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疫病の旅編
聖女の全てが憎い神官と独善的であまりにも身勝手な聖女
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・閲覧注意、胸糞注意。☆から下は残酷な表現があります、読まなくても次の投稿でさらっと話しますので読まなくても可です。
「あら…もう知ってしまったのですね」
私たちがリュカに会いに行くと、リュカは何かを察したのかクスクスと笑った後にそう言い放った。
その表情は笑っているのだが、酷く仄暗い感情を隠しているようで…なんだか少し恐怖を感じた。
「なんで私のことを嫌うんですか?」
私は勇気を出し、リュカに対してずっと気になっていたことを聞いた。
私の問いに対しリュカは、今までずっとそらし続けていた視線をゆっくり此方へと向け…数ヶ月ぶりに私と目線を合わせた。
そのコバルトブルーの瞳はやけに真剣な色をしていて…場違いにも私は、リュカの瞳を見て『なんだか吸い込まれそうだな』と思った。
そんな私の表情を見て何を思ったのかは分からないが…ゆっくり私へ言い聞かせるような口調でこう言った。
「決まっているじゃない?私は聖女が嫌いなのよ。物心ついた頃からずっと…ずっと嫌いだったのよ。」
その瞳を憎しみで塗りつぶしたリュカは…まるで絵本を読み聞かせるかの様にゆっくりと話し始めた。
☆
リュカは前回召喚された聖女の孫としてこの世に生を受けた。
小さい頃は優しいおばあちゃんだと思っていたのだが、リュカが大きくなるにつれ少しずつおかしくなっていったそう。
男爵家の長男として産まれたリュカの容姿は劣っていて、産まれてからずっと両親に疎まれていたらしいがおばあちゃんだけは違っていた。
リュカの容姿が他人と大きく異なっている事に本人が気づき始めた頃…おばあちゃんが『リュカは私が引き取るわ』と言い、おばあちゃんが住んでいる別館へと連れていかれた。
これがリュカの地獄の始まりだった。
優しくない両親よりもおばあちゃんが大好きだったリュカは、この引越しに対し大喜びだった。
いつも自分をニコニコして見てくれるし、優しく頭を撫でてくれる。
いいことをしたらたくさん褒めてくれるおばあちゃんとずっと一緒に居れる事はリュカにとって幸福な事だったのだ。
けれど、そんな幸せな生活は長く続かなかった。
6歳の節目を迎えた日の夜、おばあちゃんはリュカの寝室へやってきて体を撫で回してきたそうだ。
リュカは何が起こってるのかわからなかったが、それがひどく怖かったことだけは覚えているらしい。
その日から毎日おばあちゃんは夜にやってきてリュカの体を撫で回して帰ってゆくという生活が続いた。
だが、昼間に会うおばあちゃんはいつもと同じニコニコ顔のおばあちゃんだったので、リュカは我慢する事を選んだ。
リュカはそんなおばあちゃんが怖くてたまらなかったが、他に行く場所もなかったから仕方が無かったし、夜に寝たふりをしていれば昼間は優しいおばあちゃんなのだ。
それから毎日、自分を愛してくれるのはおばあちゃんだけなんだから仕方がないと自分に言い聞かせて過ごした
。
そして12歳の節目を迎えた日の夜。
おばあちゃんが息荒く寝室へとやってきてリュカの体を撫で回した後…行為を強要して来たそうだ。
もう、その頃にはリュカもおばあちゃんの行為の意味がわかっていた。
おばあちゃんが一線を越えようとしてきた。
その事実がリュカを酷く動揺させ、正常な判断を下せなくさせていた。
嫌がるリュカを無理矢理押さえつけ行為をさせられたリュカの心は折れてしまったらしく…次の日。
自身の物を自分で切り落としたそうだ。
