魔物と共にこの過酷な世界を生きる。

やまたのおろち

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1章

絶望!異世界召喚…

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異世界召喚。それは夢と希望のファンタジー。どんなに貧弱でもチート能力をもらいさえすれば最高な冒険が始まる。そう思っていないだろうか?
そんな都合のいい話があるか!


俺の名前は加藤湊、16歳だ。どこをとっても普通な人間である。普通に学校に通い、普通に友達と遊び、普通に勉強し、普通の人生を送っている。

「なんで誰もいないのに自己紹介なんてしたんだろ。全く、自分が怖いぜ」

そんな普通な俺は、今日も学校から帰る。

「返ってきたテスト、英語以外クソだったからな…どう言い訳しようかな」

くだらないことを考えながら歩いていた。
自分の死がすぐそこを彷徨っていることにも気づかずに…

「なんかあの車、挙動がおかしいな」
酔っ払い運転でもしているのか?まだ夕方だぞ?それに、車の見た目もなんかアレだし。

突然、車がこちらに突っ込んできた。
突然、だった。思う暇すらなかった。
何が起きてるのか把握したときにはもう手遅れだった。

「たすけて」

届かない命乞い。

「たすけて」

雛菊が荒らされて。

「死にたく」

悪魔の笑う声が聞こえた。



どうやら、あの惨劇は夢だったらしい!
でなければ、いま自分が生きてるはずがないよな。しかし、唯一気になることがある。それは…

「ここ、どこだ?」

なぜか目が覚めた場所が家でも学校でもなく、立派な装飾がついてるお屋敷。あ、違うわ。これ城だわ。

「召喚は成功しました!王様!」

黒のローブを着た魔導士のような人が嬉しそうな声色でおじいちゃんに報告した。多分あれが王様なのだろう。

「よくやったマルコフ! では早速素質鑑定の準備を始めろ!」

王様がそう魔導士に告げる。
魔導士は魔法陣の展開を始めた。何あれカッコいい!
いや、そんなことを思ってる暇はない。まずは自分の状況を確認せねば。

「あの、これは一体…?」
俺はそう王様に尋ねる。白髭に白髪、まあ典型的な王、って感じの見た目をしてるな。ただ、冠は金ではなくほぼ銀でできてそうな感じ。

「すまなかった、勇者殿。説明の前にまず名前を聞かせてくれないだろうか?」
王様はそう言ってきたので答えることにした。

「俺は加藤湊。ピチピチの16歳だ!」

「ほう、ミナトか。把握した、感謝する」
渾身のボケに対してのツッコミはしてもらえなかった。

「実は、今世界が危険な状態にある。」
なんか嫌な予感がするぞ。

「魔王なのか、はたまた天変地異なのかは知らないがとにかくミナトにはそれの対処をしてもらいたい。」

理不尽すぎる…
いやまあ、本来は死んで天国に行くか地獄に行くか幽霊になって現世を彷徨うところを救われたんだから、まあ、そんくらいは、妥当…妥当か?

「でもなんでわざわざ僕を召喚したんですか?現代社会を生きるただの令和世代の僕を。」

「死ぬ寸前の人間をこの世界へと呼び出せば優秀な能力が身につくのだ。大抵の者は世界を救える力を持つと伝承には伝えられている。」

「なるほど、わかりました。それで…



長くなったのでカットする。要は、
原因わからないけどとりあえず世界やばいから救ってくれ。
この世界には魔物と呼ばれる害獣がいる。そいつらを倒して経験を積め。
この世界に来た戦闘用の素質は
「戦士」、「魔法使い」、「僧侶」、そして
『剣聖』『賢者』『勇者』など多種多様な素質がある。しかし、絶対に魔物使いにはなるなよ。マジで。魔物使いにはなるな。魔物使いにはなるな。魔物使いにはなるな。

「その……ミナト様の素質は魔物使い…あと農家でした」
なんだよ農家って。

「…!?だそうだミナト殿。では早速旅立ちの準備をしてくれ」
王様、露骨に冷たくしてくるのマジでやめてくれないか?涙が止まらない。

「でもこの身ひとつで旅立てというんですか!?自殺しろと!?」

「心配するな。金くらいなら用意はしてやる。…おい!」

なにこれ、

「銀貨15枚だ。それを使って王都で装備を整えてくれ。以上だ。」

「ちょっと待って」

叩き出された。勇者様に対しての扱いが酷すぎないか?

銀貨15枚で街に放り出された俺は、この銀貨をどう使うかで悩んでいた。
「ちゃんと考えろ…でなければ死ぬぞ、ほんとに」
この銀貨の使い道を誤れば今度こそ俺は黄泉の世界に行くことになる。
うーむ…

「とりあえずギルドとかあるだろ、まずはそこに行くべきだな」

道行く人にダメ元で冒険者ギルドの場所を尋ねたら本当にあった。よかったわ。
ギルドに入ってみるとそこには屈強な男やローブを被った女などがいた。あれは戦士でこれは魔法使いか?

