29 / 63
第三章
29話 平凡な町ベルガ
しおりを挟む
神獣姿と化した玖音に乗り、当てもなく走らせること数時間。
通り掛かった町に、凛は休憩がてら立ち寄る。
ビフレフトから少し離れたところに位置する町・ベルガ。
規模としては大きくもなく小さくもなく、目立った特徴のない平凡な町であった。
町に入った凛はまず、道中で倒したモンスターの素材を換金する為、冒険者ギルドを訪れる。
人数が増えた分、かかる旅費も多くなる。
手持ちの資金も、これまでの旅で目減りしていたので、こまめに稼いでおかなければならなかった。
(ハーレムも頭数揃ってきたことだし、ここらでちょっと留まって稼ぐのもいいかもしれないわね)
カウンターで買い取り査定を待っている間、凛はそんなことを考える。
すると、その時、後ろを歩いていた三角帽子の少女が足を捻らせて転ぶ。
「あっ」
転んだ拍子に、抱えていた採取品やモンスター素材をぶちまけてしまう。
足元に転がって来た鉱石を、凛は拾って、その少女に差し出す。
「はい、これ。拾うの手伝うわ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ありがとうございますっ」
少女は頭をぺこぺこと下げながら、床に散らばった物を、慌てて拾い集める。
その様子は、非常におどおどした感じであった。
凛は拾うのを手伝いながら、少女を眺める。
三角帽子に杖という典型的な魔女の恰好で、よく見ると、両目には星のマークが浮かんでいた。
(この子は……魔女族かしら? 集落外で見るのは珍しいわね)
一見、人間に見える、この少女は魔女族の子であった。
目に浮かぶ星マークが特徴で、生まれつき魔法の能力が非常に高い。
一般的な人間とは違い、交配ではなく、特殊な木から産まれる為、魔女族は女性しかいなかった。
生まれる場所が限定的で、種族としても閉鎖的な傾向があるので、魔女族の集落以外で見るのは、なかなか珍しいことである。
この世界に来て初めて見たこともあって、凛が物珍しさに眺めていると、後ろの方から怒声が響く。
「おい、ラピス! どんくさいことしてんじゃねーぞ。さっさと運べ!」
「はいぃぃ! ごめんなさい!」
怒られた魔女族の少女は、慌てて落ちている物をかき集め、凛から拾った物も受け取ると、一礼して、そこから離れて行った。
凛はその子が気になった為、引き続き買い取りを待ち続けながら、様子を窺う。
魔女族の少女は一人せっせこと往復して荷物運びをしているが、他のパーティメンバーらしき人達は、椅子に座って休憩していた。
(えっ……。これ、虐待じゃないの?)
魔女族は魔法の能力が高い代わりに、体力が低い。
しかも、まだ少女なので、こんな力仕事を任せきりにするのは、虐待も同然だった。
「もっとシャキッと動け。そんなんじゃ、何時まで経っても、借金返せねーぞ」
「はいー!」
口出ししようと思った凛だが、彼らの言葉が耳に入って踏み止まる。
(うーん……借金があるなら仕方ないのかしら。借りたお金は返さないとね)
可哀そうとは思ったものの、借金という正当な理由があった為、部外者の凛が口出しするべきことではなかった。
凛が買い取りを終えてカウンターから離れると、入れ替わりで、そのパーティが呼ばれ、魔女族の少女がカウンターへと小走りで駆けて行った。
換金を済ませた凛は、そのまま依頼掲示板の前へと移動する。
そこで目ぼしい依頼はないかと探していると、偶々、近くだった少女のパーティの会話が聞こえてきた。
「あいつも馬鹿だよな。どれだけ働いても無駄だとは知らずに」
「あんた、あの子を何時まで、こき使う気?」
「そりゃ最後までだ。荷物運びとしては優秀だから、使い倒して、潰れたら奴隷に売る」
「きゃはは、鬼畜ー」
穏やかではない会話が耳に入り、凛は眉を顰める。
どういうことかと話を引き続き聞こうとしたところで、魔女族の少女が戻って来る。
「換金終わりましたー」
魔女族の少女は、換金したお金の入った袋を。パーティのリーダーらしき青年に受け渡す。
「おう。じゃあ、お前の取り分はこれな」
袋を覗いたリーダーの青年は、中から小銭を数枚取り出して、魔女族の少女に渡す。
「えっ、これだけ……?」
それは一日の生活費にもならない金額だった。
「さっきのやらかしを差し引いた分だ。地面にぶちまけたせいで、素材の買い取り価格が下がっただろ」
「査定してくれた人は、そんなこと一言も……」
「今回は偶々大丈夫だったとしても、次は下がるかもしれない。お前は失敗ばかりするから、また同じことをしない為の罰だと思え」
「で、でも、これだけだと、宿屋の支払いすら……」
「口答えする気か? 毎回毎回、迷惑かけておいて、マイナスにしてやってもいいんだぞ」
リーダーの青年に強く言われた少女は、諦めて口を閉じてしまう。
そこまで見ていた凛は、もう見ていられないと口を出す。
「ちょっと、それはあんまりじゃないの?」
「あ? 誰だよ、お前。外野は黙ってろ」
「部外者だけど、使い潰して奴隷に売るだなんて話聞いたら、ねぇ。口出ししたくもなるわよ」
「なっ……て、適当なこと言ってんじゃねー」
青年は聞かれているとは思っていなかったようで、動揺して目を泳がす。
