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二十八話(リーク視点)

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「リーク、記憶消したんだねぇ」

「はい、そうですよ。そもそもウェイルだってその気だったでしょう?」

 なぜか眠ってしまった愛し子を部屋に送ったあと、ウェイルが楽しそうに声をかけてきた。

「まぁ、そうだよねぇ。オーベロンは間違ってる」

「そうですね。ですが、やはり最新の注意を払わなければ。愛し子ですし、他の国の皆さんにバレぬよう手配しましょう」

 あのアンディーライト国は別に大丈夫だろうが、一番心配なのは中央の国だ。
 オーベロンにバレてしまうのなら、戦争が起きるかもしれない。

「そうだねぇ」

「あ、ウェイル。そういえば、今のところ未来はどうですか?」

 ウェイルの能力、未来を読む能力。能力は妖精王だからって、妖精だからって、誰にでもついてるわけじゃない。
 人間だって持ってる人はいるかもしれないし、能力を持ってるモノの基準もわからない。

「う~ん。それがねぇ」

「何かありました?」

「未来が消えたよ」

「はい?」

「続いてるけど、未来は消えちゃったんだねぇ」

「………消えたけど、続いてる……ですか。これじゃあ、まるで昔の災厄。あの悲劇…」

 昔、遠い昔に、ある災厄が起こったことがある。
 ウェイルが昔に「未来が見えない」そう言ったのがきっかけで、その災厄はおこった。
 太陽はのぼらなくなり、月は真っ赤に染められ。
 深しげな魔物達が、世界を壊した。

 それが、災厄。それが運命さだめ

「そう。また繰り返そうとしている。だから、守らなくてはいけない。僕達の愛し子を、ねぇ」

「待ってください。それじゃあまるで、昔の災厄が繰り返そうとしている言い方じゃないですか」

「………この先の未来はね、まるでインフェルノみたいだった」

「インフェルニティですか?」

「そう、地獄の無限」

 しずんだような声でそう静かに言った。
災厄がまた起ころうとしている。そしたら、確かに愛し子はここにいたほうがいい。

「……前の愛し子は、確か妖精の国を壊そうとして、オーベロンが殺したんですよね……」

「そうだねぇ、そもそも愛し子が災厄をおこしてるもんだし」

「なぜ…っ…!愛し子様だって、別にわざと世界を壊そうとしているわけではないのに」

「……そうだねぇ。けど、前の愛し子は自分が死ぬのを嫌い、世界を壊すことに決めたんだよねぇ」

 平然とした顔でウェイルはそう言った。昔からこうだから、もう慣れている。
 どこか、僕と違うところを憧れ、見ている。

「災厄を止めるには、生贄愛し子が必要なんて………」
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