決めたことに心底、後悔した。私の流した涙の跡を温かさが戻った指で優しく拭われる。
「僕の手でマールに穴を開けられると思うと、自分が抑えられなくて・・・僕に泣き縋る君の表情がたまらなくて・・・」
ピアスを着けた耳を甘く見つめながら、惚れ惚れした表情で語るミハイルに引いてしまう。
バッ
「もういや!回復魔法で塞いでやる」
強い魔力を出そうとする私の手首を、ソファーへ力強く抑え込む。
「君を縛ってでも何度でも開けるよ」
紫の瞳が私を射抜き、体が固まってしまう。
「・・・・・・・・・」
「ごめんね」
上に跨っているミハイルは、動けない私を愛おしそうに抱きしめる。
手がそっと耳たぶに触れ、魔力が込められると耳たぶのジンジンする痛みが引いた。
「・・・塞がないなら、上級魔法使わないで」
「ごめんね」
(はあ・・・)
動けない私は、ミハイルをあやす様に背中を撫でた。時たま出てくる、私を好き過ぎておかしくなったミハイルに毎回恐怖する。
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