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12 - 二学年 三学期 冬 -
06
しおりを挟む「いつくれるん?」
「え?!」
「え?くれへんの?嘘やったん?」
「いや、あの…い、家に置いてあると言いますか…」
「よし。じゃあ、航ん家行こう」
「あ、うん」
「むふふ」て笑いながら俺の手をしっかり握りしめていつもより早歩きの大倉。
そんなに嬉しいのか。
尻尾が見える。尻尾がぶんぶんしてる。かわいいやばいかわいい。
「あ、あんま期待すんなよ?」
「え、なんで」
「いや、だって初めて作ったし…」
「…チョコ作ってくれたん?」
「え?」
「いや、去年は本やったから、またその類かと思て」
「あ…うん…いや、うん。今年は、お菓子作りました」
「…んふふふふ」
「大倉?」
「んふふふふふ。あかん、ニヤけが止まらへん。んふふふふ」
「そんな、うれしいの?」
「嬉しいよ。嬉しいに決まってる」
「そっか」
「うん。んふふ」
あー、ほんとかわいいなぁ。
そんな期待されたらプレッシャーに押しつぶされそうだけど、でも大倉がうれしそうにしてくれてるのが本当にうれしい。
るんるん気分の大倉に、若干引っ張られながら我が家に到着。
家には母さんがいて、ニコニコしてる大倉見て「うふふ。大倉くん、嬉しそうね?」なんて言ってる。
その問いに対して大倉は、「むちゃくちゃ嬉しいです!しあわせです!」とか言い出して、もう恥ずかしくて堪んなくて大倉の背中押して俺の部屋に無理やり連れて行った。
後ろから母さんが「若いわねぇ」とこ言ってたけど無視!
大倉に、部屋で大人しく待ってるように言って、キッチンに行ったら、まだニコニコしてる母さんがいた。
「うふふ。若いわねぇ」
「…………」
「大丈夫よ。ちゃんと美味しかったから」
「…うん」
俺の作ったシフォンケーキと、それに合った紅茶を母さんが用意してくれて、それを持って部屋に行く。
部屋に入ったら、さっきまでニコニコしてた大倉が、緊張した顔して正座して座ってた。
「え、なんで正座?」
「いや…うん。ちゃんと迎えなあかんと思って」
「あははっ。意味分かんね」
なんで大倉が緊張してんだよ。しかも、ちゃんと迎えないとってなに。
俺の方が緊張してるのに、この大倉見たら緊張なんかどっかいった。
あーもーくそっ!かわいすぎるんだって!!
「…あんま自信ないけど…どうぞ」
「う、うん…ありがと」
「うん…」
大倉の隣に座って、トレーの上あるシフォンケーキを、大倉の前に出した。
やべー、また緊張してきた。
すぐに食べてくれるのかと思ったら、徐にスマホを取り出して、シフォンケーキの写真を撮り始めた。
……は?!
「え、ちょ、大倉?!何してんの?!」
「え?いや、記念に写真撮ってる」
「…いやいや…いやいやいやいや!撮らなくていいから!」
「なんでや!撮るやろ!」
「なんで?!」
「やって、航が俺のために作ってくれたんやで?!記念に撮らな!!」
「いやっ、撮らなくていいから!」
ちょっと、何してんの?!何してくれてんの?!
写真なんか撮らなくていいから!
そんな、恥ずかしいことしなくていいけら!!
いやもうさ…大倉って、どんだけ俺のこと好きで居てくれてるの…?
自惚れてもいいよね、これ。てか、自惚れちゃうよね、こんなの。
いや、俺も大倉のこと好きだよ?でも、まさかここまでするとは思わなかった。
うれしい。すっごくうれしいけど、やっぱ恥ずかしい!!
その後、何枚か撮ってやっと食べてくれた。
「ど、どう…?」
「…むっちゃうまい」
「ほ、ほんと?」
「うん。そこまで甘くなくて食べやすいし、航の愛感じる」
「そっ、ばっ…!!」
「ん?」
「っ…、なんでもねぇ」
緊張してた面持ちから、またニコニコになった大倉。
…俺の愛感じるとか…さらっと普通に言うなよ…。
なんだよ、このイケメン。ずりぃんだよ。カッコ良すぎるんだよ。どんだけ俺を喜ばせるんだよ!!
「はい、あーん」
「へ?」
「航も食べよ?あーん」
「っ、いや、自分で食べるから!」
「ええから、あーん」
「っ……ぁ、あー…ん」
「んふふ。美味しいなぁ?」
「ぉ、おう…」
甘い。甘すぎる。なにこれ。ケーキは甘くないのにめちゃくちゃ甘い。空気が甘い。雰囲気が甘い。全てが甘い。むり。ガチで大倉の顔見れない。
「航、ありがとな?」
「う、うん…」
「最高のバレンタインやわ」
「…なら、よかった」
「んふふ」
当分は、絶対に作らない!と心に決めてたのに、こんなに喜ばれたらまた作りたいかも?とか思っちゃう。
大倉がうれしいと、俺もうれしいんだ。
今年のバレンタインは、大成功ってことでいいよね?
恋人らしいこと出来て、よかった。
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