おばあちゃんはそれを知ってひどく動揺したらしいが…それは一瞬だけだったそう。
その後は烈火の如く怒り、リュカを罵倒したらしい。
魔法で焼いて止血をしたといっても、キチンとした治療を受けてないリュカは血まみれで意識も朦朧としてたのだが、そんな事はお構い無しにおばあちゃんは自分の事を話し続けたそうだ。
もう、ものが無くなったリュカには優しくする意味は無いと言われた様で…凄く悲しかったらしい。
曰く、おばあちゃんは愛し合った旦那と子供がいたらしいのだが聖女召喚にてこの世界へと呼ばれたらしい。
いつまで経っても『帰してください』と言いつづけるおばあちゃんの反応を疎ましく思った当時の王はおばあちゃんを監禁し、男との行為をしなければ食事をあげないという暴挙に出たらしい。
『きちんと子供を産めば帰してやる』
その言葉を信じるしかなかったおばあちゃんは、好きでもない男との子作りを何度もして何人も産んだが、その度に『この魔力量だと無理だ』『もっと魔力量が大きい子供を産め』などと言われ続けたそう。
結局子供を産めなくなるまで監禁されたままだったおばあちゃんだが、産むことができなくなったことが王に知れた瞬間に王城から追い出されたそう。
何度も何度も半狂乱になりながらも『約束が違う』『私を帰して』と言い続けたのだが、最後は門番に手ひどく折檻され離れた場所に打ち捨てられたそう。
捨てられたおばあちゃんを助けてくれたのは、なんと一番最初に産んだ子供…リュカの母親だったそう。
偶然なのか、門番の情けなのかはわからないが…おばあちゃんはこのお陰で生きながらえたらしい。
そして、リュカが生まれた瞬間…おばあちゃんは神様は本当にいるのだと思ったそう。
なんと、生まれてきたリュカは目の色と髪の色が違うだけで、おばあちゃんの夫に生写しだったそうだ。
リュカの姿を見たおばあちゃんはリュカを夫だと思い、大切に育てていたらしい。
後々は夫にする為に育てていたのにそんな事になって大激怒したというのだ。
リュカはその話を聞いた後、神殿へと逃げたそうだ。けれど、周りからは面白おかしく噂される上に男でも女でも無いリュカはずっと孤独だったそう。
自分の容姿の事も体の事も嫌いだったリュカはいつの日か、大嫌いな女性の格好をするようになったそう。その時に昔の名前も捨てたらしい、リュカとは神殿長がつけてくれた名前だという。
そんな人生を歩んだリュカの生活がやっと落ち着いて来た頃…聖女召喚にて聖女がきたと報告が上がったそうだ。
しかもその聖女はわざわざ神殿へとやってきた。…明らかに名声上げ要員の夫を二人も連れてだ。
リュカは聖女が嫌いだった事もあり、初めから近づく事すら苦痛だった。けれど匿ってくれた恩のある神官長から『旅へと言ってくれ』と言われ断ることができなかった。
『今も自分の目の前から消えてくれないかと思っている』と言ったリュカの瞳は悲しみに濡れていた。
私と夫達はリュカの話を静かに聞いていた、ずっと何も言わないで聞き続けたのだ。
だって、話をしているリュカの瞳が…捨てられて泣いているような、世の中全てを怖がっているような、深い深い悲しみの感情で埋め尽くされていたからだと思う。
私はリュカの話を聞いて『誰も幸せじゃない』と思った。
召喚された聖女も、その孫も、皆が皆幸せじゃ無いと思った。
…私は、何故か思ってしまったんだ。リュカの大嫌いな聖女の私だけれど、リュカが大嫌いな女性の私だけれど、私がリュカと出会った意味はここにあるんじゃ無いかと思った。
私のこの気持ちは完全に独りよがりで、自分勝手で、リュカの気持ちなんか無視してるかもしれない。
押し付けがましく、良い迷惑かもしれない…今度は目線を合わせなくなるだけじゃ済まないかもしれないけれど…でも、私は思ってしまったんだ。
