鎖血のタルト 〜裏切られた王女は復讐をやめた〜

狐隠リオ

文字の大きさ
39 / 42

第三十九話 生存者

しおりを挟む
 喪服。それが意味する事は一つ。

「今日が彼の命日ですわ」
「なんで涼樹を殺す必要がある。この前のはこいつから襲ってるから正当防衛として、今回は勘違いを訂正したわけだし必要ないだろ?」
「それはどうかしら。確かに私《わたくし》は瑠海ではないけれど、血の繋がった姉だというのは事実。この血を憎んで言うのならば私《わたくし》もまた復讐対象でしょう?」

 涼樹の恨みは魔王と王妃。そしてその子供たちだ。
 それなら確かにそうなるか。
「だけどタルト、貴方を殺すつもりはありませんわ」
「……どうせ碌でも無い理由だと思うけど、聞いてやる」
「貴方は貴重な実験材料ですもの」
「……うわ、想像以上だった」
 実験材料ってなんだよ。もしかしてこいつは研究者か何かなのか? 
 どうしてオレを狙っているのかは、なんとなくわかったな。自分の身体では出来ない実験をオレの身体でやろうとしている。
 あの悪意。大きく外れてはいないだろう。
「そうだわ。これも一つの縁。貴方たちに面白い事を教えてあげますわ。特に、彼にとっては重要な話だと思いますわよ」
「俺にとって?」
「うふふ、興味があるようですわね。良いですわ。冥土の土産に教えてあげましょう。この国ホムラフェルファと我が祖国センズファストの関係を」
「「——っ!?」」
 今、なんて言った?
 ホムラフェルファとセンズファストの関係?
「我が祖国センズファストは魔術の国。魔術師たちが支配している国でしたわ。魔術は強力な武器。センズファストの平和は魔術師たちによって維持され続けたわ。しかしやがて魔術師たちは恐怖で国民を支配するように変化し、その結果、恐怖から逃れるべく様々な技術が開発された。完成品、未完成品、それらはあまりにも様々な用途で使用出来る技術の宝。それらを全てお母様は回収しましたの」
「……は?」
 雛芽の話を聞いているうちに、呆然とし始めた涼樹。
「あらあら? その様子、もしかするとお母様が回収した技術のどれかは、貴方のご両親が作り出した技術だったのかもしれないわね」
「……そうだ。父さんは研究者だった。そして魔王に殺された!」
「否定しますわ」
「ふざけるな!」
「貴方のご両親を殺したのは魔王ではなく、お母様ですもの」
「……は?」
 母様が涼樹の両親を殺した?
「でもおかしいわね。国の礎となった人々に敬意を表し、家族はみんな同じ所へ送ったと聞いていたのですけれど、どうやら例外がいたようですわね。ならばやはり貴方はここで殺すべきですわね。感謝しなさい、ご両親の元へと送ってあげますわ」
「こいつっ!」
 目を細めて殺気を放った雛芽に、思わず飛び掛かろうとした涼樹を手で制した。
「待て涼樹。話はまだ終わってない。それはセンズファストの話だ。それがどうホムラフェルファと関係するって言うんだ?」
「全ては予定通りでしたわ。魔王の意識を誘導し、国民の恐怖心を増大させる。人間は恐怖から逃れるためならば想像を絶するほどの力を引き出す生き物よ。魔術師に対抗するために魔術とは違う新たな形の武力を生み出す。そう予測され、事実複数の技術が生まれたわ。あとはそれらを回収し、用済みとなった魔術師たちが殺し合うように操作。あとは数多の技術と資金を持って国から脱出する。そして別の場所で新たな国を作る。その国の名がホムラフェルファ。つまりこの国ですわ」
「「——」」
 雛芽の話にオレたちは言葉を失った。
 センズファストで作り出された技術と、魔術師たちの資金。それらを元手にこの国が生まれた? 数年でここまで急成長したのはつまり、母様が干渉していたから?
 ——いや、待て。
 待て待て待てっ、それではまるで!
「答えろ雛芽。まさか……王妃は生きているのか?」
「——っ!」
 オレの言葉に彼女は再び嗤った。
 それは明確な肯定だった。
「ええお母様は生きていますわ。貴方も嬉しいでしょう? タルト」
「「——っ!」」
 その言葉に空気が変わった。
「タルト……お前……」
「はあー、お喋りは終わりだな」
 知りたい事は知れた。
 雛芽は地雷を踏んだ。
 だから始めよう。
「王妃が生きていて嬉しいかって? 別に、今の話を聞いて喜ぶと思うか? むしろドン引きしてるところだよ」
 父様は民に厳しくなったのも母様の誘導。
 涼樹の両親。大勢の研究者、技術者を殺したのも母様が仕組んだ事なんだろう。
 処刑されたのも方法はわからないけどフェイク。
 それにそうなんだ。娘を置いて一人だけ助かっていたのか。
「決めた。オマエを殺して終わりにするつもりだったけど、王妃もこの手で殺す」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

処理中です...