若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第二十九話 竜信仰

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「この町は高頻度でモンスターに襲われるわ。その度に鐘が鳴って無事に終息するからみんな落ち着いてるんでしょうね」
「それは聞いた。俺からすれば異常な光景だな」

 警戒発令が出てるのに安穏と授業を受けている生徒たち。無警戒にも程がある。もしも壁が突破されたらどうするつもりなんだ?
 ……いや、逆にそれだけ壁が、何より防衛している人たちが信頼されているという事か。

「頻度は大体一月に一度。それがここ数ヶ月なかったのよ」
「良い事じゃんか」
「そうかもしれないわね。でも、違うかもしれない」
「……どういう事だ?」
「嵐の前の静けさって事よ。今回の襲撃は今までのそれとは違うかもしれない」

 考え過ぎだと言いたいところだが、戦場では最悪のケースを予め想定しておくべきだ。心構えとしてユニのそれは正しい事だと思う。
 彼女は真剣な表情を浮かべるだけでなく、その目に映しているのは強い殺意だった。

 圧の理由なんて一つしかない。

「新種が来てる。そう思ってるのか?」
「——っ、ええその通りよ。そもそも生徒会役員が勝てないほどの敵が突然現れるなんて、そんな事ありえると思う? 強さには個体差があったけど、生徒会役員のレベルならどれも倒せる範囲だったわ。それが突然死者を出すほど……グラお姉様を殺すほどの強さだなんて不自然過ぎるもの」
「不自然か……ユニ、何が言いたいんだ?」

 ここまで話を聞いて確信した事がある。
 ユニはただ実力を認めてもらうためだけに防衛戦に向かおうとしているんじゃない。ユニは最悪のパターンを警戒しているんだ。
 ユニの姉であるグラを殺した新型が来ているかもしれないと。

 防衛戦力がどの程度なのか俺は知らない。生徒会と同等の質なのか、それとも格上か、あるいは格下なのか。
 質も量もわからない。だから予測する事は出来ないけれど、ユニの反応からして新型が来ていたらやばいのかもしれない。

「これは予測とか、推理と言うよりも、あたしの妄想に過ぎないわ」

 真剣そのものな声色でユニは続ける。

「新種には[アベル]が関わってると思うのよ」

 確か[アベル]というのはは現在休戦中の隣国だったな。
 そこが関係している? どういう事だ?

「[アベル]は元々[竜信仰]の壁国よ。竜を神の如く信仰し、いずれ邂逅する時を願う」
「へえ。で、それが?」

 信仰なんて世の中色々とあるものだ。
 世界的に有名な信仰。村や辺境などの限定地域による信仰。竜信仰は比較的有名な信仰の一つだ。

 この世界は一柱の竜から始まり、全ての生命は虚無を飛ぶ竜の背中で生じた。故に我々は等しく竜の眷属なのだ。竜と共に在り未来で竜と共に歩む。

 細部までは自信ないけど確かそんな感じの信仰だったはずだ。
 それにしても竜信仰自体は知っていたけど[アベル]がそうだって事は知らなかったな。そもそも今まで[アベル]の事すら知らなかったわけだし当然なんだけどさ。

「噂を聞いた事があるわ。[アベル]の信仰は歪んでいるって」
「歪んでる?」
「ええ、本来の竜信仰は竜との再会を運命の日とし、その日を待つ姿勢なのよ。だけど[アベル]での竜信仰は本来の待つではなく、新たな竜を生み出そうとしているらしいの」
「新しい竜を? そりゃ……歪んでるな」

 再会を待つのではなく、新しく生み出すか。やばいな頭。発想が異常者のそれだろ。

「新たに作る……まさかユニ」
「そのまさかよ。お姉様たちが遭遇した新種って[アベル]が生み出した竜の失敗作なんじゃないの?」
「それは流石に考え過ぎだろ。飛躍し過ぎだ」

 人工的に竜を生み出そうとした結果、新種のモンスターが生まれてしまった。ユニ自身最初に言っていたけど、とんでもない妄想だな

「それじゃあジョンスは新種は自然発生したと思うの?」
「それは……知らんけど[アベル]が関わってるとは限らないだろ?」
「すっごーい。情報なんてここじゃ限られてるだろうに。それでそこまで推理出来るなんて天才的だねー」
「「——っ!?」」

 突然掛けられた俺たちではない第三者の声に肩が跳ねた。
 振り返った先に立っていたのは、オレンジ色の髪が特徴的な少女だった。

(和服?)

 彼女は随分と珍しい服装をしていた。一般的には年に数回行事などで着るような服だな。和服を私服にしているなんて随分とレアだ。
 とはいえ、ガチガチの和服じゃない。和服風というか改造和服というか、彼女のそれはミニスカートになっていた。
 和服っぽい私服って事だな。

 髪色は特徴的なオレンジ色で、髪の一部を二つに分けたハーフツイン。視線を頭から下にずらせば、そこには白く透明な二つの山の間に深い谷間が見えた。
 和服って本来は美人系の綺麗な姿になるはずなんだが、こいつの着崩し方はエロ可愛って感じだな。腰の背面には刀剣の鞘が差してあるし、剣士なのか。
 凄まじい美人寄りの美少女。是非とも我がハーレムの一員に迎え入れたい。とても綺麗な顔をしているし……なんだろう。その顔に見覚えがある気がした。

 ふと視線が横に向いた。
 そして気が付いた。俺が邪な事を考えている中、隣に立っていた少女があからさまな動揺を見せている事に。

(ユニ?)

 あまりの動揺に声を失っているユニ。そんな彼女に声を掛けようとした時,それに気が付いた。

 初対面なのにどうして見覚えがあったのか。
 彼女の顔は、ユニとよく似ていた。

「……どう、して?」

 震えていて消えてしまいそうな声だった。
 俺は確信した。このオレンジ髪の少女の正体に。

「久しぶりだねユニちゃん。流石はアタシの妹だ。良い勘しってるぅー」
「グラお姉様……」

 突然現れた彼女の正体。
 それは死んだとされていたユニの姉。グラだった。
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