『私がリュカを救いたい』と。
男でも女でも良いじゃないかと、リュカはリュカなんだからと伝えたくなってしまったんだ。
「あら…もう知ってしまったのですね」
私たちがリュカに会いに行くと、リュカは何かを察したのかクスクスと笑った後にそう言い放った。
その表情は笑っているのだが、酷く仄暗い感情を隠しているようで…なんだか少し恐怖を感じた。
「なんで私のことを嫌うんですか?」
私は勇気を出し、リュカに対してずっと気になっていたことを聞いた。
私の問いに対しリュカは、今までずっとそらし続けていた視線をゆっくり此方へと向け…数ヶ月ぶりに私と目線を合わせた。
そのコバルトブルーの瞳はやけに真剣な色をしていて…場違いにも私は、リュカの瞳を見て『なんだか吸い込まれそうだな』と思った。
そんな私の表情を見て何を思ったのかは分からないが…ゆっくり私へ言い聞かせるような口調でこう言った。
「決まっているじゃない?私は聖女が嫌いなのよ。物心ついた頃からずっと…ずっと嫌いだったのよ。」
その瞳を憎しみで塗りつぶしたリュカは…まるで絵本を読み聞かせるかの様にゆっくりと話し始めた。
☆
リュカは前回召喚された聖女の孫としてこの世に生を受けた。
小さい頃は優しいおばあちゃんだと思っていたのだが、リュカが大きくなるにつれ少しずつおかしくなっていったそう。
男爵家の長男として産まれたリュカの容姿は劣っていて、産まれてからずっと両親に疎まれていたらしいがおばあちゃんだけは違っていた。
リュカの容姿が他人と大きく異なっている事に本人が気づき始めた頃…おばあちゃんが『リュカは私が引き取るわ』と言い、おばあちゃんが住んでいる別館へと連れていかれた。
これがリュカの地獄の始まりだった。
優しくない両親よりもおばあちゃんが大好きだったリュカは、この引越しに対し大喜びだった。
いつも自分をニコニコして見てくれるし、優しく頭を撫でてくれる。
いいことをしたらたくさん褒めてくれるおばあちゃんとずっと一緒に居れる事はリュカにとって幸福な事だったのだ。
けれど、そんな幸せな生活は長く続かなかった。
6歳の節目を迎えた日の夜、おばあちゃんはリュカの寝室へやってきて体を撫で回してきたそうだ。
リュカは何が起こってるのかわからなかったが、それがひどく怖かったことだけは覚えているらしい。
その日から毎日おばあちゃんは夜にやってきてリュカの体を撫で回して帰ってゆくという生活が続いた。
だが、昼間に会うおばあちゃんはいつもと同じニコニコ顔のおばあちゃんだったので、リュカは我慢する事を選んだ。
リュカはそんなおばあちゃんが怖くてたまらなかったが、他に行く場所もなかったから仕方が無かったし、夜に寝たふりをしていれば昼間は優しいおばあちゃんなのだ。
それから毎日、自分を愛してくれるのはおばあちゃんだけなんだから仕方がないと自分に言い聞かせて過ごした
。
そして12歳の節目を迎えた日の夜。
おばあちゃんが息荒く寝室へとやってきてリュカの体を撫で回した後…行為を強要して来たそうだ。
もう、その頃にはリュカもおばあちゃんの行為の意味がわかっていた。
おばあちゃんが一線を越えようとしてきた。
その事実がリュカを酷く動揺させ、正常な判断を下せなくさせていた。
嫌がるリュカを無理矢理押さえつけ行為をさせられたリュカの心は折れてしまったらしく…次の日。
自身の物を自分で切り落としたそうだ。
おばあちゃんはそれを知ってひどく動揺したらしいが…それは一瞬だけだったそう。
その後は烈火の如く怒り、リュカを罵倒したらしい。
魔法で焼いて止血をしたといっても、キチンとした治療を受けてないリュカは血まみれで意識も朦朧としてたのだが、そんな事はお構い無しにおばあちゃんは自分の事を話し続けたそうだ。
