妖精の愛し子は、妖精の王に求婚されます〜ついでに、復讐もさせていただきますね

さくらもち

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五話

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「よ、夜はやっぱり怖い……」

 後ろを見ても、どこを見ても真っ暗な暗闇のなかにただ一人。
 わかってはいたが本当に怖かった。

 身寄りなんてどこにもないし、どうすれば生きれるかなんてわからなかった。
 知識だけ持っていたって何の意味もない。

「それにしても、寒いなぁ」

 息を吐くごとに白い霧が出てくる。それもそうだろう、ここは冬の間近だ。
 こんなぼろい服装で出てきてしまった事に少し後悔する。

 そのせいか、視界が歪み始めた。目の前がふらふらして立っていられない。
 ずっと寒い中走って走っていたから、体も限界なのだろう。

「少しだけ休もう………あ…れ……?」

 途端に、目の前が真っ黒になった。
 ばたんとその場で倒れてしまった。何もかも見えなくて、意識がどんどん遠退いていく。



『ねぇ、生きてる?』

「ん……っ……」

 聞き覚えのある声で目を覚ました。
 妖精のアイが心配そうな顔でこちらを見ている。あぁ、自分は寝てしまったのか。

「え、えと……」

『別に助けたわけじゃないわよ。それより、妖精王様が貴方をお呼びよ』

「よ、妖精王様……?」

『貴方、愛し子でしょ?』

「愛し子……??」

 何を言っているのか全くわからなかった。もしかしたら、あの時逃げてしまった事を怒っているかもしれない。

 アイは、はぁと深いため息をつきながら肩を組んだ。

『知らないのね。予想はしていたけれど………愛し子は神でもなく妖精でもなく人間でもないもの。だから、他の種族に好かれるし、見える。私達妖精は人間を見ると吐き気がするのだけれど、貴方の場合はそれがなかった』

「私、が……?で、でも、私は人間じゃないの?」

『人間じゃない、とは言ってないわ。ただ、人間の血も入っていて、他の種族の血も入っている。そのせいか、余計、妖精達とかに好かれやすいのよ』

「何を言って………」

『貴方もたまにあるんじゃない?不可解な事が起きる時が』

「……!」

 それを言われて確かに思い当たるふしはあった。
 いきなりお皿が割れて、怒られたこともあったし、何かモノがなくなっている時も多数ある。

『それはね、貴方が愛し子だからよ。他の妖精はきっと貴方の事を助けようとしたのね、けど、失敗して珍事件になったってところよ』

「そん……な…けど、私妖精なんて見えなかったのに…」

 それは本当の事だ。珍事件がおこるのが多くても妖精を見たのはレンが初めてだった。

『………それは、妖精達が妖精王に気づかれないようにするためだと思うわ。私達妖精は、愛し子が誰か見極められない。ただ、いても不愉快じゃない人間、という判断になっているの。だから、いつの間にか貴方を守る行動になっていたと思うのだけれど……』

「なんで、妖精王になんでバレちゃいけないの?」

『知らないわよ。独り占めしたいっていうのが多分そうね』

 やれやれ、というように、またため息をついた。
 なんだか妖精達の先輩みたいな存在なのかな、と想像ができる。

「ねぇ、遅いと思ったら、何をやってるの?」

 ふと、聞き覚えのない声が話に入ってきた。
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