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四章 椿蓮
百四話 ミスト
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どこか、吹っ切れた気分だ。
言葉にして整理がついた。剣を振る事に突っかかりも何も無い。僕の腕に絡まるものはもう無い。
マルクの短剣を右手に、シリウスを左手に構えた。夕陽が雲に隠れ、眩しさも半減した。反対の空はもう紺色に染まっている。
ツバキは片足で身体を支えている。もう片方はちぎれ、右脇腹には氷の塊が残っている。右腕は関節の先に氷槍が突き刺さりだらりと下がっている。血まみれの顔の中らんらんと輝く瞳は相変わらずこちらを睨む。
「これで最後に…」
風を切る音が聞こえると同時に僕は剣を振り上げた。それに丁度当たり、ツバキの放った剣は弾かれた。
目で見えないなら、音で判断する。風を切る音の方向へ剣を突き出すと、鈍い衝撃と共に弾かれるユリウスが宙に舞う。
そうしながら徐々に距離を詰める。ユリウスの回復能力は低い。完全に回復する前にとどめをさす。
ツバキに近づくにつれ、雲に隠れていた夕陽が出てきた。そしてツバキを追い越した所で、剣を軸に後ろを振り向く。壁に背を向けた。
同時に振り返ったツバキは、強い夕陽の光に目を細めた。
ツバキの突き出した剣をマルクの剣で弾き、シリウスでツバキの喉元を──
「なっ…! あと少しなのに!」
喉元まで数センチ手前で剣は急に宙で動かなくなった。力を入れてもビクともしない。ツバキが手を動かしたので後ろに飛び退くと、飛んできた剣が脚を掠めた。
手元に剣を戻す。
「あいつも魔法使えたのかよ…」
今まで一切魔法を使っていなかったあいつが急に使い始めた。ユリウスの能力は魔力まで生成するのか。
大きく踏み込んで、ツバキの右脇腹から振り上げたが、それもあとすこしの所で固定される。
何度振ろうが突こうが、全て空中で止められる。剣はかすりさえしない。更にツバキの攻撃を避けるのも容易ではない。
片手のはずなのに、大きな損傷でろくに動けないはずなのに。
剣を止められた後、後退する際にバランスを崩して後ろに倒れかけた。そこに上からツバキの剣が振り下ろされる。
「やられるか…っ」
手を伸ばし、ツバキの手首を掴んだ。片手しかない状態でその手を捕まれ、ツバキの攻撃が止んだ。
一瞬、静寂が訪れる。
言葉にして整理がついた。剣を振る事に突っかかりも何も無い。僕の腕に絡まるものはもう無い。
マルクの短剣を右手に、シリウスを左手に構えた。夕陽が雲に隠れ、眩しさも半減した。反対の空はもう紺色に染まっている。
ツバキは片足で身体を支えている。もう片方はちぎれ、右脇腹には氷の塊が残っている。右腕は関節の先に氷槍が突き刺さりだらりと下がっている。血まみれの顔の中らんらんと輝く瞳は相変わらずこちらを睨む。
「これで最後に…」
風を切る音が聞こえると同時に僕は剣を振り上げた。それに丁度当たり、ツバキの放った剣は弾かれた。
目で見えないなら、音で判断する。風を切る音の方向へ剣を突き出すと、鈍い衝撃と共に弾かれるユリウスが宙に舞う。
そうしながら徐々に距離を詰める。ユリウスの回復能力は低い。完全に回復する前にとどめをさす。
ツバキに近づくにつれ、雲に隠れていた夕陽が出てきた。そしてツバキを追い越した所で、剣を軸に後ろを振り向く。壁に背を向けた。
同時に振り返ったツバキは、強い夕陽の光に目を細めた。
ツバキの突き出した剣をマルクの剣で弾き、シリウスでツバキの喉元を──
「なっ…! あと少しなのに!」
喉元まで数センチ手前で剣は急に宙で動かなくなった。力を入れてもビクともしない。ツバキが手を動かしたので後ろに飛び退くと、飛んできた剣が脚を掠めた。
手元に剣を戻す。
「あいつも魔法使えたのかよ…」
今まで一切魔法を使っていなかったあいつが急に使い始めた。ユリウスの能力は魔力まで生成するのか。
大きく踏み込んで、ツバキの右脇腹から振り上げたが、それもあとすこしの所で固定される。
何度振ろうが突こうが、全て空中で止められる。剣はかすりさえしない。更にツバキの攻撃を避けるのも容易ではない。
片手のはずなのに、大きな損傷でろくに動けないはずなのに。
剣を止められた後、後退する際にバランスを崩して後ろに倒れかけた。そこに上からツバキの剣が振り下ろされる。
「やられるか…っ」
手を伸ばし、ツバキの手首を掴んだ。片手しかない状態でその手を捕まれ、ツバキの攻撃が止んだ。
一瞬、静寂が訪れる。
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