異世界生活の送り方を間違えている気がする?

香奈恵

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一章 魔王城へ

八話 旅立ちと第一の街

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「ふあっくしょん!」

メグリ隣で大きなクシャミをする。
衣類を干し、俺とメグリは大きめのタオルを1枚ずつ手渡された。それを巻いて火の前に座る。
幸い荷物は水路の中に入らなかった。

「…なんてスタートだ」

「さむい…まだ乾かないのです?」

「おい向かい合うなクシャミが飛ぶ」

【八話】

結局出発は昼過ぎ。
陽が出て暖かくなったが、歩くと体も暖まるのでこの気温は邪魔なだけ。朝がよかった。

村長の提案により、俺達は小さな馬車に乗せてもらえる事になった。流れる景色を眺めながら背もたれに背中を預ける。

これから行く街はこの辺では大きい方で、村の人はそこへ行き買い物をしたり働いたりする。

「あそこです」

石の壁に囲まれた城下町が見えてきた。
門を過ぎたところで馬車を降り、宿を探すためにメグリと街を回る。

「なんか活気がないですねー、前来た時はそこら中で人が踊ってたり走ってたりしたんですが」

「それもそれで嫌だな」

「今はあんまり人もいないですし…イベントでもあるんでしょうか?」

「参加なんてしないぞ? 宿を探せ」

「はいはい」

こういう世界の宿は大抵小さくて紛れ込んでいる。
赤い屋根に黄色い土壁、木枠にはまった四角い窓。
全ての建物がそんな形をしている。

「確かあそこに大きな建物があったはずなんです。それが宿だった気が…、でも無いですね」

「とりあえず行くぞ」

大きな建物があったと言っていた場所には、平たい木像の建物があった。

「ここのはずなんですけどーーー小さいです、経営難でしょうか?」

「やってない事は無いみたいだな」

ドアを開けると奥にカウンターがあり、お爺さんが座っていた。「らっしゃい」と言い、近寄ってくる。

「宿泊したいのですが」

「はい。一部屋で?」

「…そうだな、一部屋で」

「ではご案内しますね」

狭い階段を上がり、奥の部屋の扉を開く。
役所のよりも狭く、掃除はしてあるものの暗い部屋だった。1晩くらいだしいいが。

「ベッド一つですね」

「そりゃあ1人分だもの」

「私はどこで寝れば?」

「…、床?」

「それは…私女の子ですし」

まさかただの囮がベッドで寝られるとでも思っているのか?女だからって譲るか。

「駄目だ。俺が寝る」

「でもほら床は硬いですし体に悪いと思うんです」

「それは俺にとっても同じだ」

「お願いします!」

「駄目だ。今日のクエストで役に立ったら考えてやるが、俺はそんな難しいクエストは受けない」

「でも…床は…」

「荷物置いたらさっさと出るぞ。役場で適当にクエスト受けてそれで飯を食う」

布を巻き付けた剣と金を入れた袋を持って部屋を出る。

役場はそれほど遠くなく、立派な建物中に入ると中にいた数人がこちらを向いた。
受付の横にボードがあったのでそこへ向かう。

大して労力を使わずに金を沢山…。

しかしクエストの紙はとても少なく、2、3枚しかなかった。しかもそれも微妙な内容。

「いっつもこんなんなのか?」

「いえ、もっとあったはずです」

「これじゃあ金が稼げない」

どうしようか、盗むか? と悩んでいると後ろから声を掛けられた。振り向くと受付にいた女の人。

「あの、この国の方ですか?」

「いや」

「そうでしたか、それでしたら…」
丸めた紙を差し出す。
「このクエストは極秘なんです。特に町長には知られてはいけない内容でして」

「…これ、クエストか?」

「クエストかと問われればそうではないんですが…、参加すれば金は手に入ります」

「参加だけでもか?」

「はい」

「それじゃあ参加しようか」

町長の城を襲撃する。それがこのクエストの内容だ。街の人ほぼ全員が参加していて、そして明日開始される。

しかし俺はそれが目的ではない。
どさくさに紛れて金品を盗むこと。それが目的だ。
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