若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

文字の大きさ
2 / 45

プロローグⅡ/Ⅱ

しおりを挟む
 袋を背負った男は背を向けて走り出し、剣を構えた二人は同時に向かって来た。

 向かって来る二人の内一人は振り下ろし、一人は横薙ぎ。二方向からの同時攻撃だ。刀一本じゃ防ぐのは無理だな。となれば自然と取るべき行動は一つ、バックステップによる回避だ。

 と、普通なら考えるはずだ。それはあっちも同じだろうし、そう思って次の一手を出してくるはずだ。むしろそっちが本命の一撃だろう。
 容易に想定出来る最善手らしき選択は悪手の可能性が大。

 ならば取るべきは、想定の外にある選択だ。

「「——っ!」」

 俺の選択は後退ではなく、前進。
 虚をつかれたのか目を見開く二人だが、動揺は見えない。可能性の一つとして想定してたって事だろうな。やるじゃん。
 だけど残念。想定の外ってのは前進の事じゃないぞ。
 振り下ろしは刀で防御し、横薙ぎの対処はまるで盾にするかのように左腕を上げた。
 服の下に籠手を仕込んでいる? そんな小細工はない。左腕を覆う袖はただの布。防御力なんてゼロに等しい。
 そんな腕で斬撃を受け止めようとすればどうなるか、そりゃ勿論、斬り落とされるに決まっている。
 勿論そんな未来は現実にならないけどな。

「「——っ!?」」

 今度こそ動揺を露わにした二人。
 斬撃を刀で受け止められるのは納得出来るだろう。だけど、斬撃を腕で受け止められるだなんて納得出来ないだろうな。そして何より。
 ——いつの間にか紅蓮のロングコートを纏っている俺の姿に動揺したんだろうな。

「まっ、まさか貴様は!」
「多分正解!」

 精神的衝撃によって生じた隙。それを見逃すほど俺は優しくないぞ。
 動揺で力が弱まった瞬間に刀を弾くと、その勢いのまま体勢を低くして回転した。勿論斬撃を添えて。

「さーてと、残りは一匹だな」

 振り返る事なく走り続けている四人目の男。その大きな袋を置いていけば助かるのに。

「まっ、俺はちゃんと忠告したからな。邪魔するなら容赦はしない」

 地に伏し既に骸となった三人の男には目もくれず走り出す。
 右袖だけが短い独特な紅蓮のロングコートを身に纏い、最後の男を追う。

「おーい、最後の忠告だ。大人しくそれを置いて行けばお前だけは助かるぞー」
「なっ——貴様っその姿!」

 走り続けたまま振り向き、驚愕の表情を見せる四人目。
 振り向いたって事は俺の声が届いたって事だよな? それでも立ち止まらないって事はつまり、そういう事だよな?

「貴様まさか[紅蓮《ぐれん》の金色《こんじき》]かっ!」
「イエス! 多分じゃなくて完全に正解!」

 血走った瞳を限界まで見せてくれた男の首は、赤色の飛沫を撒き散らしながら宙を待った。

「よっと」

 主人を失い制御を失った四肢からこぼれ落ちた大袋を受け止めると、中身に傷を付けないように触って場所を把握してから斬った。

「子供とは聞いてたけど、女だったのか。……ん? つまりさっきの柔らかさはまさかっ」

 今回受けた依頼内容は攫われた子供の救出だった。特に性別に関しては気にしてなかったけど、この娘……可愛いな。
 明るい茶髪は長めのショートで切り揃えられていて、私服なのかそれとも着替えさせられたのかは知らないけど、着ているのは袖のないタンクトップに短パンという、私服ならなんとも活発的な格好だな。
 短パンって事で健康的にほんのりと焼けている太ももが露出していて、タンクトップのサイズが合っていないのかヘソまで丸見えだ。
 ……これはエッチなのでは?
 いやいやいやいや、勘違いしないで欲しいが俺はロリコンじゃないぞ。だからいくら顔が整っているとしても、色気のイの字も無——っ、デカい、だと!?
 袋から出す際に触ったあの柔らかな膨らみの正体って……いや、違うぞ。断じて違う。俺はロリコンじゃないんだ。とある部分が膨張しつつあるのは気のせいだ。気のせいったら気のせいなんだ。
 ……くっ、原因はこの子じゃない。ロリとは思えないほどに実ったタワワのせいなんだ!

