ゲームの世界に堕とされた開発者 ~異世界化した自作ゲームに閉じ込められたので、攻略してデバックルームを目指す~

白井よもぎ

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第一章

15話 返り討ち

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 打ち上げを終えて街に戻ってきた時には、もう日が暮れかけていた。
 みんな家路につく時間であったが、条件を達成したシンは早くクラスチェンジがしたいと、一直線に教会へと向かい、クラスチェンジを完了させた。

 予定より大分早く達成できたことで、シンは上機嫌で家路につく。

(とりあえず一番大変な上級クラスへのクラスチェンジは出来たから良かった。次は装備だな。今買える中で一番いい装備を買ってから、その装備で行けるダンジョンで素材と資金集め、それでもっといい装備に替えて更に上のダンジョンに挑む。その繰り返しで戦力を上げながら天獄の大迷宮へと上り詰めていく。モンスターの行動はある程度読めるからショートカットはできるが、下手打って死んでは意味がない。大分予定が早まったことだし、慎重に行くとしよう)

 今後の予定を考えながら路地を歩く。
 だがその時、突如シンは身体に違和感と覚えた。

(! これは封印? ……あいつらか)

 ライルとアリカの仕業であると気付いたシンは、即座にモンクのスキル内気功を発動させ、封印を回復させる。
 直後、痺れを感じて膝をつく。
 そこで物陰からライルとアリカが姿を現した。

「今日は沢山稼いできたらしいじゃねえか。結局、俺らに盗られるのに、ご苦労なこった」

 近づいてくる二人を見て、シンは笑みを浮かべる。

「くくく、いいところに来てくれた。今日は諦めていたのに、試運転させてくれるなんて実に有難い」

 ライル達はシンが言う言葉の意味が分からなかったが、抵抗の意志があると判断し、剣を抜いて見せびらかすように遊ぶ。

「まだ分からないのか? お前如きが抵抗しても、俺達には敵わ……な!?」

 次の瞬間、膝をついていたシンが一瞬でライルの目の前に現れた。
 そして腹部へと拳をかます。
 ライルは反応する間もなく拳を受けるが、その威力は大したものではなかった。

「……はっ、何だそのパンチは。脅かしやがって」

 ライルはシンに向けて剣を振り上げる。
 だがその時、突如腹の中がかき回されたような不快感に襲われた。
 思わず、その場で嘔吐する。

「おげーっ」

 シンは、さっと下がって吐瀉物から避難した。
 倒れ込んで吐くライルを尻目にアリカの方を向く。

「!? !?」

 アリカは何が起こったのか理解できず口をパクパクさせていた。
 シンが足を踏み出すと、アリカは恐怖に顔を歪める。

「ひっ……こ、来ないでっ」
「次は何を打とうか……。色々あって迷うな」

 近づいてくるシンに、アリカは怯えて杖を向ける。
 すると、シンはその場で止まり、両手を前に出して構えた。

 何か仕掛けてくると思ったアリカは咄嗟にシンへ向けて炎の魔法を放つ。
 炎がシンへと迫るが、手に触れる直前で流れるように逸れた。
 外れた炎は後ろの壁に、ぶつかって立ち消える。

「ふむ、ちゃんと魔法でも逸らせられるな」

 防御系スキルである往なしの構えは、敵の攻撃を逸らすことができる。
 発動タイミングが難しい上に、範囲の広い攻撃や一部の特殊攻撃は防ぐことはできないが、上手く使うことが出来れば、大体の攻撃はノーダメージで防げる。

 シンは一応自分の身体を確認して、ダメージを一切受けていないか確かめる。
 そんなシンをアリカは化け物を見るような目で見ていた。
 モンクというクラスを知らなかった為、得体のしれないことをしたように見えたのだ。

 謎の攻撃によってライルは嘔吐するほど苦しみ、放った攻撃魔法は不思議な力によって逸らされた。
 正体不明の圧倒的な力。
 それは恐怖以外の何物でもない。

「ゆっ、許してっ。もう、こんなことしないからっ。殺さないで」
「俺が許してくれと言った時、お前達は許したか? ……いや、そんなこと言ってなかったな。まぁいいや。これまで散々やってくれたんだから、試運転の相手ぐらいはしてもらうぞ」

 シンはそう言って、アリカの方へと再び歩み出す。
 見逃す気はないと理解したアリカは、すぐさま背を向けて逃げ出した。
 だが、シンはその背に向けて握り拳を向ける。
 親指を弾くと、圧縮された空気の球が放たれた。
 その指弾は銃弾のように勢いよく飛んでいき、アリカの後頭部に直撃する。

「ぎゃっ」

 アリカはその場に倒れ、気を失った。
 だが、そこで嘔吐していたライルが剣を杖代わりに、苦しそうにしながら立ち上がる。

「……お前……よくも……ぶっ殺してやる」

 ライルは、ふらつきながらも剣を構え、スキルを打つ体勢を取る。
 しかしその瞬間、前方に居たシンの姿が消えた。
 直後、ライルはそのことに驚く間もなく、後ろから後頭部に蹴りを食らって倒れた。

 シンは二人が動く様子がないことを確認してから息をつく。

「ふぅ……こんなものか。流石、上級クラスだけあって、基本クラス相手じゃ圧勝できるな。それにしてもスキルの便利さが段違いで快適過ぎる。よくもまぁ、これまでスキルなしで戦っていたものだ。こりゃもうクレリックには戻れないな」

 シンは一人でそんなことを言いながら、倒れているライルとアリカの懐を漁った。
 財布を抜き取り、中身を確認する。

「シケてんなぁ。これじゃあ全然、取り戻せないじゃないか」

 奪われた総金額に対し、二人が所持していた金額は雀の涙程だった。
 持ち歩く金額としては妥当な金額なのだが、シンが何度か奪われた分を考えたら、全く足りない。
 分割で回収しようにも圧倒的な力の差を見せつけてしまったせいで、再び仕掛けてくる見込みは薄かった。
 シンは、どうしたものかと二人の身体を探る。

(装備は売れそうだが、後々問題になったら面倒だから止めておくのが吉か。うーん……あとはもう回復薬くらいしかないな)

 アリカの懐に入っていた回復薬を回収していく。
 回収の為に何度か手を突っ込んでいると、不意にアリカの胸元が少し肌蹴た。
 シンの視野にアリカがつけていたブラが映る。

(む、下着か……)

 そこで下着は売れないだろうかと考える。
 白色の子供っぽい下着だが、アリカは若い女性である為、需要はあると思われる。
 少なくとも回復薬よりは、よっぽど高い値段がつくであろう。
 それに装備と違い、売買自体がアンダーグラウンドであるので、盗品で騒ぎになる可能性も低い。
 だが問題として、そういうお店を探さなければならないのと、男であるシンが行って真面な値段で買い取ってもらえるかがあった。

(一応回収はしておくか)

 シンはアリカの下着に手をかける。
 だが、脱がそうとした時、路地の先から足音が聞こえてきた。
 喋り声と共に徐々にこちらに向かって近づいてきてくる。
 それと同時にアリカが唸り声を上げる。

「うーん……」

 起きそうになっているアリカと近づいてくる足音。
 下着の回収はできないと判断したシンは内心舌打ちして、その場から立ち去った。
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