鎖血のタルト 〜裏切られた王女は復讐をやめた〜

狐隠リオ

文字の大きさ
21 / 42

第二十一話 接触

しおりを挟む
 学校の二大美少女の一人、羽森撫照。
 長い黒髪をポニーテールにした美少女。

 ピーチみたいな色気増し増しではなく、正統派の美少女だ。
 表情筋はオレの数倍死んでるけど、逆にそれがミステリアスで魅力になっているようにも感じた。

「朝なら話せるかもしれないと思っていましたが、現実になるなんて幸運ですね」
「なんで朝限定?」
「不快に思うと思いますが、いつも一緒に居てくれる大切な友人が貴方の事を危険視しているんです。だからあの子のいない今しかこうして話すのは難しいと思ったんです」
「へえ、なるほどね」

 オレを危険視するか。そいつのセンサーは確実に有能だぞ。
 もし女王様に命令されたらオレは——躊躇いなくピーチと共にこの国を滅ぼすからな。

「それで? 必要ないって何だ?」
「貴方と酒井さんの戦いは見せてもらいました。彼はトップクラスの実力者です。だというのに貴方はほぼ……いいえ、一方的な展開で勝利していました。その実力を疑う事は誰であろうと不可能だと思います」
「そりゃどうも」

 見られていたのは知っている。ラッキーだと思っていたからな。

「手加減していましたよね?」
「……ノーコメント」
「十分です」

 こいつ……。
 いや、慌てる事はない。問題は何もない。
 ただ、オレの中でこいつの注意度が滝登りし続けてるだけだ。

「あの模擬戦は正式な申請によって行われたものです。その勝敗もまた報告する義務があります。本来ならば勝者である貴方が伝えるべき事だったのですが、転校初日ですし把握していないと思い、勝手に代理として報告して起きました」
「えっ、よくわかんないけど助かったって事だよな? ありがとう」
「今回だけです。次からは自分でして下さいね」

 ……よし。酒井をボコそう。
 そんな大切な事をどうして教えてくれなかったんだ? 非は確実に奴だ。だってオレ、そんなルール知らないもん。
 こちとらここに来て初日だぞ!?

「正式な戦いですのでその結果は重要視されます。とくに今回はシングルを相手に勝利していますので、遠くない内に特権を与えられると思いますよ」
「その内じゃ困る。今日から一人部屋に住みたい」
「ルームメイトと合わないという事ですか?」
「そんな感じ」

 同室の三人娘は仲良しトリオだったらしく、オレが部屋に入るなり囲まれたんだ。そして怒涛の質問攻めが始まった。
 こんな遅くまで何をしていたのか。この国に来るまでは何処にいたのか。好きな人は? 彼氏はいる? などなどと無遠慮だった。

 お年柄だし、まあ仕方がないとも思うけど……迷惑ってのが本音だ。

「それなら特権を得られるまで私の部屋に来ますか? 部屋なら空いていますし自由にしてよいですよ」
「えっ、それマジで言ってる?」

 初めて会話した相手を部屋に住ませようとするって、あまりにも無防備過ぎないか!?

「ですが皆さんには内緒ですよ? 特に夜見、天照は過剰反応すると思いますので」
「あー、そいつがオレを危険視してる友人って事か」
「……あっ」

 しまったと言わんばかりに口元を手で塞ぐ羽森。

「あの、その……」
「害する気はないから安心しな。というか、オレってそんな危険なイメージあるのか?」
「そりゃ仕方がねえだろ。人の忠告を無視して有名人に喧嘩を売る奴なんだぞ?」
「うるさい涼樹」

 そういえば居たな。あまりにも静かだから忘れてた。けどまあ、危険人物だよな。客観的に見たらさ。自覚はある。
 だけどそれはあえてだからな? オレ自体は普通……じゃないか。

「……二人は随分と仲が良いんですね」
「友達だからな」
「同郷だったんですか?」
「いや、知らん。友達歴今日で二日目だ」

 驚いている羽森に真実を話せば、彼女はクスクスと笑みを浮かべていた。

「貴方は私が思っていたよりも面白いんですね」
「どんな奴だと思ってたんだ?」
「危険人物に決まってるだろ。そろそろ自覚しろ」
「うるさい涼樹。ぶん殴るぞ」
「ほらっ!」
「黙れっ!」

 鎖でぶん殴りたいところだが、羽森の前でそれはやめた方が良いだろう。拳では威力が足りないだろうし、ならば選択肢は一つだ。
 その場で半回転し遠心力を込めた蹴りを涼樹の頭に向かって振るった。

「危なっ!」
「……へえ」

 戦闘は鎖を使うのがメインで体術はそこまで使わない。それでも素手で敵を制圧出来るくらいの実力はあると自負している。
 戦闘中ではない日常での奇襲。確実に当たると思っていたのに、涼樹はオレの蹴りを平然な顔をして受け止めていた。
 想像以上だな。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

処理中です...