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六話

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『よ、妖精王様…!?も、申し訳ございません、愛し子の事などを教えておりまして………』

 アイが謝ってる先には、同い年くらいの美少年がいた。
 金色に輝く髪がとても美しい、極めつけにと言わんばかりの葉色みどりの瞳が輝いている。

「そっか、お話の最中ごめんね。それで、この子が愛し子なんだよね?」

『はい、そうでございます』

「なるほど……確かにアイの事も見えてるようだし、僕達に嫌悪感を感じさせない、どうやら、本物のようだ」

 美少年にまじまじと見つめられて、頬がすこしだけ赤くなった。

 この世のモノとは思えないような容姿にびっくりだ。

「き、綺麗……」

「え?」

「ご、ごめんなさい。綺麗だったから……」

 素直に感じた事を述べると、美少年は目をぱちくりさせ驚いたような表情を見せた。

「綺麗……ね。アイは僕が綺麗に見えるー?」

『き…っ…綺麗に決まってるじゃないですか』

「そっか……けど、愛し子もお世辞でしょ?」

「お世辞……?」

 その一言があまりにも冷たくて、背筋がぞっとした。あのアリーとかに暴言をはかれるより、ずっと嫌な言葉だ。


「そうだよ、人間は醜い。誰かに取り入れられたいからって他人を褒める。誰もが、外見ばかりを見るーーー」

「違います!私が言っているのは、中身の事も含めてです!!そもそも、容姿だけ褒めるなんてあるわけないじゃないですか!そして、自分の事を悪く言うような事はやめてください!!不愉快です!」

 久しぶりに大声を出してしまったせいか、息が切れる。
 そして、呆然としている美少年を見ると、とても申し訳ない気持ちになってしまった。

 でも、本当の事だ。そんな言い方、自分を否定しているようで、不愉快だった。

「不愉快………」

「す、すみませんでした…」

「ふ……っ……あははっ…!」

 笑いを堪えきれないのか、大声で笑い出した。

 けど、自分は笑う気にはなれない。そもそも、なぜ笑っているのかもわからなかった。

「ねぇ、名前は?」

 笑い終わったあと、涙目になりながらも名前を問いてきた。

「えっと、ティターニアです」

「それじゃあ、ティターニア僕と結婚して」

「は?」

 状況が把握できない。聞き間違いではないだろうか、きっとそうだ。
 聞き間違いなんだ。

「も、もう一回述べてください」

「え?だから、結婚して」

 二回目を聞いてやっと聞き間違いじゃない事に気づく。平然とした表情でそう言っているが、結婚してなんてそう軽々と言えるものではない。

『妖精王様、順序を少し考えてください』

「そうかな?」

『そうですよ、困ってるじゃないですか。しっかりと手順をたててから………』

「いや、そういうことじゃなくて!普通に、け、けけ結婚とか、私はまだいいかなって思ったりして」

 結婚なんて自分には贅沢なことだし、いきなり出会ってすぐな人と結婚なんて考えられない。

「なら絶対、惚れさせる」

「惚れさせるって……っ…」

『愛し子……諦めることを推薦するわ』

 顔を真っ赤にしている私に対して、アイはにこにこと微笑みながら、耳元で囁いた。

 なんだろう、面白そうだからという理由もあるが、ただ単純にもう逃げられないからと言われてる気がした。

「それじゃあ、まず妖精の国へとレッツゴー!」

「えぇ…!??ちょっと……!」

 待って、そう言う前に何かとても強い光が私を包み込んだ。
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