妖精の愛し子は、妖精の王に求婚されます〜ついでに、復讐もさせていただきますね

さくらもち

文字の大きさ
28 / 30

二十八話(リーク視点)

しおりを挟む
「リーク、記憶消したんだねぇ」

「はい、そうですよ。そもそもウェイルだってその気だったでしょう?」

 なぜか眠ってしまった愛し子を部屋に送ったあと、ウェイルが楽しそうに声をかけてきた。

「まぁ、そうだよねぇ。オーベロンは間違ってる」

「そうですね。ですが、やはり最新の注意を払わなければ。愛し子ですし、他の国の皆さんにバレぬよう手配しましょう」

 あのアンディーライト国は別に大丈夫だろうが、一番心配なのは中央の国だ。
 オーベロンにバレてしまうのなら、戦争が起きるかもしれない。

「そうだねぇ」

「あ、ウェイル。そういえば、今のところ未来はどうですか?」

 ウェイルの能力、未来を読む能力。能力は妖精王だからって、妖精だからって、誰にでもついてるわけじゃない。
 人間だって持ってる人はいるかもしれないし、能力を持ってるモノの基準もわからない。

「う~ん。それがねぇ」

「何かありました?」

「未来が消えたよ」

「はい?」

「続いてるけど、未来は消えちゃったんだねぇ」

「………消えたけど、続いてる……ですか。これじゃあ、まるで昔の災厄。あの悲劇…」

 昔、遠い昔に、ある災厄が起こったことがある。
 ウェイルが昔に「未来が見えない」そう言ったのがきっかけで、その災厄はおこった。
 太陽はのぼらなくなり、月は真っ赤に染められ。
 深しげな魔物達が、世界を壊した。

 それが、災厄。それが運命さだめ

「そう。また繰り返そうとしている。だから、守らなくてはいけない。僕達の愛し子を、ねぇ」

「待ってください。それじゃあまるで、昔の災厄が繰り返そうとしている言い方じゃないですか」

「………この先の未来はね、まるでインフェルノみたいだった」

「インフェルニティですか?」

「そう、地獄の無限」

 しずんだような声でそう静かに言った。
災厄がまた起ころうとしている。そしたら、確かに愛し子はここにいたほうがいい。

「……前の愛し子は、確か妖精の国を壊そうとして、オーベロンが殺したんですよね……」

「そうだねぇ、そもそも愛し子が災厄をおこしてるもんだし」

「なぜ…っ…!愛し子様だって、別にわざと世界を壊そうとしているわけではないのに」

「……そうだねぇ。けど、前の愛し子は自分が死ぬのを嫌い、世界を壊すことに決めたんだよねぇ」

 平然とした顔でウェイルはそう言った。昔からこうだから、もう慣れている。
 どこか、僕と違うところを憧れ、見ている。

「災厄を止めるには、生贄愛し子が必要なんて………」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

処理中です...