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一章 魔王城へ
二十三話 地下水路のグロウリー
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【二十三話】
グロウリーはゆっくりとこちらに近付いてくる。
俺はぎゅっと剣を握り締める。
「それでは僕はこれから動けないので」
「わかった」
「もう囮に行ったほうがいい感じですか…?」
「まだいい。相手が完全に戦闘態勢に入ってからだーーー邪魔だから少し下がってろ」
右手で柄の端を持ち、振り上げる。
暗くてよく見えないが、大きな胴体には狙わなくとも当たるだろう。
振りかぶって剣を直線に投げつける。風を着る音が空間にこだまし、剣先が肉に突き刺さった音がした所で剣を今度は左手に戻し、また投げつける。
左手が放った剣が肉に突き刺さると右手に剣を戻して投げ付け、そしてまた左手に戻す。それを何度も何度も繰り返す。
「速っ! よくあんなに一直線に飛びますね…」
「今俺は見えないんだ、お前はグロウリーの状態を確認しろっ!」
「は、はい! えと…」
「止まってません、刺さってはいますがイマイチです。1点に集中できませんか?」
「どの部分が弱点か分かるか?」
「口の中です。開けている状態なので今がチャンスです!」
連射よりも正確さを意識して今度は放つ。剣が空気を切る音が常に耳元で響くが、グロウリーの声は聞こえてこない。
百発は投げただろうか、手応えは感じない。
「ガードしてます! それと向かって来てるので距離を置きましょう!」
「ということだカロスト! 下がるぞ!」
「わかった!」
グロウリーが水を掻き分けながら這ってくる音が聞こえる、波紋がすぐ横の水を揺らした。
「触手の伸びる距離は20mです! 近過ぎない様にして下さい!」
ある程度走った所で一発投げ付ける。突き刺さった音はしない。代わりに壁に弾かれる音が聞こえた。
だめだ、完全に防御体制になってしまった。
このまま投げ続けても無謀なだけ、どうする?
「火が弱点だったりしないか?」
「わかりませんけど、大体の生物にとって火は苦手だと思いますよ」
「……カロスト、この毒って引火性あるか?」
「火をつけるならやめておいた方がいいよ。油分を大量に含んでいるから酷いことになる」
火もだめか。投げる時に触手に別のものをガードさせていれば隙が生まれるだろうが、カロストは動けないしメグリは遠距離攻撃ができない。
接近戦しかないか?
リスクが大きすぎるが、直接触手さえ切断できれば勝率は上がる。
問題は、グロウリーにどれ程ダメージを与えたら絶命するかだ。失血死はなさそうだし、体の中に内蔵があるのか分からない。痛覚もあると思えない。
身体をバラバラにするくらい出ないと倒せないかもしれない。
だとしたら…
「メグリ、協力しろ」
「なにをすれば?」
「まず、布を貸せ」
「はい…」
メグリは荷物から布を取り出して渡す。
それを口に巻き付け、またメグリに向き直る。
「それから、お前には少しの間戦ってもらう。触手の相手をしてるだけでいいから、切断しなくともいい」
「そんな、無理ですよ…」
「時間を稼ぐだけでいい。だから早くこっち来い」
「え? どうしてです?」
「いいからこっち来て床に横になれ」
「…何をする気ですかっ!?」
そう言いながらもメグリは床に横になる。不安そうにチラチラとこちらを見ながら目をつぶる。
「じゃあ口も閉じろ。短剣は固く握って、足は交差させて」
「何をするんですか?」
「投げる。足閉じろ」
「ちょっと待って下さいっ…ってうわぁぁ!!」
メグリの足を両手で掴み、グロウリーの上部へと思いっきり投げつける。
そしてその後すぐに俺も走ってグロウリーの元へ向かった。
グロウリーはゆっくりとこちらに近付いてくる。
俺はぎゅっと剣を握り締める。
「それでは僕はこれから動けないので」
「わかった」
「もう囮に行ったほうがいい感じですか…?」
「まだいい。相手が完全に戦闘態勢に入ってからだーーー邪魔だから少し下がってろ」
右手で柄の端を持ち、振り上げる。
暗くてよく見えないが、大きな胴体には狙わなくとも当たるだろう。
振りかぶって剣を直線に投げつける。風を着る音が空間にこだまし、剣先が肉に突き刺さった音がした所で剣を今度は左手に戻し、また投げつける。
左手が放った剣が肉に突き刺さると右手に剣を戻して投げ付け、そしてまた左手に戻す。それを何度も何度も繰り返す。
「速っ! よくあんなに一直線に飛びますね…」
「今俺は見えないんだ、お前はグロウリーの状態を確認しろっ!」
「は、はい! えと…」
「止まってません、刺さってはいますがイマイチです。1点に集中できませんか?」
「どの部分が弱点か分かるか?」
「口の中です。開けている状態なので今がチャンスです!」
連射よりも正確さを意識して今度は放つ。剣が空気を切る音が常に耳元で響くが、グロウリーの声は聞こえてこない。
百発は投げただろうか、手応えは感じない。
「ガードしてます! それと向かって来てるので距離を置きましょう!」
「ということだカロスト! 下がるぞ!」
「わかった!」
グロウリーが水を掻き分けながら這ってくる音が聞こえる、波紋がすぐ横の水を揺らした。
「触手の伸びる距離は20mです! 近過ぎない様にして下さい!」
ある程度走った所で一発投げ付ける。突き刺さった音はしない。代わりに壁に弾かれる音が聞こえた。
だめだ、完全に防御体制になってしまった。
このまま投げ続けても無謀なだけ、どうする?
「火が弱点だったりしないか?」
「わかりませんけど、大体の生物にとって火は苦手だと思いますよ」
「……カロスト、この毒って引火性あるか?」
「火をつけるならやめておいた方がいいよ。油分を大量に含んでいるから酷いことになる」
火もだめか。投げる時に触手に別のものをガードさせていれば隙が生まれるだろうが、カロストは動けないしメグリは遠距離攻撃ができない。
接近戦しかないか?
リスクが大きすぎるが、直接触手さえ切断できれば勝率は上がる。
問題は、グロウリーにどれ程ダメージを与えたら絶命するかだ。失血死はなさそうだし、体の中に内蔵があるのか分からない。痛覚もあると思えない。
身体をバラバラにするくらい出ないと倒せないかもしれない。
だとしたら…
「メグリ、協力しろ」
「なにをすれば?」
「まず、布を貸せ」
「はい…」
メグリは荷物から布を取り出して渡す。
それを口に巻き付け、またメグリに向き直る。
「それから、お前には少しの間戦ってもらう。触手の相手をしてるだけでいいから、切断しなくともいい」
「そんな、無理ですよ…」
「時間を稼ぐだけでいい。だから早くこっち来い」
「え? どうしてです?」
「いいからこっち来て床に横になれ」
「…何をする気ですかっ!?」
そう言いながらもメグリは床に横になる。不安そうにチラチラとこちらを見ながら目をつぶる。
「じゃあ口も閉じろ。短剣は固く握って、足は交差させて」
「何をするんですか?」
「投げる。足閉じろ」
「ちょっと待って下さいっ…ってうわぁぁ!!」
メグリの足を両手で掴み、グロウリーの上部へと思いっきり投げつける。
そしてその後すぐに俺も走ってグロウリーの元へ向かった。
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