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第三十四話 違う
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「どうだグラ。まだこの国に未来はないって言うのか?」
グラの心は完全に折れている。敗北者のそれだ。今頃頭の中では俺と竜化鬼、どっちが強いか考えているだろう。
ユニとの話からしてグラは竜化鬼に屈してしまったんだ。そして諦めてしまった。だからせめてユニたちだけでもと動いていた。
だけど本当は、本心では育った国を捨てるなんて、学院のみんなを見捨てるなんてしたくないはずだ。
だってそうだろ? グラは元々生徒会長で、危険を承知で仲間のために殿をするような少女なのだから。
「グラお姉様、あたしだって頑張る。強くなるよ。必ず戦力になってみせるわ。あたしたち三姉妹が力を合わせたら無敵、でしょ?」
グラが死んだ事によって欠け、歪んでしまった三姉妹。だけどグラは生きていた。失っていた希望も取り戻した。
それなら元に戻れるはずだ。まだ間に合うはずだ。
「カユさんだっている。それにジョンスだって手伝ってくれるわよね?」
「ああ、グラ先輩に希望を見せた責任は男として取らないとだからな」
「ジョンスっ! 言っておくけどグラお姉様に近付くのは今後禁止よ!」
「なんでだよ。むしろそばに居て力になった方が良いと思うが?」
エロカワ系のお姉様。是非ともお近付きしたいですね、はい。
「希望? 何それ」
「グラお姉様?」
俯いたまま小さくこぼすグラ。
それは明らかに、不吉を孕んでいた。
「たかがその程度で希望? ふざけるなっ!」
次の瞬間、グラを中心に突風が巻き起こった。
(これは魔力放出!? 枯渇しているんじゃなかったのか!?)
本格的な戦闘が始まる前に放出した魔力、この空間を覆って隔離している[天蓋]とやらを発動させた力よりも強い!
なんで消耗しているはずの今の方が高出力なんだ? いや、これはそんなレベルの話じゃないぞ!? 魔力の質が違い過ぎる!
これじゃあまるで今までの戦いでは本来の力を封じていたかのような……。
「別に後で訂正すれば良いと思って何も言わなかったけどさ、アタシの所属は[アベル]なんかじゃないよ」
荒れ狂う魔力の尋常ではない圧に、俺とユニはグラの近くから吹き飛ばされた。
(ただの魔力放出で仰け反らされるなんてな。これは本格的に異常だ)
魔力とは本来それ単一では他に影響を及ぼす事なんてない。正確な例えにはならないけど、空気と同じだ。ただそこにあるだけじゃ何もならない。風となってもそこまでの影響を受ける事はない。しかし、それが嵐なら?
地に根を下ろす木々を吹き飛ばし、建造物を破壊する。人体だって吹き飛ばす事もある。
ただの人間が天災級となる。そんなのありえない。[解放者]でもそこまでの力は有していないっての。
(なんだよっ、今度は逆流しているのか!?)
さっきまではグラを中心に外側に向かって吹き荒れていた奔流が、今度は彼女に吸い込まれるかのように集束を始めていた。
「アンタ如きが希望? アタシが竜化鬼を恐れてる? 違う、そうじゃない!」
解き放たれた夥しい量の魔力は彼女の腰へと圧縮されていき、二筋の輝く純白が顕現しつつあった。
「竜化鬼如き恐るるに足りない。アタシはそんな弱い存在じゃない。そう、違うっアタシはもう人間なんかじゃないっ!」
純白の顕現が完全なものとなった時、俺たちは理解した。
彼女が、グラがどこに所属しているのか。
「——アタシは天使だっ!」
腰から生えた一対の純白。それは翼だ。
グラの口からも語られた天使という言葉。彼女に生えたそれはまさに天使の翼と呼ぶべき美しい純白の翼だった。
「お姉様……どうして、どうしてよ!」
ユニの声から感じ取れるのは悲しみと怒り。
何故怒りが含まれている? 怒りの感情は徐々に膨れ上がり、その顔には既に怒りの方が高い割合で表れていた。
「なんで天使なんかと一緒にいるのよ!」
ユニの怒りの根源は天使なのか?
