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06 - 一学年 三学期 冬 -
02
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「お邪魔します」
「どうぞー」
「あら!大倉くんいらっしゃい!」
「お邪魔します」
母さんは、めちゃくちゃ大倉の事気に入ってて、何でか聞いたら「イケメンだから。目の保養」と言ってた。
いや、分かるけど。分かるんだけど、息子にそれ言うか。
だからとは言わないけど、大倉は頻繁に我が家に遊びに来る。
大倉も大倉で、家帰っても一人だから全然構わないって。
…今度、大倉の家行きたいとか言ってもいいものなのかな?引かれたり、しないかな?
「夕飯になったら呼ぶからー」の声と共に俺の部屋に行く。
部屋に入ってすぐ、後ろから大倉に抱きしめられた。
「うをっ、」
「…色気ないなぁ」
「俺に色気求められても困る」
「んふっ」
二人きりになると、途端に甘さが増すのは、きっと勘違いじゃなくて。
大倉なりに甘えてるんだとは思うけど、正直その対処法が俺には分からないから、取り敢えずされるがままに、いつもなってる。
「座ろ」
「うん」
後ろに大倉引っ付かせたまま座るのは至難の業。
大倉の方が大きいから、俺が座ろうとすると背中に大倉の体重がのしかかって、若干苦しい。
でも別に、嫌じゃないから、その度に「あー…俺大倉の事好きなんだなぁ」とか思う。
「今日も3年だったの?」
「そう」
「ほんと、最近ラッシュだな」
「ほんまにね…もう嫌や」
隣同士で座って、手を絡めて握る。
すると、俺の方に頭をこてん、と乗せて「はぁ…」とため息が聞こえて来た。
大倉だって、多分モテたくてモテてるわけじゃないから、大変なんだろうなぁ。
俺は、モテたこともなければ告白されたのだって大倉だけだから、その大変さを分かってやる事は出来ないけど、いつも表情がキツそうなのは分かる。
繋いでない方の手で、頭を撫でてやると、首筋に頭をグリグリしてくる大倉が、可愛くて仕方がない。
恋ってすごいな…何しても何されても、可愛いとかカッコいいとか思っちゃう。
「あ、のさ…大倉」
「んー?」
「あの…、」
「…航?」
「こ、今度さ…その、大倉の家…行ってみたいなぁ、なんて…」
「………」
「だ、ダメなら別に、」
「ダメじゃない!」
「へ?」
引かれるかな、嫌がられるかな、と思いながら、ドキドキを抑えつつも、大倉の家に行ってみたいと伝えてみたら、目を大きく見開かせて肯定してくれた。
一瞬固まったのは、まさか俺が家に行きたいと言うとは思わなかったかららしい。
大倉は、本当は大倉の家にも来てほしかったらしいけど、どう言えば良いのか悩んでたから、俺から言われたのがよほど嬉しかったらしく、今ものすごくご機嫌だ。
あー、犬だ。尻尾ぶんぶん振ってる犬が見える。
「じゃあ、今週の土曜日来てくれん?」
「え、今週?」
「うん。土曜日来て、泊まってほしい」
「………」
『泊まってほしい』
…え?!お、おお、俺大倉の家に泊まるの?!
い、いきなりハードル高くないか?!
いや、付き合って1ヶ月のカップルは、そういうものなのか?付き合ったことないから分かんないけど…そういうものなのか?!
テンパりながら出した答えは「分かった」だった。
早速母さんに伝えたら、疑うこともなく「あら、いいわね。いってらっしゃい。大倉くんなら航ちゃん任せられるわー」と言われた。
…ねぇ、母さん。少しは息子の心配してください。
この日は、我が家でご飯を食べて、帰って来た父さんと少し話してから大倉は帰って行った。
母さんが「泊まっていけば?」と言ったんだけど、「明日も学校あるし帰ります」って。
めちゃくちゃ紳士な大倉だった。
さらに好きになりそうだった。
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