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八話

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「ん…っ…ぅ………」

 目を覚ますと、そこには見慣れない天井が目にうつった。
 その光景に驚き、ぱっと勢いよく起き上がる。
 辺りを見回すと、絶句する程のきらきらしている場所だ。

「へ……?」

 豪華でふかふかなベッドに少し遠くにあるドレッサーなど。

 お母さんとお父さんがいる時、私は裕福っちゃ裕福だったが、ここまでではない。

『あ、起きた?』

 ドアの方から声が聞こえたので、振り向くと、あの時怪我をしていたレンがいた。
 今は綺麗に羽を羽ばたかせて、怪我をしていた事など嘘のようだ。

「えっ…と…その……ご、ごめんなさい」

『え?な、何がごめんなさいなの?』

 レンはとっさに謝る自分を見て、とても困惑していた。

「あの時、助けられなくて、本当に……っ…ごめんなさい……!」

 いま自分ができる程度は謝る事しかできなかった。
 だって、あの時、怪我をしていたのに私が怖くて逃げたのだ。

『え……そ、そんな事、気にしてたの?むしろ、ありがとうだよ』

「それ、でも……」

『俺はね、今まで人間にたすけてもらった事がなかったから嬉しかったよ』

「ごめんなさい……」

 謝る事しかできない。気にしないでいいと言われても、それでも私は気にしてしまう。
 だって、私は役立たずなのだ。
役立たずがもっと役立たずになってしまう。

「いきなり謝る声が聞こえたんだけど、どうしたの?」

 会話にならない沈黙が続いた時、レンの横からオーベロンが何食わぬ顔ででてきた。

『お、俺、何かしちゃいましたか?』

「いや、状況が飲み込めないんだけど……」

『何だか、あの時俺を助けられなかった事を悔やんでいるようで』

 レンがオーベロンにこうなった状況を説明していた。
 きっと、困らせてしまったのだろう。もう少し、他人に配慮した方が良かった。

「……それは、ティターニアのせいじゃないよ。かと言ってレンのせいでもない」

『良かった……です。けど、なぜそこまで悔やむ必要が?』

 レンはほっと安心すると、疑問に思ったように私に聞こえないような声でそう言った。

 もちろん、私も何を言っているか聞こえてない。

「………ティターニアにはもうしわけないけど、少しだけ調べさせてもらった」

『え?』

「彼女の両親は死んで、親戚に預けられたそうだ。しかも、その親戚はクズ。裏でいろいろ浮気とかやばいらしいよ」

『それじゃあ、愛し子があんなになっている事は』

「環境のせいだね」

 さっきからずっと私に聞こえないような声で二人で話をしていた。
 聞こうとして耳を傾けようとしても、全くと言って聞こえない。

「ティターニア、ちょっといい?」
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