運命の日に現れた天使。そいつらを救済の女神だと信仰している[天使教]とやらがあると聞いたけど、ユニの立ち位置はその真逆。天使否定派といったところか。
俺はその天使とやらが何をしているのかは知らないけれど、ユニは知っているのか?
「アハッ。やっぱりそういう反応になるよねぇー。でも大丈夫。ユニちゃんは何も気にしなくて良いんだよ。お姉ちゃんに任せて」
「お姉様……でも天使は!」
「ねえユニちゃん。ソラちゃんとユニちゃん、二人を育てたのは誰? それだけは忘れないで欲しいな」
「お姉様……でも、でもっ」
強く唇を噛み締め、深く葛藤の表情を浮かべるユニ。
なんだ? ユニと天使の間に何があったと言うんだ?
「さーてと、しんみりとした話はこれでおしまい。あーあ、この姿を見せたら絶対にそういう反応されるってわかってたんだよね。だからこの力は使いたくなかったなぁー。でも仕方がないよねぇー、まさかの相手は[解放者]だもん。流石のアタシも素の力だけじゃ勝ち目なんてなさそうだからねぇー」
刀を鞘に戻し手を叩くグラ。
なんで納刀した? 戦うつもりはない……てのはありえないか。
「あーでも、これで良かったのかもしれないね。これで吹っ切れた。決心が付いたよ。ユニちゃん、ソラちゃん、カユちゃん。キミたち三人が何を言っても、何を思っても、アタシは気にしない。無理矢理にでも連れて行く。アタシはこの力でアタシのエゴを通す。それが嫌なら見せてよ。お姉ちゃんのエゴが無くても大丈夫だって、自分たちだけでやって行けるって証明してみせてよ!」
胸の前で拳を握り締めた後、グラは純白の翼をはためかせた。
「さあ、ここからが本番だよ! 天使の力、見せてあげる!」
グラの心は完全に折れている。敗北者のそれだ。今頃頭の中では俺と竜化鬼、どっちが強いか考えているだろう。
ユニとの話からしてグラは竜化鬼に屈してしまったんだ。そして諦めてしまった。だからせめてユニたちだけでもと動いていた。
だけど本当は、本心では育った国を捨てるなんて、学院のみんなを見捨てるなんてしたくないはずだ。
だってそうだろ? グラは元々生徒会長で、危険を承知で仲間のために殿をするような少女なのだから。
「グラお姉様、あたしだって頑張る。強くなるよ。必ず戦力になってみせるわ。あたしたち三姉妹が力を合わせたら無敵、でしょ?」
グラが死んだ事によって欠け、歪んでしまった三姉妹。だけどグラは生きていた。失っていた希望も取り戻した。
それなら元に戻れるはずだ。まだ間に合うはずだ。
「カユさんだっている。それにジョンスだって手伝ってくれるわよね?」
「ああ、グラ先輩に希望を見せた責任は男として取らないとだからな」
「ジョンスっ! 言っておくけどグラお姉様に近付くのは今後禁止よ!」
「なんでだよ。むしろそばに居て力になった方が良いと思うが?」
エロカワ系のお姉様。是非ともお近付きしたいですね、はい。
「希望? 何それ」
「グラお姉様?」
俯いたまま小さくこぼすグラ。
それは明らかに、不吉を孕んでいた。
「たかがその程度で希望? ふざけるなっ!」
次の瞬間、グラを中心に突風が巻き起こった。
(これは魔力放出!? 枯渇しているんじゃなかったのか!?)
本格的な戦闘が始まる前に放出した魔力、この空間を覆って隔離している[天蓋]とやらを発動させた力よりも強い!
なんで消耗しているはずの今の方が高出力なんだ? いや、これはそんなレベルの話じゃないぞ!? 魔力の質が違い過ぎる!
