若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第三十話 西塔グラ

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 どういう事だ? グラは死んだはずだ、
 死人が生き返った? いや、それよりもそもそも死んでなどいなかった。その方が断然現実味がある。
 そもそもグラが殺された姿を見た者はいなかった。ただ状況的に戦死したのだろうと予測していただけだ。
 死んだとされた最大の理由。それは一ヶ月以上も[東方]に戻らなかったからだ。

「グラお姉様……良かった。本当に良かった」
「あれれ、なんで泣いてんの? あっ、もしかしてアタシって死んだ事になってたのかな? それならその反応も納得だよね」
「そうだよ! グラお姉様は死んでしまっただろうって、もしも生きていたら戻って来るはずだって……でも、良かった。お姉様、戻って来てくれた」
「あはは、ギャン泣きだ。ごめんごめん、ちょっと潜入任務で忙しくてさ」

 泣きながら走り出したユニを受け止め、慈愛に満ちた表情を浮かべながら妹の頭を優しく撫でるグラ。
 なんというか、お姉ちゃんって感じだな。
 お淑やかで綺麗なソラとは違う、可愛らしいお姉ちゃんだ。

 ただ、少し気になった。

「それにしてもユニちゃんってば勘が良いよね。確かにアタシたち生徒会が遭遇したのは竜の成り損ないだよ。[アベル]の研究所で作り出された竜の失敗作。知能はないけどそれなりに利用価値があるって事で、一応は[竜化鬼]って呼び名があるんだよね」
「りゅうか、き?」
「そっ。知能は獣並みだけど、皮膚がすっごく硬くて爪も切れ味抜群なんだよー。アタシの剣も通らないほどだったから最強の雑兵って感じだね」
「剣が通らない? それならグラお姉様はどうやって倒したの?」
「えっ? 倒してないよ。あの時のアタシじゃ相手にならないもん。……あれ、もしかして聞いてないの?」

 目を丸くした後、ユニを離して気まずそうに頬を掻くグラ。

「そっか。アタシ死んでる事になってたんだっけ。それなら知らなくて当然か。……んー、となるとやっぱり二人を連れて行くのは難しいかなぁー。出来れば合意の上が良かったんだけどなぁー」
「グラお姉様? 連れて行くってどういう事ですか?」

 指を口元に当てて困った顔を浮かべるグラに、ユニは困惑の色を見せていた。
 不吉を孕む彼女の言葉に。

「んー? そのままの意味だよぉー。もうこの壁国に未来なんてないからさ。アタシと一緒に行こっ!」
「……えっ? そ、それってつまり……」
「そっ。この国から脱出しよ」
「……どう、して?」

 目を見開くユニに対して、グラは子供をあやすように続けた。

「言ったでしょ? もうこの国に未来はないの。このままここにいたら確実に死んじゃうんだよ。アタシはユニちゃんの事が大好きだし、勿論ソラちゃんの事だって大好きだし、カユちゃんの事だって大好き。心配しなくて大丈夫、ユニちゃんたちなら絶対に受け入れてもらえるよ。だから、ね? 一緒に行こ?」

 微笑みを消し、真剣な表情となって手を伸ばすグラ。

「……お姉様、教えて? どうして未来がないってそう言い切れるの?」
「んーと[アベル]は既に何十って数の竜化鬼を作り出してるんだ。ユニちゃんはアタシの実力知ってるよね? そのアタシが勝てないって断言出来る相手。それがいっぱいいるの。今回の襲撃は守り抜けるけど、次はない。だから今日が最後のチャンスなんだよ。だからねっ、ちゃんと未来はアタシが保証するから。行こっ?」

 伸ばされたグラの手に向かって、恐る恐る手を伸ばそうとするユニ。

 話を聞いている限り、感動的な姉妹の再会だ。そして妹想いの姉が助かる道を見つけ出し、誘っている。

「随分と変な話だな」
「……何、アンタ」
「俺の事はどうでも良いだろ。それよりもお前の話には随分と気になるところがある」
「そうだね。アンタの事なんてどうでもいいよね——」

 さっきまでの優しい雰囲気を消し去り、冷たい視線を向けるグラ。

 グラもまた強過ぎる姉妹愛持ちって感じだな。カユとの関係はわからないけれど、妹たち以外には興味がない。そんな印象を受ける瞳をしていた。
 いや違う。興味がないってレベルじゃない。その瞳からは、強い憎悪と殺意が感じ取れた。

 あからさまな殺意を込めてグラは続けた。

「——だから死ね」
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