魔物と共にこの過酷な世界を生きる。

やまたのおろち

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1章

調子に乗るなよ若造が

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異世界2日目。夢だったらよかったのに…
アドベンチャータイムの前に、俺はまず魔道具店に向かう。店主は老婆だったが、それはどうでもいい。

「すみません、なんかビー玉みたいな魔道具ってありますか?」

「ビー玉…?ああ、あれかの?レベルボール」

「そう!それ」
レベルボール。それは相手の強さ指数、通称「レベル」を調べるためのものである。

基本的にはレベルの最大は100。レベルの効果はおぞましく、雑魚のゴブリンでもレベルが100なら低レベルのミノタウロスに勝てることがあるらしい。
初心者の俺はそんなやつと相手したくない。なので魔物を見つけたらまず遠くからこのビー玉をかざすことにしたのだ。

「まあ、高レベルのやつなんてなかなかいないんだけどな。」

高レベルになるには過酷な生存競争を生き抜く必要がある。なので個体数はかなり少ないらしい。

「念のためにも、ね。ほら、石橋を叩いて渡るってやつよ」
レベルボールと共にいくらか薬草を買って俺は店から出た。


さて、そんな俺が王都を抜けて歩いた先はここ。クロム草原だ。
クロム草原は初心者冒険者がよく来るところなんだと。出てくる魔物はゴブリン、オーク、メガドロ、弱スライム、ニクグイチョウ、ヒトクイチョウ、チュウトカゲなどだ。

オークとヒトクイチョウがこの中では危険かな。そしてそれよりも気をつけなければならないのは『ブラッドタイガー』である。
ブラッドタイガーは個体数こそかなり少ないが、獰猛で危険なモンスターである。その分仲間にしたら強力なのだが、まあ…今は無理だな…

基本的には攻撃的な生物が多いのだが、メガドロという成人男性の背丈並みの大きさのカメは受動的な生き物である。なのでもし俺が危なくなったらこいつに魔物をなすりつけて逃げる。いや、こいつを仲間にしてもよいのか…まあともかく

「まずはなんでもいいから仲間になってくれ!!」
あまりにも1人だと心細すぎる。スライムでもなんでもいいから仲間にしよう。
本来スライムってのは酸攻撃を扱う強力なモンスターのはずだが、ここのスライムは弱個体。ただの雑魚だ。

この草原ではブラッドタイガー、ヒトクイチョウを仲間にしたい。
ブラッドタイガーの高い戦闘能力は別の地域の危険生物とでも渡り合える。ヒトクイチョウは移動手段として優秀だ。ヒトクイチョウは俺を乗せて飛べるほどの大きさがある、奴がいればこれから先かなり楽になるに違いない。

そんなことを考えながら、俺は弱スライムと戦闘していた。素材を売って資金にするために倒してもいいのだが、まずは仲間にしてみよう。
さて、スライムが倒れた。死んではいないな。

「頼む、お前が必要なんだ」
魔物の杖をかざしーーー




弱スライムが、仲間になった。

いくら弱くても、仲間がいるというのは心強い。スライムを休ませてから早速一緒に戦ってみることにした。
「ライムちゃん、これからよろしくな」
そう告げて。

次はゴブリンを仲間にしてみることにした。

「俺とライムのコンビネーションを舐めるなよ!!」

俺が盾で攻撃を防ぎながらライムが後ろから攻撃する。ライムの攻撃力はあまり高くないが、まあチリも積もればってやつだ。
「キュイキュイ!」
ゴブリンが鳴いている。これは仲間を呼んでいる合図なんだとか。でもあまり来ないらしい。人望どこ…?
俺とライムに挟み撃ちにされたゴブリンは低レベルだったためすぐ行動不能になり、先ほどと同じ要領で仲間にできた。
次はチュウトカゲを仲間にすることにした。チュウトカゲはコモドドラゴンより一回り小さいような見た目をしている。弱めな毒のブレスをちょろっと放ってくる厄介生物なんだとか。俺はこのブレス対策のために盾を買ったまである。これを使うぞ…!

レベルは27のチュウトカゲ、これならいけるはずだ。俺は木の盾を持って突撃する。アタッカーはライムとゴブさんと名付けたゴブリンに任せることにした。

「盾の恐ろしさを見せてやるわ!」
俺はチュウトカゲの口に盾を押し付ける!
チュウトカゲは抵抗しようとしているがゴブさんとライムの攻撃によって上手くもがくことすらできないようだ。毒の匂いがする。なんだこれ、人の尿みたいだ。
毒攻撃を諦めたチュウトカゲは噛みつき、引っ掻き、尻尾での薙ぎ払いを試そうとしたがどれも有効打にはなっていない。