通り掛かった町に、凛は休憩がてら立ち寄る。
ビフレフトから少し離れたところに位置する町・ベルガ。
規模としては大きくもなく小さくもなく、目立った特徴のない平凡な町であった。
町に入った凛はまず、道中で倒したモンスターの素材を換金する為、冒険者ギルドを訪れる。
人数が増えた分、かかる旅費も多くなる。
手持ちの資金も、これまでの旅で目減りしていたので、こまめに稼いでおかなければならなかった。
(ハーレムも頭数揃ってきたことだし、ここらでちょっと留まって稼ぐのもいいかもしれないわね)
カウンターで買い取り査定を待っている間、凛はそんなことを考える。
すると、その時、後ろを歩いていた三角帽子の少女が足を捻らせて転ぶ。
「あっ」
転んだ拍子に、抱えていた採取品やモンスター素材をぶちまけてしまう。
足元に転がって来た鉱石を、凛は拾って、その少女に差し出す。
「はい、これ。拾うの手伝うわ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ありがとうございますっ」
少女は頭をぺこぺこと下げながら、床に散らばった物を、慌てて拾い集める。
その様子は、非常におどおどした感じであった。
凛は拾うのを手伝いながら、少女を眺める。
三角帽子に杖という典型的な魔女の恰好で、よく見ると、両目には星のマークが浮かんでいた。
(この子は……魔女族かしら? 集落外で見るのは珍しいわね)
一見、人間に見える、この少女は魔女族の子であった。
目に浮かぶ星マークが特徴で、生まれつき魔法の能力が非常に高い。
一般的な人間とは違い、交配ではなく、特殊な木から産まれる為、魔女族は女性しかいなかった。
生まれる場所が限定的で、種族としても閉鎖的な傾向があるので、魔女族の集落以外で見るのは、なかなか珍しいことである。
この世界に来て初めて見たこともあって、凛が物珍しさに眺めていると、後ろの方から怒声が響く。
「おい、ラピス! どんくさいことしてんじゃねーぞ。さっさと運べ!」
「はいぃぃ! ごめんなさい!」
怒られた魔女族の少女は、慌てて落ちている物をかき集め、凛から拾った物も受け取ると、一礼して、そこから離れて行った。
凛はその子が気になった為、引き続き買い取りを待ち続けながら、様子を窺う。
魔女族の少女は一人せっせこと往復して荷物運びをしているが、他のパーティメンバーらしき人達は、椅子に座って休憩していた。
(えっ……。これ、虐待じゃないの?)
魔女族は魔法の能力が高い代わりに、体力が低い。
しかも、まだ少女なので、こんな力仕事を任せきりにするのは、虐待も同然だった。
「もっとシャキッと動け。そんなんじゃ、何時まで経っても、借金返せねーぞ」
「はいー!」
口出ししようと思った凛だが、彼らの言葉が耳に入って踏み止まる。
(うーん……借金があるなら仕方ないのかしら。借りたお金は返さないとね)
可哀そうとは思ったものの、借金という正当な理由があった為、部外者の凛が口出しするべきことではなかった。
凛が買い取りを終えてカウンターから離れると、入れ替わりで、そのパーティが呼ばれ、魔女族の少女がカウンターへと小走りで駆けて行った。
換金を済ませた凛は、そのまま依頼掲示板の前へと移動する。
そこで目ぼしい依頼はないかと探していると、偶々、近くだった少女のパーティの会話が聞こえてきた。
「あいつも馬鹿だよな。どれだけ働いても無駄だとは知らずに」
「あんた、あの子を何時まで、こき使う気?」
「そりゃ最後までだ。荷物運びとしては優秀だから、使い倒して、潰れたら奴隷に売る」
「きゃはは、鬼畜ー」
穏やかではない会話が耳に入り、凛は眉を顰める。
どういうことかと話を引き続き聞こうとしたところで、魔女族の少女が戻って来る。
「換金終わりましたー」
魔女族の少女は、換金したお金の入った袋を。パーティのリーダーらしき青年に受け渡す。
「おう。じゃあ、お前の取り分はこれな」
袋を覗いたリーダーの青年は、中から小銭を数枚取り出して、魔女族の少女に渡す。
「えっ、これだけ……?」
それは一日の生活費にもならない金額だった。
「さっきのやらかしを差し引いた分だ。地面にぶちまけたせいで、素材の買い取り価格が下がっただろ」
「査定してくれた人は、そんなこと一言も……」
「今回は偶々大丈夫だったとしても、次は下がるかもしれない。お前は失敗ばかりするから、また同じことをしない為の罰だと思え」
「で、でも、これだけだと、宿屋の支払いすら……」
「口答えする気か? 毎回毎回、迷惑かけておいて、マイナスにしてやってもいいんだぞ」
リーダーの青年に強く言われた少女は、諦めて口を閉じてしまう。
そこまで見ていた凛は、もう見ていられないと口を出す。
「ちょっと、それはあんまりじゃないの?」
「あ? 誰だよ、お前。外野は黙ってろ」
「部外者だけど、使い潰して奴隷に売るだなんて話聞いたら、ねぇ。口出ししたくもなるわよ」
「なっ……て、適当なこと言ってんじゃねー」
青年は聞かれているとは思っていなかったようで、動揺して目を泳がす。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる