30 / 63
第三章
30話 弟子
しおりを挟む
「もう、その子を解放してあげなさい。貴方達のやってることは、ただの犯罪行為よ」
「こいつは俺達に借金があるんだ。余計な口出しはするんじゃねえ。それとも、あれか? お前が立て替えてくれるのか?」
「いいわよ。いくら?」
「ふっ、百万だ。払えねーだろ」
「分かったわ」
「え?」
凛は金貨の入った袋を出す。
手持ちの余裕はそこまでなかったが、先程の買い取り金をプラスすれば、何とか足りる金額だった。
凛の年齢層からすると大金だったので、あっても他人の為なんかに払えないだろうと高を括っていた青年は、肩代わりを即時了承されて、たじろぐ。
「あー、やっぱり、もうちょっとあったかもな。確か、百五十万くらいだったか」
「はぁ? 何、曖昧なこと言ってるのよ。借用書見せなさい」
「そんなもんはねえよ」
「作ってないの? お金のことなのに、そんな適当なことしちゃ駄目じゃない。じゃあ、整理するから、何に対しての借金がどれだけあって、これまでの返済額も教えてちょうだい」
「グダグダ言ってんじゃねー。さっさと払えよ。払わないなら、こいつは解放しないぞ」
借用書は作っておらず、借金の詳細を言うのも拒否。
怪しさ満載であった為、凛は疑いの目を向ける。
「明細すら作れないなら、払えないわ。だって、詐欺の可能性があるんですもの。女の子が騙されて奴隷みたいにされてるって言って、兵士呼ぼうかしら」
「煩ぇ! さっさと金出せっつってんだろ。ぶっ殺すぞ!」
リーダーの青年は腰の剣を抜いて、凛に突きつける。
「もう恐喝ね。やれるものなら、やってみなさい」
「てめぇ……舐めやがって」
剣を目の前にまで突き付けたにも拘わらず、凛は一切怯える様子を見せなかったので、舐められたと思って激高した青年は、握った剣を凛へと振り下ろした。
だが、その剣は、凛が出した人差し指の指先に止められる。
指と剣の間には小石が挟まっていた。
「本当に手出してきたんだ。ギルド内での暴力行為は規約違反よ?」
「こ、このアマ……」
青年は手に力を籠めるが、剣はピクリとも動かない。
この場で戦うと罰則が与えられる為、凛は剣を止めたままギルド職員に助けを求める。
「職員さん、衛兵呼んでー」
「もう呼びましたー!」
カウンターに居たギルド職員の手には、既に受話器が握られていた。
ギルド内での揉め事は日常茶飯事だったようで、職員の対応も早かった。
「はぇ!?」
それまで強気だった青年は、兵士を呼ばれるとは思っていなかったらしく、目に見えて狼狽する。
その後、兵士達が駆けつけると、青年達はしどろもどろとなり、あっという間に大人しくなった。
兵士の仲裁を受け、互いに事情を聴かれる。
その中で、借金の経緯も判明した。
ラピスと呼ばれる魔女族の少女は、少し前に、臨時で青年達のパーティに入ったのだが、冒険に出た際、ちょっとしたミスにより、青年の装備を破損させるという失敗をしてしまったらしい。
その装備が非常に高価であったので、弁償する為に借金扱いとなったとのことだ。
しかし、兵士の問い詰めにより、実際にはそこまでの価値はないことを、青年達は吐かされた。
ラピスは騙されて働かされていたのだ。
まだ若手とのことで、青年達は厳重注意だけで終わったが、不問にする条件として、ラピスとは本来支払うべきはずだった報酬分と、借金の帳消しがされた。
青年達はギルドの方で改めて説教されることとなり、凛と魔女族の少女・ラピスは一足先に解放され、
冒険者ギルドから出る。
「助けていただき、ありがとうございましたっ」
「いえいえ、人として当然のことをしたまでよ。世の中には悪い人が沢山いるんだから、これからは気を付けるようにね」
「はい、気を付けます」
ラピスは何度も頭を下げ、凛の方が恐縮するくらいに感謝の態度を示していた。
恩を売れたので、凛はせっかくだから、ここから仲良できないかと考えていると、ラピスがおずおずと尋ねる。
「あの……。アランさんの、さっきの彼の剣を指一本で止めたのって、魔法ですよね?」
「ん? ええ、魔法よ。小石挟んで止めたの」
「凄い……」
斬撃を一度止めただけで、見た目としては地味だったが、種族として魔法のプロフェッショナルである魔女族だからこそ、その凄さを人一倍理解していた。
驚くラピスだが、意を決したように表情を引き締めて言う。
「凛さんは凄腕の冒険者とお見受けします。お願いです。私を弟子にしてください。駄目なら、せめて冒険者として上手くやっていける秘訣だけでも」
「いいわよ」
「えっ、いいんですか!?」
駄目元での申し出だった為、あっさりと許可され、お願いして来たラピスの方が驚いてしまう。
「違う分野だけど、もう弟子みたいな子いるからね。あ、でも、戦いに関しては私、ちょっと特殊だから、上手く教えられないかも。それでも良かったら、出来る限りの指導はしてあげるわ」
「是非お願いしますっ」
こうして町に来て早々に、冒険者の弟子が出来たのだった。