これじゃあまるで今までの戦いでは本来の力を封じていたかのような……。
「別に後で訂正すれば良いと思って何も言わなかったけどさ、アタシの所属は[アベル]なんかじゃないよ」
荒れ狂う魔力の尋常ではない圧に、俺とユニはグラの近くから吹き飛ばされた。
(ただの魔力放出で仰け反らされるなんてな。これは本格的に異常だ)
魔力とは本来それ単一では他に影響を及ぼす事なんてない。正確な例えにはならないけど、空気と同じだ。ただそこにあるだけじゃ何もならない。風となってもそこまでの影響を受ける事はない。しかし、それが嵐なら?
地に根を下ろす木々を吹き飛ばし、建造物を破壊する。人体だって吹き飛ばす事もある。
ただの人間が天災級となる。そんなのありえない。[解放者]でもそこまでの力は有していないっての。
(なんだよっ、今度は逆流しているのか!?)
さっきまではグラを中心に外側に向かって吹き荒れていた奔流が、今度は彼女に吸い込まれるかのように集束を始めていた。
「アンタ如きが希望? アタシが竜化鬼を恐れてる? 違う、そうじゃない!」
解き放たれた夥しい量の魔力は彼女の腰へと圧縮されていき、二筋の輝く純白が顕現しつつあった。
「竜化鬼如き恐るるに足りない。アタシはそんな弱い存在じゃない。そう、違うっアタシはもう人間なんかじゃないっ!」
純白の顕現が完全なものとなった時、俺たちは理解した。
彼女が、グラがどこに所属しているのか。
「——アタシは天使だっ!」
腰から生えた一対の純白。それは翼だ。
グラの口からも語られた天使という言葉。彼女に生えたそれはまさに天使の翼と呼ぶべき美しい純白の翼だった。
「お姉様……どうして、どうしてよ!」
ユニの声から感じ取れるのは悲しみと怒り。
何故怒りが含まれている? 怒りの感情は徐々に膨れ上がり、その顔には既に怒りの方が高い割合で表れていた。
「なんで天使なんかと一緒にいるのよ!」
ユニの怒りの根源は天使なのか?
運命の日に現れた天使。そいつらを救済の女神だと信仰している[天使教]とやらがあると聞いたけど、ユニの立ち位置はその真逆。天使否定派といったところか。
俺はその天使とやらが何をしているのかは知らないけれど、ユニは知っているのか?
「アハッ。やっぱりそういう反応になるよねぇー。でも大丈夫。ユニちゃんは何も気にしなくて良いんだよ。お姉ちゃんに任せて」
「お姉様……でも天使は!」
「ねえユニちゃん。ソラちゃんとユニちゃん、二人を育てたのは誰? それだけは忘れないで欲しいな」
「お姉様……でも、でもっ」
強く唇を噛み締め、深く葛藤の表情を浮かべるユニ。
なんだ? ユニと天使の間に何があったと言うんだ?
「さーてと、しんみりとした話はこれでおしまい。あーあ、この姿を見せたら絶対にそういう反応されるってわかってたんだよね。だからこの力は使いたくなかったなぁー。でも仕方がないよねぇー、まさかの相手は[解放者]だもん。流石のアタシも素の力だけじゃ勝ち目なんてなさそうだからねぇー」
刀を鞘に戻し手を叩くグラ。
なんで納刀した? 戦うつもりはない……てのはありえないか。
「あーでも、これで良かったのかもしれないね。これで吹っ切れた。決心が付いたよ。ユニちゃん、ソラちゃん、カユちゃん。キミたち三人が何を言っても、何を思っても、アタシは気にしない。無理矢理にでも連れて行く。アタシはこの力でアタシのエゴを通す。それが嫌なら見せてよ。お姉ちゃんのエゴが無くても大丈夫だって、自分たちだけでやって行けるって証明してみせてよ!」
胸の前で拳を握り締めた後、グラは純白の翼をはためかせた。
「さあ、ここからが本番だよ! 天使の力、見せてあげる!」
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