「んっ……んん?」

 子供らしい幼い声だというのに不思議と色気を感じる声だった。
 いや、違う違う、落ち着け俺。ちょっと変な気分になってるからそう感じるだけなんだ。
 よし、こういう時は深呼吸をするのだとイマジナリーパッパが言っていた。

「スーハースーハー」
「わ、わあ! 変態だ!」

 寝起きですとわかりやすく書かれた目をしていた少女は一瞬で覚醒すると、両目をくの字にして叫んだ。

「お、落ち着けっ俺は敵じゃないぞ!」
「わあーっ変態だーっエッチな事されるーっ!」
「ちょっ!?」

 ななな、この小娘はなんて事を叫んでいやがるんだ!?

「うわーっ、まだまだ未発達の発展途上なのにママにされるーっ! 孕まされるーっ!」
「良い加減にしろ!」
「うにゃっ」

 あまりにもあまりな事を言い始めた少女を黙らせるために軽く頭を小突くと、両手で頭を押さえながら涙目になっていた。

「うぅー、痛いのやだーぁ」
「安心しろ俺はハンターだ。依頼でお前を助けに来た。ほら、これが証明だ」

 持って来た依頼書には依頼者、つまりこいつの親の文字が綴られているからな。これが味方だって証明になると思って出したけど……親の字だってわかるものか?
 俺の場合はそもそも親の事なんて何も覚えてないからな。

「あっ、お父様の字だ! という事は本当なんだ! やったぁー」

 不安そうな顔をして依頼書に目を向けた少女はすぐに満面の笑みを咲かせると、そのまま俺に抱き着いてきた。
 ……大丈夫だ。俺は大丈夫だ。

「助けてくれてありがとぉー。いきなり眠らされてそれで、ああっ!」

 当然大声を出すと俺から離れる少女。
 ……別に残念とか思ってないぞ。いくら柔らかかったとしても相手はガキだからな。俺はロリコンじゃない。
 慌てた様子の少女は背中を向けると何やらゴソゴソと……ん?

(何してんだ!?)

 背中を向けられているためナニをしているのか確かな事は見えてないけれど、こいつ自分の股に手を突っ込んでないかっ!?

「んー、良かったぁー大丈夫そうだねん」

 笑顔を浮かべて振り返った少女。
 ……ナニをしていたのかは聞かないでおこう。多分知らない方が良いやつだ。

「寝てる間に悪戯されてるかもって思ったけど、あたしちゃんと処女だったぁー」
「良い加減にしろ!」

 この子供はなんて事を笑顔で言っていやがるんだよ!
 無邪気? 無防備? 知識は確実にあるだろうけど、頭がお花畑なんじゃないか!?
 違う。わかったぞ。こいつ、羞恥心ってやつを何処かに忘れてきたんだろうな。うん、そうに違いない。じゃないと……流石にやば過ぎるだろ。
 こりゃ両親の顔が見てみたいってやつだな。……いや、見たか。父親は結構厳しそうな紳士だったな。
 スルーしたけど父親の事をお父様って呼んでいたし、まさか良いところのお嬢様だったりするのか? 報酬もやけに高かったし。
 良家での反動ではっちゃけたとか? まあ、もう会う事もないだろうし何でも良いか。

「ほら、帰るぞ」
「はーいっ!」

 無邪気といえば良いのか満面の笑みを浮かべながら手を上げて返事をする少女。と思えば手を口元に当てて思い出したかのように叫んだ。

「ああっ! 名前! 名前を教えてもらってないです!」
「んあ? あーそういえばそうだな」

 ハンターだって自己紹介をしただけで名前は言ってないな。
 ……別にもう関わる事もないだろうし名乗る必要なんて感じないけど……ふむ。

「ほえ?」

 俺に凝視されて不思議そうに首を傾げる少女。
 この小娘、将来有望だよな。今でも十分過ぎるくらい可愛いし、五年後とか十年後とか、絶世の美女になるはずだ。
 つまりここで縁を作っておくのは将来的にアリよりの激アリなのでは?

「そうだな。恩人の名前くらい知っておきたいよな」
「はいっ! 教えて下さい!」

 眩しい笑顔を放つ少女に、俺はイケメンスマイルを浮かべ決めポーズと共に言った。

「俺の名前はジョンス。将来楽園を創造する未来の王だ!」

 そう、楽園だ。
 金があればなんでも手に入る。
 だから俺は金を集める。そして最高の楽園を、俺だけの楽園を創造してみせる!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

処理中です...