9 / 30
九話
しおりを挟む
「え、あ、はい!」
いきなり名前を呼ばれたので、びくっと体を震わせてしまった。
「あのね、ここでは謝るの禁止なんだ。謝る代わりに、自分の失敗とかを直そうとするのが、この国ではルールなんだよ?」
『え、そんなルールありませんけど……っ…!??』
レンが何かを言いかけると、オーベロンは怖い顔でにっこり微笑み、レンの口を大きな手で塞いだ。
「そんなルールがあるとは知らずに、すみませんでした」
「ほら、また謝った」
「え、あ、ご、ごめんなさい……って、また」
何かを喋ろうとすると、なぜか謝ってしまう癖がついていた。
直そうとしても、直すには大分時間がかかりそうだ。
「まぁ、嘘なんだけど」
「え、えぇぇぇ……!??」
必死に直さなくては、と考えていたのに嘘だと聞いて狐に包まれたような気分になった。
『まぁ、ですよね~、そんなルール聞いたことありませんし、妖精王様も冗談は大概にした方がいいですよ』
「だって、すぐ引っかかるんだもん、面白いじゃん」
「面白いって………」
オーベロンのその言い方に少しだけいらっとしたが、相手は妖精王だ。
もし妖精王に不愉快な事をすれば、殺されるかもしれない。
そんな事をする人ではないだろうが、あいつらのせいで、そういう思考回路になってしまう。
「まぁ、でもむやみに謝っちゃ駄目だよ?この国では、謝っちゃいけないというルールはないけれど、妖精達は謝られると対価を望むからね」
「い、以後気をつけます………って、え?そういえば、ここって……」
この国では、と聞いてやっと我に返った普通に喋っていたが、冷静に考えるとここはどこなのだ。
『妖精の国、アイチェラジェウィだよ』
「妖精の国って失礼ながら本当にあったんですね………というか、帰らなくちゃ…!」
関心している場合じゃない。妖精の国があったのは驚きだが、ちゃんと帰らなくてはいけない気がした。
でも、どこに帰る場所があるのか
「えー?無理だよ。だって、僕がティターニアに求婚したんだから」
「え………あ、え?ほ、本当だったんですか?」
あの時、冗談だと思っていた。
けど、オーベロンはうんうんと強く頷いている。
「で、でも………妖精王様なのに、愛し子……?の私がなんで……」
『そもそも、愛し子というのは、人間と妖精が豊かに暮らせるためにできたものです』
「そう。人間と妖精は場所取りで戦争をしていた。だから、戦争を嫌った妖精はこの国を作り、人間と和解をしたんだ。その時、妖精は人間に力の半分をわたし、人間も妖精に力の半分を渡したそうだよ」
「妖精に力があるのは、納得できるけど人間に力なんてあるんですか?」
「あるんだよ。人間は昔、大魔法やらなんやら普通に作れてたからね。妖精と力の差がほぼなかったんだ。それで、人間と妖精の血が入ったのが愛し子って言われてる。んで、また説明が長くなるんだけど、人間と妖精の血が入ったのが最初は愛し子って呼ばれてたんだけど、神の血も入ってたり、入ってなかったり」
『そこらへんは曖昧ですね』
いきなり、ばーと言葉を並べられ何が何だか未だにまだよくわかっていない。
愛し子が何なのか、そこはオーベロン達にも少し謎らしい。
『まぁ、それで、愛し子は『平和の巫女』とも言われているそうですね』
「そうなんだよね、僕のお母様は愛し子だよ。お父様が妖精王で、お母様が愛し子、何にも結婚しても変じゃない」
『まぁ、人間と妖精の血が入った妖精王様は前代未聞だと騒がれてたようですが……』
「もう収まったんじゃん」
また二人で話しだした。
「もう訳がわかんない………」
いきなり名前を呼ばれたので、びくっと体を震わせてしまった。
「あのね、ここでは謝るの禁止なんだ。謝る代わりに、自分の失敗とかを直そうとするのが、この国ではルールなんだよ?」
『え、そんなルールありませんけど……っ…!??』
レンが何かを言いかけると、オーベロンは怖い顔でにっこり微笑み、レンの口を大きな手で塞いだ。
「そんなルールがあるとは知らずに、すみませんでした」
「ほら、また謝った」
「え、あ、ご、ごめんなさい……って、また」
何かを喋ろうとすると、なぜか謝ってしまう癖がついていた。
直そうとしても、直すには大分時間がかかりそうだ。
「まぁ、嘘なんだけど」
「え、えぇぇぇ……!??」
必死に直さなくては、と考えていたのに嘘だと聞いて狐に包まれたような気分になった。
『まぁ、ですよね~、そんなルール聞いたことありませんし、妖精王様も冗談は大概にした方がいいですよ』
「だって、すぐ引っかかるんだもん、面白いじゃん」
「面白いって………」
オーベロンのその言い方に少しだけいらっとしたが、相手は妖精王だ。
もし妖精王に不愉快な事をすれば、殺されるかもしれない。
そんな事をする人ではないだろうが、あいつらのせいで、そういう思考回路になってしまう。
「まぁ、でもむやみに謝っちゃ駄目だよ?この国では、謝っちゃいけないというルールはないけれど、妖精達は謝られると対価を望むからね」
「い、以後気をつけます………って、え?そういえば、ここって……」
この国では、と聞いてやっと我に返った普通に喋っていたが、冷静に考えるとここはどこなのだ。
『妖精の国、アイチェラジェウィだよ』
「妖精の国って失礼ながら本当にあったんですね………というか、帰らなくちゃ…!」
関心している場合じゃない。妖精の国があったのは驚きだが、ちゃんと帰らなくてはいけない気がした。
でも、どこに帰る場所があるのか
「えー?無理だよ。だって、僕がティターニアに求婚したんだから」
「え………あ、え?ほ、本当だったんですか?」
あの時、冗談だと思っていた。
けど、オーベロンはうんうんと強く頷いている。
「で、でも………妖精王様なのに、愛し子……?の私がなんで……」
『そもそも、愛し子というのは、人間と妖精が豊かに暮らせるためにできたものです』
「そう。人間と妖精は場所取りで戦争をしていた。だから、戦争を嫌った妖精はこの国を作り、人間と和解をしたんだ。その時、妖精は人間に力の半分をわたし、人間も妖精に力の半分を渡したそうだよ」
「妖精に力があるのは、納得できるけど人間に力なんてあるんですか?」
「あるんだよ。人間は昔、大魔法やらなんやら普通に作れてたからね。妖精と力の差がほぼなかったんだ。それで、人間と妖精の血が入ったのが愛し子って言われてる。んで、また説明が長くなるんだけど、人間と妖精の血が入ったのが最初は愛し子って呼ばれてたんだけど、神の血も入ってたり、入ってなかったり」
『そこらへんは曖昧ですね』
いきなり、ばーと言葉を並べられ何が何だか未だにまだよくわかっていない。
愛し子が何なのか、そこはオーベロン達にも少し謎らしい。
『まぁ、それで、愛し子は『平和の巫女』とも言われているそうですね』
「そうなんだよね、僕のお母様は愛し子だよ。お父様が妖精王で、お母様が愛し子、何にも結婚しても変じゃない」
『まぁ、人間と妖精の血が入った妖精王様は前代未聞だと騒がれてたようですが……』
「もう収まったんじゃん」
また二人で話しだした。
「もう訳がわかんない………」
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる