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アニメ化記念SS
第五話 一方そのころ……
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「はあ……カイルちゃん達今頃どうしてるかしら」
ジルグス国の西端、魔族領に近い辺境にある街リマーゼにて、大きくため息をつくのはカイルの母であるセライアだ。
その容姿はとてもではないが、カイルの様な息子がいる年齢には見えず若々しい。
普段は離れになっている、半地下の書庫に籠りきりなのだが、今日は自宅の居間で午後のお茶の時間を過ごしていた。
「旅に出てまだ半月過ぎといったところだろ、今からそんな調子でどうるすんだ」
テーブルを挟んでセライアの前に座り、茶菓子をかじりながら呆れたような声を出すのはセランの養母であるレイラだ。
野性味あふれる、虎や獅子を連想させるような女性で、セライアと同年代なのだがこちらも違った意味で若く見える。
用が無ければ家から一歩も出ない引きこもりのセライアと、放浪癖があり一か所にとどまることのないレイラ。
性格も生き方もまるで違うが、しかしそんな二人だがだからこそ気が合うのか、カイルが生まれる前からの長い友人関係だ。
二人とも家事に向いていないのは共通しているが、流石にお茶を入れるくらいは出来るので、偶にこうして午後のお茶を共にしている。
いつもなら他愛ない会話しかしないのだが、今日のところはやはり約半月前に旅立ったカイル達の話題になる。
と言ってもセライアが心配と憂いのこもった嘆きと愚痴を繰り返し、レイラが付き合うと言う形だが。
「そんなこと言ったって……やっぱりまだ早かったんじゃないかしら?」
「いい加減子離れしろ」
セライアの拗ねたような物言いに、レイラはますます呆れた様になる。
「……リーゼちゃん作り置きのお菓子もそれで最後よ」
「ああ……それは確かに残念だ」
手にしていた菓子を見て、名残惜しそうに口に放り込むレイラ。
「まあとにかくだ、リーゼも含めて三人ともこんな田舎で燻ってるのは勿体ない……っていうのはセライアも同意してただろ?」
「それはそうだけど……」
「そんなに心配することはないだろ。あいつらなら少々の厄介ごとくらい屁でもない……そんなやわな鍛え方したつもりはないよ」
カイルとセランに剣を教えていた師であるレイラが、歯を見せる獣のような笑みを浮かべる。
「それに何でか解らないがエルフを仲間にしたみたいだしな。見たところまあまあの精霊使いのようだ……少しは信じろよ、あいつらのことを」
「そうね……いきなり国を揺るがすような陰謀にでも巻き込まれない限り、そうそう問題ないと思うけど」
セライアが少し安心した声を出すが、丁度同じ頃、ジルグス国のお家騒動に早速首を突っ込んでいるとは夢にも思わない。
「だが意外だったのは自分から旅に出るって言いだしたところだな……何でだ?」
「そうなのよね、無気力を絵に描いたようなカイルちゃんが、あんなこと言い出すなんて」
カイルに何らかの心境の変化があった、それは二人にも解った。
だが当然ながら未来の破滅を防ぐためと言う正解に思い至ることはなく、首を捻るしかない。
「まあいずれは強制的にでも旅立たせて、世界を見てこさせるつもりだったからな……」
レイラ達は当然知る由もないが、この言葉通り一回目の人生でカイル、そしてセランは『世界を見てこい』と追い出されるように旅立たされていた。
その際にも色々と冒険をして、その下地が後の魔族との戦いに活きていた。
「とりあえず成長と受け取っておくか」
「そうね……でもそろそろ一回くらい帰ってこないかしら?」
「だから早すぎるだろ」
「じゃあ手紙の一つでも届くとか……」
「……ロエールの奴早く帰ってこないかな」
セライアの相手をするのが面倒になってきたので、用事で出かけている影の薄いカイルの父親に押し付けようと思うレイラだった。
※ カイル達が激戦を繰り広げている頃の、実に平和なリマーゼでの一幕です。
親たちからの評価はそこそこ高いようです。
ジルグス国の西端、魔族領に近い辺境にある街リマーゼにて、大きくため息をつくのはカイルの母であるセライアだ。
その容姿はとてもではないが、カイルの様な息子がいる年齢には見えず若々しい。
普段は離れになっている、半地下の書庫に籠りきりなのだが、今日は自宅の居間で午後のお茶の時間を過ごしていた。
「旅に出てまだ半月過ぎといったところだろ、今からそんな調子でどうるすんだ」
テーブルを挟んでセライアの前に座り、茶菓子をかじりながら呆れたような声を出すのはセランの養母であるレイラだ。
野性味あふれる、虎や獅子を連想させるような女性で、セライアと同年代なのだがこちらも違った意味で若く見える。
用が無ければ家から一歩も出ない引きこもりのセライアと、放浪癖があり一か所にとどまることのないレイラ。
性格も生き方もまるで違うが、しかしそんな二人だがだからこそ気が合うのか、カイルが生まれる前からの長い友人関係だ。
二人とも家事に向いていないのは共通しているが、流石にお茶を入れるくらいは出来るので、偶にこうして午後のお茶を共にしている。
いつもなら他愛ない会話しかしないのだが、今日のところはやはり約半月前に旅立ったカイル達の話題になる。
と言ってもセライアが心配と憂いのこもった嘆きと愚痴を繰り返し、レイラが付き合うと言う形だが。
「そんなこと言ったって……やっぱりまだ早かったんじゃないかしら?」
「いい加減子離れしろ」
セライアの拗ねたような物言いに、レイラはますます呆れた様になる。
「……リーゼちゃん作り置きのお菓子もそれで最後よ」
「ああ……それは確かに残念だ」
手にしていた菓子を見て、名残惜しそうに口に放り込むレイラ。
「まあとにかくだ、リーゼも含めて三人ともこんな田舎で燻ってるのは勿体ない……っていうのはセライアも同意してただろ?」
「それはそうだけど……」
「そんなに心配することはないだろ。あいつらなら少々の厄介ごとくらい屁でもない……そんなやわな鍛え方したつもりはないよ」
カイルとセランに剣を教えていた師であるレイラが、歯を見せる獣のような笑みを浮かべる。
「それに何でか解らないがエルフを仲間にしたみたいだしな。見たところまあまあの精霊使いのようだ……少しは信じろよ、あいつらのことを」
「そうね……いきなり国を揺るがすような陰謀にでも巻き込まれない限り、そうそう問題ないと思うけど」
セライアが少し安心した声を出すが、丁度同じ頃、ジルグス国のお家騒動に早速首を突っ込んでいるとは夢にも思わない。
「だが意外だったのは自分から旅に出るって言いだしたところだな……何でだ?」
「そうなのよね、無気力を絵に描いたようなカイルちゃんが、あんなこと言い出すなんて」
カイルに何らかの心境の変化があった、それは二人にも解った。
だが当然ながら未来の破滅を防ぐためと言う正解に思い至ることはなく、首を捻るしかない。
「まあいずれは強制的にでも旅立たせて、世界を見てこさせるつもりだったからな……」
レイラ達は当然知る由もないが、この言葉通り一回目の人生でカイル、そしてセランは『世界を見てこい』と追い出されるように旅立たされていた。
その際にも色々と冒険をして、その下地が後の魔族との戦いに活きていた。
「とりあえず成長と受け取っておくか」
「そうね……でもそろそろ一回くらい帰ってこないかしら?」
「だから早すぎるだろ」
「じゃあ手紙の一つでも届くとか……」
「……ロエールの奴早く帰ってこないかな」
セライアの相手をするのが面倒になってきたので、用事で出かけている影の薄いカイルの父親に押し付けようと思うレイラだった。
※ カイル達が激戦を繰り広げている頃の、実に平和なリマーゼでの一幕です。
親たちからの評価はそこそこ高いようです。
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