もう、ものが無くなったリュカには優しくする意味は無いと言われた様で…凄く悲しかったらしい。
曰く、おばあちゃんは愛し合った旦那と子供がいたらしいのだが聖女召喚にてこの世界へと呼ばれたらしい。
いつまで経っても『帰してください』と言いつづけるおばあちゃんの反応を疎ましく思った当時の王はおばあちゃんを監禁し、男との行為をしなければ食事をあげないという暴挙に出たらしい。
『きちんと子供を産めば帰してやる』
その言葉を信じるしかなかったおばあちゃんは、好きでもない男との子作りを何度もして何人も産んだが、その度に『この魔力量だと無理だ』『もっと魔力量が大きい子供を産め』などと言われ続けたそう。
結局子供を産めなくなるまで監禁されたままだったおばあちゃんだが、産むことができなくなったことが王に知れた瞬間に王城から追い出されたそう。
何度も何度も半狂乱になりながらも『約束が違う』『私を帰して』と言い続けたのだが、最後は門番に手ひどく折檻され離れた場所に打ち捨てられたそう。
捨てられたおばあちゃんを助けてくれたのは、なんと一番最初に産んだ子供…リュカの母親だったそう。
偶然なのか、門番の情けなのかはわからないが…おばあちゃんはこのお陰で生きながらえたらしい。
そして、リュカが生まれた瞬間…おばあちゃんは神様は本当にいるのだと思ったそう。
なんと、生まれてきたリュカは目の色と髪の色が違うだけで、おばあちゃんの夫に生写しだったそうだ。
リュカの姿を見たおばあちゃんはリュカを夫だと思い、大切に育てていたらしい。
後々は夫にする為に育てていたのにそんな事になって大激怒したというのだ。
リュカはその話を聞いた後、神殿へと逃げたそうだ。けれど、周りからは面白おかしく噂される上に男でも女でも無いリュカはずっと孤独だったそう。
自分の容姿の事も体の事も嫌いだったリュカはいつの日か、大嫌いな女性の格好をするようになったそう。その時に昔の名前も捨てたらしい、リュカとは神殿長がつけてくれた名前だという。
そんな人生を歩んだリュカの生活がやっと落ち着いて来た頃…聖女召喚にて聖女がきたと報告が上がったそうだ。
しかもその聖女はわざわざ神殿へとやってきた。…明らかに名声上げ要員の夫を二人も連れてだ。
リュカは聖女が嫌いだった事もあり、初めから近づく事すら苦痛だった。けれど匿ってくれた恩のある神官長から『旅へと言ってくれ』と言われ断ることができなかった。
『今も自分の目の前から消えてくれないかと思っている』と言ったリュカの瞳は悲しみに濡れていた。
私と夫達はリュカの話を静かに聞いていた、ずっと何も言わないで聞き続けたのだ。
だって、話をしているリュカの瞳が…捨てられて泣いているような、世の中全てを怖がっているような、深い深い悲しみの感情で埋め尽くされていたからだと思う。
私はリュカの話を聞いて『誰も幸せじゃない』と思った。
召喚された聖女も、その孫も、皆が皆幸せじゃ無いと思った。
…私は、何故か思ってしまったんだ。リュカの大嫌いな聖女の私だけれど、リュカが大嫌いな女性の私だけれど、私がリュカと出会った意味はここにあるんじゃ無いかと思った。
私のこの気持ちは完全に独りよがりで、自分勝手で、リュカの気持ちなんか無視してるかもしれない。
押し付けがましく、良い迷惑かもしれない…今度は目線を合わせなくなるだけじゃ済まないかもしれないけれど…でも、私は思ってしまったんだ。
『私がリュカを救いたい』と。
男でも女でも良いじゃないかと、リュカはリュカなんだからと伝えたくなってしまったんだ。
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