鎖血のタルト 〜裏切られた王女は復讐をやめた〜

狐隠リオ

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第二十二話 多属性な少女

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「というかタルト! 女子がスカートで蹴りをするな!」
「ん? パンツでも見えたか? 随分とウブだな」
「う、うるせえ!」

 僅かに紅潮した顔で叫ぶ涼樹にニヤリとした意地悪な笑みを浮かべながらそう返すと、目に見えて動揺していた。

「まあアレだ。蹴りを防げたご褒美だと思って脳内フォルダーに保存しておけ」

 異性だとしてもパンツを見られた程度で羞恥心は刺激されない。だってたかが下着だぞ?
 流石にその下を見られるのはやばいけど、パンツくらいならなんとも思わない。だからわざわざパンツの上に見せパンとやらや、ズボンを履く気はさらさらない。

「理解不能だ。なんでこんなものを見て喜ぶんだ?」

 自らスカートをたくし上げながら呟くと、羽森がとんでもない速さで動いていた。

「……」

 無言のままオレの手首を掴み、腕を下げさせる羽森。どうやらこのたくし上げをやめさせたいらしい。続ける意味もないし素直に手をスカートから離した。

「どうした?」
「……はあー。どうやら素みたいですね」
「だから何が?」
「それは……」

 何やら言いにくそうにしているな。それによく見ると僅かだか顔が赤くなっているように見えた。

 うわっ、こっちもウブかよ。その顔で清楚は反則だろ。持ち帰るぞ? ん?

「わかったわかった。もうしないから安心しろって。涼樹的には残念だったり?」
「うるせえっ!」

 何これやば。こいつ揶揄うのめちゃくちゃ楽しいのだが?
 というかこいつ、普通にオレの事を女子だって認識してたんだな。そこらへんの感覚はまだ小学生のガキだと思ってたのに。

 いや、小学生でも異性のパンツには喜ぶのか? じゃないとスカート捲りだなんてするクソガキがいるわけないもんな。……あれはまた別か。ただの悪戯だろうし。驚く様を見て楽しんでいるんだろうし。

「あの、それでどうしますか?」
「ん、何が?」

 ごほんと咳払いしてからの発言。主語を下さい。

「私の部屋に来ますか?」

 あっそうだ。元々そういう話だったっけ。
 涼樹とかいうウブウブのウブがウザくて完全に忘れてた。

「オレとしては助かるけど、本当に良いのか?」
「ええ、良いですよ。でなければ誘ったりしません」
「それなら頼む」
「頼まれました」

 まさかこんな形で羽森に近付く事が出来るなんてな。あの三人娘には少しだけ感謝の念を送っておこう。三十九ー。

「それでは私はこれで失礼しますね」
「ああ、ありがとな」
「またな羽森」

 ぺこりと頭を下げてから自分の席へと向かう羽森。
 彼女が着席した数秒後に登校して来た少女は、迷いの無く羽森の席へと向かっていた。

「おはよう羽森様!」
「おはよう夜見。様はやめて」

 長い黒髪をツインテールにしているクラスメイト、天照夜見。
 オレの事を危険視しているらしい羽森の友人。

 ……まさか来る事を察したのか? いや、偶然だよな? まあ、一緒にいる所を見られたらお互い困るからナイス。
 それにしても天照とかいう女。

「なあなあ涼樹」
「……なんだ?」
「どうした? 随分と歯切りが悪いじゃんか」
「嫌な予感がしたからな」
「……ほう」

 声を掛けただけで嫌な予感がしただと? 鎖出すぞこの野郎。

「それで、なんだよ」
「いや、天照見て思ったんだけどさ。あいつ、ロリなのにおっぱいデカくね?」
「……お前……マジでお前……」

 見たままの感想を口にしたところ、何故か自席に突っ伏す涼樹。それから何やら教室中の視線が集まっている事に気が付いた。

「オマエらどうかしたのか?」
「お前のせいだ!」
「えっ、情緒やば。怖過ぎなんだが」
「俺はお前が怖いよ!」

 何故怯えられているんだ? ちょっと初日に喧嘩を売って、放課後に対戦相手をボコしただけじゃないか。
 怖がる要素なんて何処にもないだろ。失礼だな。

「……ねえ、タルト・ドルマーレ。少し良いかしら?」
「ん?」

 フルネームで呼ばれたので振り返ると、そこにはロリ巨乳が怒筋を浮かべて仁王立ちしていた。

「天照夜見だっけ? なんだ?」

 危険人物だと思っている相手に自ら話し掛けるだなんて、随分と度胸があるんだな。そりゃ立派なものを持っているはずだ。
 というか、明らかな怒気を放ってるけど一体どうしたんだ?

「あんた、よくもあたしの事を馬鹿にしたわねっ!?」
「なんだただの冤罪か」
「はあっ!? 現行犯逮捕よっ!」

 なんだこのロリ。言葉の意味を知らないのか? 難しい言葉を使いたいお年頃なのか?

「天照。オレたちはもう高校二年生だぞ? そういうのは三年前にやっておけ」
「えっ、は? 三年前?」

 困惑顔を披露する頭中学二年生のロリ巨乳。……属性多過ぎだなこいつ。盛るのは胸だけにしておけ。盛ってないみたいだけど。

「悪い天照。こいつも悪気があったわけじゃないんだ。許してくれないか?」
「おい、だからオレが何をしたって言うんだ」

 勝手に人を悪者みたいに扱うな。暴動起こすぞ? いや、ソロだからただの暴走か。

「こ、こいつ……まさか本当に?」
「悪い、こいつ馬鹿なんだ。だからな? この通り!」

 両手を合わせて謝罪している涼樹と、ドン引きフェイスの天照。
 なんだこれ。理解していないのはオレだけか? それなら……オレ馬鹿じゃん。
 そんなやり取りをしていると、チャイム音が学校中に響き渡っていた。

「へいへーい! ぐっもおーにんぐダバダバー。ホームルームの時間だよーん」

 十数秒続くチャイム音が鳴り終わるのと同時に現れる北炒先生。
 ついさっきまでオレと話していた天照も既に着席していた。
 こうして登校二日目の日常が始まった。

   ☆ ★ ☆ ★
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