魔物と共にこの過酷な世界を生きる。

やまたのおろち

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1章

賢王敗れ去りて

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クロツバサとの戦闘は、苛烈を極めていた。
おそらくこの機会を逃せば今度こそクロツバサに対しての有効打は無くなるだろう。
いや、それだけじゃない。ここでこの怪物を討伐し損ねればどうなる。

自らの弱点を完璧に理解した賢すぎた怪物は、今度こそ本当に誰にも止められない存在となるだろう。

「今使える戦力は…」

今乗ってるヴァイ、フェニックス、青龍。そして、役目をなくした滑空鯨だけだ。あとは全員が全員己の役目を懸命に果たそうとしている。

「化学反応作戦が不発に終わった今、ここで何かできることは…あれ?」

一つ思いついたことがある。

「ヴァイ、オオトカゲの毒を奴の口の中にばら撒くぞ!滑空鯨は奴よりも上空で待機!」

もちろん、毒はクロツバサには効かない。

クロツバサはそれがどうした?万策尽きたか、英雄。とでも言いたそうな顔をしている。だが、別にオオトカゲの毒でなくてもいい。

超高熱になっても原型を留めてさえいれば。

「フェニックス、奴の口の中の毒に熱線を叩き込め!」

フェニックスはとてつもない高熱のブレスを吹く。しかし…そのブレスはクロツバサを傷つけるためのものではない。中にある毒を、高温な物体にさえできれば。




水蒸気爆発、というものはご存知だろうか。
温度が180℃を超えると、圧力に耐えきれず、皮が破裂して水蒸気が一気に放出される。これが、水蒸気爆発だ。

何かに気づいたしもべたちが、その超高熱毒を口外へと排出しようとする。まじかよ、ここまで賢いのかよ。だが、もう遅い!

「青龍、水だ!放水しろ!マレムはアルタイルたちを守れ!」

青龍は言われた通り、クロツバサの口内へと放水した。そして…

耳が弾けそうになるくらいの爆音と目が失明するくらいの光を発生させるほどの爆発が、クロツバサの口内で起きた!

俺はアルタイルたちの盾となったがゆえとてつもないダメージを負ったマレムを急いで杖にしまった。うわ、トンカチで軽く叩いたらその時点で砕け散りそうなくらい酷すぎるケガだ。そして当のクロツバサはどうなったかというと。

「@#mt#mg@mpd/@pm」

白目を剥いて気絶しながら、自由落下をしていた。だがこの怪物恐ろしいことに…!

「!!!!!!!!!!」

「はあああああああああああああ!?!?!?」

なんと、目を見開き復活してみせたのだ。いやまあ流石に瀕死っぽいけどさ、ゴキブリより酷い生命力なんじゃねぇのこれ?だが、

「ホゲェェェェェ!!!」

「いや、それにも備えてたけどさ、もう倒したもんだと思ってた」

滑空鯨が自らの巨体を武器とし、まるで隕石かのようにクロツバサの脳天へと激突した!

流石にこれにはひとたまりもなかったらしく、クロツバサはついに敗れ地上へと墜落した。



「やりましたなミナト殿!これでついに三怪物の一角、クロツバサの討伐に成功しましたぞ!」

ジャックが興奮を隠さずそう言ってきた。よっぽど三怪物ってのは忌み嫌われてるんだなー…

「そのことについての話なんだけどさ、実は……このクロツバサ仲間にできないかなって」

「な!?この怪物を!?」

「多分この怪物を仲間にできたら他の怪物討伐も楽になると思うんだ。こんな大軍団を結成しても苦戦するくらいだからね」

俺は魔物杖をかざしてクロツバサを仲間にしようと…

突然、意識が弾かれた。

「!?」

俺は目を見開く。

「どうしたのですかな?」

俺の不審な行動に疑問を思ったジャックが俺に声をかけてきた。だがー…もしこのことを知ったら誰もが俺と同じ反応をするに違いない。

「このクロツバサ、既に誰かによって仲間にされてるんだ…!!!!!」
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