「依頼掲示板の方を見てみるとしよう」

どんな感じなのか確かめたい。

『アニムの森のマタンゴ討伐 50銅貨」 
『ゼヴァルド山脈から迷い込んできた危険生物、キラーウルフの討伐 100銀貨』
『薬草採取 100gにつき3銅貨』
『沼地に潜むヒュドラ討伐 8000金貨』
『デスビーの巣の破壊 10銀貨』


あーすごい、行ける気しねぇわ。ヒュドラとか多分一生会うことないだろ。
あ、ちなみに文字を読むスキルは異世界転移者なら全員持ってるらしい。よかったね!

「薬草採取なら行けるかもしれないが、問題は魔物だ」
薬草を集めてるときに魔物に襲われたら今の俺なら間違いなく瞬殺されるだろう。そんなのごめんだ。

「そうだな、あとは物価を確かめたい」
剣とかいくらくらいの値段で売られているかを確かめなければ。
そう思ってギルドを出ようとしたとき、俺を呼び止める声がした。

「ちょっと待ちなさい!君、もしかして日本人だよね?」

冒険者のようだが、服が凄くボロい…この男も、苦労してるんだなぁ…

「いや、そんなことより…お前は俺と同じ日本人なのか?」

「そうさ、僕は山本章。アキラさんと呼ぶがいいさ」

「呼び方はどうでもいいんだが、なんで俺が日本人だとわかったんだ?」

「服見たらわかるよ」

「そういやそうだった!まだ俺の服、めっちゃ綺麗!」
洗濯って、いいね。
いやそんなことよりもさ

「アキラさん、魔物使いって職業知ってるか!?」

「そりゃもちろん。でも魔物使いって大変だよ。なんせこの国では魔物を敵視しすぎる人間が多いからね。」

「だろうね…」
もう王様の反応でわかったもん、それ

「魔物使いではないが僕もあまり歓迎されなかったようでね!毎日生きるので大変なんだ。」

「それは同情する…あ、あと!魔物を仲間にする方法とか知ってない?」

「少しは僕の話も聞いて欲しいんだけどね!詳しくは知らないんだが…っと、無料会員版はここまでだ。続きは金を…」

「よし乗った、銀貨3枚出す。魔物使い以外にもこの世界の常識をいろいろ教えてくれ」

「すごいね、君」

装備よりも情報だ。銀貨3枚で情報が手に入る?素晴らしいことではないか。



話を聞いてきた。どうやら、魔物を仲間にするにはまず魔物を戦闘不能状態にする。そして専用の道具、「魔物使いの杖」で心を通わせる。たまに失敗することもあるが、成功すればそれで仲間になってくれるらしい。ちなみに、魔物は魔物使いの杖に入れておくことができるらしい。品質によって入れられる数が違う。

「で、その魔物使いの杖はどこにあるんだ?」

「隣の国に行けば簡単に手に入るけど、この国だと結構レアなんだよね。でも大丈夫、この最低品質のやつをあげる」

「うおおおおおおおおお!!!マジで?流石アキラ先輩憧れるッス!サインください」

「露骨だね」

最低品質だと魔物は5体まで収容できるらしい。今は5体もあれば十分だろう。

「ありがとうアキラさん!恩に着るよ!」
おれの最強無双劇が始まった。

「また銀貨持ってこいよな!」
ま、アキラには悪いが彼はあまり信用できないのでこれでお役御免だ。なんだったっけ、格闘家だったかな。

冒険者ギルドで思わぬ収穫を手に入れた俺は、次に装備を買いに行くことにした。
道に迷いながらやっとこさたどり着いたおれはポケットに魔物杖を入れたまま入店した。

「いらっしゃい」

魔物使いが嫌いなこの国のことだ、持ったままだと絶対差別される。
店主は無愛想な男だった。まあ、典型的なやつ。

さて、剣や防具の値段を見てみよう。

鉄の剣や鉄の鎧などは10銀貨なようだ。買えないことはないが、1個しか買えないし、残り銀貨2枚じゃ不安だ。やめておこう。
銅の剣が銀貨3枚だから、それを買っておこう。あとはー…そうだな。木の盾を買っておこう。10銅貨か。あ、ちなみに両替はアキラにやらせた。1銀貨は100銅貨なんだと。
あと防具だな、この甲羅の鎧?3銀貨だからこれを買うとしよう。

「銅の剣と木の盾、あと甲羅の鎧をくれ!」

アキラレッスンで鎧や剣の扱い方は覚えた。このくらいなら貧弱な俺でも問題なく使えるはずだ。

小腹が減った俺はギルドに戻って銅貨90枚で晩飯を食べ、安宿に泊まって寝た。
これで、俺の全財産は銀貨4枚になった。王様、僕のお金少なすぎますよ。
あー家族に会いたい…
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