「こいつは俺達に借金があるんだ。余計な口出しはするんじゃねえ。それとも、あれか? お前が立て替えてくれるのか?」
「いいわよ。いくら?」
「ふっ、百万だ。払えねーだろ」
「分かったわ」
「え?」
凛は金貨の入った袋を出す。
手持ちの余裕はそこまでなかったが、先程の買い取り金をプラスすれば、何とか足りる金額だった。
凛の年齢層からすると大金だったので、あっても他人の為なんかに払えないだろうと高を括っていた青年は、肩代わりを即時了承されて、たじろぐ。
「あー、やっぱり、もうちょっとあったかもな。確か、百五十万くらいだったか」
「はぁ? 何、曖昧なこと言ってるのよ。借用書見せなさい」
「そんなもんはねえよ」
「作ってないの? お金のことなのに、そんな適当なことしちゃ駄目じゃない。じゃあ、整理するから、何に対しての借金がどれだけあって、これまでの返済額も教えてちょうだい」
「グダグダ言ってんじゃねー。さっさと払えよ。払わないなら、こいつは解放しないぞ」
借用書は作っておらず、借金の詳細を言うのも拒否。
怪しさ満載であった為、凛は疑いの目を向ける。
「明細すら作れないなら、払えないわ。だって、詐欺の可能性があるんですもの。女の子が騙されて奴隷みたいにされてるって言って、兵士呼ぼうかしら」
「煩ぇ! さっさと金出せっつってんだろ。ぶっ殺すぞ!」
リーダーの青年は腰の剣を抜いて、凛に突きつける。
「もう恐喝ね。やれるものなら、やってみなさい」
「てめぇ……舐めやがって」
剣を目の前にまで突き付けたにも拘わらず、凛は一切怯える様子を見せなかったので、舐められたと思って激高した青年は、握った剣を凛へと振り下ろした。
だが、その剣は、凛が出した人差し指の指先に止められる。
指と剣の間には小石が挟まっていた。
「本当に手出してきたんだ。ギルド内での暴力行為は規約違反よ?」
「こ、このアマ……」
青年は手に力を籠めるが、剣はピクリとも動かない。
この場で戦うと罰則が与えられる為、凛は剣を止めたままギルド職員に助けを求める。
「職員さん、衛兵呼んでー」
「もう呼びましたー!」
カウンターに居たギルド職員の手には、既に受話器が握られていた。
ギルド内での揉め事は日常茶飯事だったようで、職員の対応も早かった。
「はぇ!?」
それまで強気だった青年は、兵士を呼ばれるとは思っていなかったらしく、目に見えて狼狽する。
その後、兵士達が駆けつけると、青年達はしどろもどろとなり、あっという間に大人しくなった。
兵士の仲裁を受け、互いに事情を聴かれる。
その中で、借金の経緯も判明した。
ラピスと呼ばれる魔女族の少女は、少し前に、臨時で青年達のパーティに入ったのだが、冒険に出た際、ちょっとしたミスにより、青年の装備を破損させるという失敗をしてしまったらしい。
その装備が非常に高価であったので、弁償する為に借金扱いとなったとのことだ。
しかし、兵士の問い詰めにより、実際にはそこまでの価値はないことを、青年達は吐かされた。
ラピスは騙されて働かされていたのだ。
まだ若手とのことで、青年達は厳重注意だけで終わったが、不問にする条件として、ラピスとは本来支払うべきはずだった報酬分と、借金の帳消しがされた。
青年達はギルドの方で改めて説教されることとなり、凛と魔女族の少女・ラピスは一足先に解放され、
冒険者ギルドから出る。
「助けていただき、ありがとうございましたっ」
「いえいえ、人として当然のことをしたまでよ。世の中には悪い人が沢山いるんだから、これからは気を付けるようにね」
「はい、気を付けます」
ラピスは何度も頭を下げ、凛の方が恐縮するくらいに感謝の態度を示していた。
恩を売れたので、凛はせっかくだから、ここから仲良できないかと考えていると、ラピスがおずおずと尋ねる。
「あの……。アランさんの、さっきの彼の剣を指一本で止めたのって、魔法ですよね?」
「ん? ええ、魔法よ。小石挟んで止めたの」
「凄い……」
斬撃を一度止めただけで、見た目としては地味だったが、種族として魔法のプロフェッショナルである魔女族だからこそ、その凄さを人一倍理解していた。
驚くラピスだが、意を決したように表情を引き締めて言う。
「凛さんは凄腕の冒険者とお見受けします。お願いです。私を弟子にしてください。駄目なら、せめて冒険者として上手くやっていける秘訣だけでも」
「いいわよ」
「えっ、いいんですか!?」
駄目元での申し出だった為、あっさりと許可され、お願いして来たラピスの方が驚いてしまう。
「違う分野だけど、もう弟子みたいな子いるからね。あ、でも、戦いに関しては私、ちょっと特殊だから、上手く教えられないかも。それでも良かったら、出来る限りの指導はしてあげるわ」
「是非お願いしますっ」
こうして町に来て早々に、冒険者の弟子が出来たのだった。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる