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第二十九話 始まり
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この周辺地域で最も栄え、壁国と呼ばれるレベルまで発展した国センズファスト。
そんな国に俺、高根涼樹は生まれた。
センズファストは長い歴史を持つ国だ。百年以上も続いた国となれば、何かしらの特徴が生まれても不思議じゃない。
そして実際にこの国には大きな特徴があった。それは数多の賢者たちが研究と研鑽を続けた果てに確立された技術、魔術だった。
人間の体内に流れる魔力を原動力に、杖に刻み込んだ術式を発動させる事によって様々な現象を起こす技術。それが魔術だ。
この国の象徴でもある魔術を行使する者たちは魔術師と呼ばれ、国民から尊敬される存在だった。
魔術師になるには高い魔力制御技術が必要で、これはほぼ才能だった。
魔力制御に長けた者たちはどんな生まれだとしても魔術師となり、皆から尊敬される存在へとなっていた。
魔術師としての才能があれば誰でも成り上がる事が出来る国。そんな国柄が続く中でそれは起きてしまった。
魔術師たちの暴走だ。
その力は権力へと手を伸ばし始めて、国の全てを魔術師たちが管理し、支配するようになっていた。
強者が弱者を従える。それは自然の摂理だ。だけど魔術師はやり過ぎたんだ。
魔術師を束ねる組織が生まれ、その頂点は魔術師の王、魔王と呼ばれるようになり、国を己の思うがままにした。
現在の魔王、塔怪諚《とうかいさだめ》は……最悪だった。
魔術師たちは裕福に暮らし、魔力が少なかったり才能がない者たちは貧しい。俺が生まれた時には既に、この国は過去の輝きを失っていた。
俺には魔術師としての才能がなかった。どれだけ努力しても、魔力を体外に放出するという基礎中の基礎すら行う事が出来なかった。
その事に両親は悲しんだけれど、決して自分たちのためじゃない。両親もまた才能がなかったため、俺の未来を想うと辛かったんだ。
貧しい生活が続いた。だけど、俺たちには希望があった。
父さんは技術者だった。そして幼馴染の少女の父親と父さんが共にしている研究は、この国を根本から変える可能性があった。
選ばれた者しか使えない魔術。それが武力としてあまりにも強大だった。逆らえば殺されてしまう。戦って勝つだなんて不可能。人数で補う事だって出来ない。魔術師たちの百倍頭数を揃えたとしても、勝てる未来はなかった。
剣や槍で攻めても遠距離から一掃されてしまう。弓やボウガンでも敵わない。ならば既存武器を超える武器を作り出す事が出来れば、技術で魔術に対抗する事が出来るかもしれない。
ボウガンのように引き金一つで遠距離攻撃出来る事。
単発ではなく、連射出来る事。
取り回しが容易な事。
女子供でも問題なく使える事。
それら全てを解決する新たな武器の研究。
少しずつ研究に参加する人数は増え、完成図の輪郭が見え始めた頃にそれは起きた。
魔王による技術者の処刑だった。
何処かからか研究の事が魔王へと伝わってしまい、その結果に数多の技術者、その家族、親戚、友人まで殺された。
俺の両親だって殺された。
もう誰も反乱なんて考えないようにと、大勢が命を弄ばれて殺された。
俺が助かったのは偶然だった。運が良かっただけだった。でも、あの日に俺は死んだんだ。
両親の仇を取るために、必ずこの手で魔王を殺すと決めた。
その一年後。魔王は討たれた。
魔術師同士で争い。その果てに魔王は死に、王妃も殺された。
俺は復讐心の行き場を失った。だけど自身の心を守るために、その感情は唯一生き残っていた魔王の娘へと向かっていた。
魔王の娘、塔怪瑠海。
お前にはあの悪魔の血が流れている。だから殺す。
お前は将来誰かを不幸にする。だから殺す。
その血は誰かを破滅させる。だから殺す。
その存在そのものが罪だ。だから殺す。
生きているが不愉快だ。だから殺す。
……殺す。
毎日剣を振るい、身体を鍛えた。
常人は魔術師に勝てない。だけど俺は父さんみたいに頭が良くない。だから愚直にただ身体を鍛えた。
何をされても死なない。立ち上がり続ければ、諦めなければ、闘志が燃え続けさえしていれば、負けない。そしていつかはこの刃が届く。
その日を目指して、夢見て、鍛え続けた。
娘が処刑された。
その知らせを聞いた時、俺は壊れた。
「ああああああああああああっ!」
生きる理由。復讐心を向ける相手が全て消えてしまった。
その瞬間、生きようという感情が消えてしまったんだ。
そんな国に俺、高根涼樹は生まれた。
センズファストは長い歴史を持つ国だ。百年以上も続いた国となれば、何かしらの特徴が生まれても不思議じゃない。
そして実際にこの国には大きな特徴があった。それは数多の賢者たちが研究と研鑽を続けた果てに確立された技術、魔術だった。
人間の体内に流れる魔力を原動力に、杖に刻み込んだ術式を発動させる事によって様々な現象を起こす技術。それが魔術だ。
この国の象徴でもある魔術を行使する者たちは魔術師と呼ばれ、国民から尊敬される存在だった。
魔術師になるには高い魔力制御技術が必要で、これはほぼ才能だった。
魔力制御に長けた者たちはどんな生まれだとしても魔術師となり、皆から尊敬される存在へとなっていた。
魔術師としての才能があれば誰でも成り上がる事が出来る国。そんな国柄が続く中でそれは起きてしまった。
魔術師たちの暴走だ。
その力は権力へと手を伸ばし始めて、国の全てを魔術師たちが管理し、支配するようになっていた。
強者が弱者を従える。それは自然の摂理だ。だけど魔術師はやり過ぎたんだ。
魔術師を束ねる組織が生まれ、その頂点は魔術師の王、魔王と呼ばれるようになり、国を己の思うがままにした。
現在の魔王、塔怪諚《とうかいさだめ》は……最悪だった。
魔術師たちは裕福に暮らし、魔力が少なかったり才能がない者たちは貧しい。俺が生まれた時には既に、この国は過去の輝きを失っていた。
俺には魔術師としての才能がなかった。どれだけ努力しても、魔力を体外に放出するという基礎中の基礎すら行う事が出来なかった。
その事に両親は悲しんだけれど、決して自分たちのためじゃない。両親もまた才能がなかったため、俺の未来を想うと辛かったんだ。
貧しい生活が続いた。だけど、俺たちには希望があった。
父さんは技術者だった。そして幼馴染の少女の父親と父さんが共にしている研究は、この国を根本から変える可能性があった。
選ばれた者しか使えない魔術。それが武力としてあまりにも強大だった。逆らえば殺されてしまう。戦って勝つだなんて不可能。人数で補う事だって出来ない。魔術師たちの百倍頭数を揃えたとしても、勝てる未来はなかった。
剣や槍で攻めても遠距離から一掃されてしまう。弓やボウガンでも敵わない。ならば既存武器を超える武器を作り出す事が出来れば、技術で魔術に対抗する事が出来るかもしれない。
ボウガンのように引き金一つで遠距離攻撃出来る事。
単発ではなく、連射出来る事。
取り回しが容易な事。
女子供でも問題なく使える事。
それら全てを解決する新たな武器の研究。
少しずつ研究に参加する人数は増え、完成図の輪郭が見え始めた頃にそれは起きた。
魔王による技術者の処刑だった。
何処かからか研究の事が魔王へと伝わってしまい、その結果に数多の技術者、その家族、親戚、友人まで殺された。
俺の両親だって殺された。
もう誰も反乱なんて考えないようにと、大勢が命を弄ばれて殺された。
俺が助かったのは偶然だった。運が良かっただけだった。でも、あの日に俺は死んだんだ。
両親の仇を取るために、必ずこの手で魔王を殺すと決めた。
その一年後。魔王は討たれた。
魔術師同士で争い。その果てに魔王は死に、王妃も殺された。
俺は復讐心の行き場を失った。だけど自身の心を守るために、その感情は唯一生き残っていた魔王の娘へと向かっていた。
魔王の娘、塔怪瑠海。
お前にはあの悪魔の血が流れている。だから殺す。
お前は将来誰かを不幸にする。だから殺す。
その血は誰かを破滅させる。だから殺す。
その存在そのものが罪だ。だから殺す。
生きているが不愉快だ。だから殺す。
……殺す。
毎日剣を振るい、身体を鍛えた。
常人は魔術師に勝てない。だけど俺は父さんみたいに頭が良くない。だから愚直にただ身体を鍛えた。
何をされても死なない。立ち上がり続ければ、諦めなければ、闘志が燃え続けさえしていれば、負けない。そしていつかはこの刃が届く。
その日を目指して、夢見て、鍛え続けた。
娘が処刑された。
その知らせを聞いた時、俺は壊れた。
「ああああああああああああっ!」
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その瞬間、生きようという感情が消えてしまったんだ。
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