「このまま持久戦で勝てる!」
そうして2分も経たないうちにチュウトカゲは陥落し仲間になった。

「チュウトカゲ?贅沢な名前だね。お前の名前は今日からチュウカだ」

なんかチュウカがすごい困惑してる気がする。だって、中華料理美味しいやん…

ライム、ゴブさん、チュウカの3体の仲間と共に俺は冒険を続ける。
「この杖だとあと2体仲間にできるな」
「キュー!」 「キュイキュイ!」
順調な冒険だった。ノーマークだった。

悲劇は 突然 起こる

「ウァオオオオオン!!!」
凄まじい遠吠えがした。
「な、なんだ!?」
ブラッドタイガーは遠吠えなどしない。だが念のために川沿いへと走る。ブラッドタイガーは水を嫌う習性がある。彼らは獲物の生き血を水代わりに飲むのだ。樹液なども飲むらしい。

ブラッドタイガーの話は置いておこう。
なぜなら、現れたのはブラッドタイガーではないからだ。それは…

キラーウルフだ。

おぞましい2本のツノが生えた巨大なオオカミ。体は黒く、目は青い。獰猛な危険生物だ。

「!!!!!!!!」
獲物を見つけたようだ。それは俺たちのことなのだが…

「まずい、まずいまずいまずいまずいまずいまずい」

この世界はゲームじゃない。1度切りの人生だ。逃げるしかない。
3体の仲間に逃げるように促す、だが…
彼らは本能で気づいていたのだろう。
【逃げ切ることはできない】と。
彼らは…囮になることを決めたのだ。まだ仲間になって間もない、弱い主人のために。

「ごめんなさい…」

自分のために命を散らした彼らに対して、謝ることしかできなかった。

一刻も早く強い戦力を仲間にせねば、より酷いことになる。彼らの分まで生きなければ。

「だが、そんな強い魔物なんてここら辺にいるか?」

ブラッドタイガーなら渡り合えるとは思うが、あれを仲間にするにはまだ早すぎる。
その時、視線を感じた。

「あれはただの…メガドロか?」

レベルは20、だが…どうもあの目は…酷く俺に対して怒っているような…?

「そんなことはどうでもいい。今は戦力が必要なんだ」
メガドロを仲間にすることにした。

あのメガドロは移動速度以外どれもが高水準だった。レベルとは別の強さを感じるのだ。
血の匂いがする…ゴブリンやスライムとは全く違う攻撃力の高さだ。痛い。

「鎧がなかったらただじゃすまなかっただろうな」

メガドロはリーチが短く、小回りもあまり効かない。俺が勝てるとしたら、その弱点をつく方法以外まずないだろう。仲間がいたらもう少し楽だったかもしれない。
あのカメは強すぎる、銅の剣が先に折れそうだ。

「まさかここまで強いとは…」

こちらはどんどん負傷していく。
もう少し、弱いものだと思っていた。
ならば、どうするか…
リスクがつきまとうが、この方法しかない

「こっちだのろま!」
俺はカメを挑発して誘導してする。
時々、自分の企みに気づかないように石を投げてわざと怒らせている。

俺が誘導した先、そこは

「チュウトカゲの、縄張りだ」

20はいるチュウトカゲとカメを戦わせることだった。あのカメは強い。しかしチュウトカゲだってバカにならない。2体ほどレベル100の個体もいた。

「なすりつけ作戦、成功!」

カメと20のチュウトカゲは激戦を繰り広げている。チュウトカゲの毒がカメを襲う。重傷だ。しかし、チュウトカゲ側の被害も大きい。9割はすでに力尽きている。

「どんだけ化け物なんだよ、あれ」

チュウトカゲが毒溜まりを残し全滅した。
だがカメもだいぶ消耗している。
ボロボロのカメvs魔物なし魔物使い
決戦のときだ。

まずは銅の剣でカメを叩く。斬るよりも叩いた方が効果があることに気づいたのだ。

「それにしても、メガドロというのはあそこまで強かったか…?」

ありえない強さだ。オーク、ブラッドタイガー、ヒトクイチョウ以外なら今の俺でも倒せるんじゃなかったのか?

仲間にしようという焦りで気づいていなかったが、最初あいつは険しい目つきをしていた。考えられる理由は…

「俺が3体の仲間を見捨てて逃げたからか?」

それだけじゃない。何か、別の理由が…
考える暇もなく、カメが俺の腹に向かって攻撃してきた。
甲羅の鎧のおかげで守られているが、それでもダメージを抑えられていない。

「この剣じゃダメだ。何か…」

目についたのは、チュウトカゲの残した水溜まり、いや。毒溜まりだった。
あれを使うしかない。

メガドロはどんどん迫る。それに対して俺のとった行動は、

「ほらほら、カメなんだから水遊びが好きなんだろ!?」

木の盾を犠牲にアンモニア臭のする液体をカメにぶっかけた。

「チュウトカゲの毒は弱いが…これだけの量を浴びたんだ、盾はもうダメだろうな」

まあ、木のわりにはよく頑張ったよ。

メガドロは悶え苦しむ。もうこれで戦闘不能だろ。
魔物の杖を構えて早速仲間に…

できなかった。
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