37 / 63
第三章
37話 不正
しおりを挟む
凛達が観客席に戻ると、程なくして決勝戦が始まる。
闘技スペースで戦うのはミーシェのバッファローと相手方の小型ドラゴン・レッサードラゴンであった。
バッファローは大柄であるが、ドラゴンは元の種族としての大きさが巨大なので、小型といっても変わらない大きさである。
両者は優勝を賭けて激しくぶつかる。
「いいねぇ。やっぱり勝つ気満々だ」
バッファローは一切の躊躇いを見せず、攻めの姿勢と取っていた。
バッファローの猛攻に、レッサードラゴンは必死に対抗してみせている。
作られたスターとはいえ、曲がりなりにも王者であるので、そう易々と倒せる相手ではなかった。
バッファローの突進により、レッサードラゴンが吹き飛ばされる。
「よっしゃ! 行け!」
バッファローは更に追撃しようと、倒れたレッサードラゴンに向かって突進する。
だがレッサードラゴンは倒れた状態で首を向け、口を大きく開けた。
「やばっ」
レッサードラゴンの口から炎が吐き出される。
バッファローに炎が迫るが、突進中である為、急に止まることは出来ない。
「前に出て!」
ミーシェが指示を出すと、バッファローは斜め前に踏み込み、炎に煽られながら、レッサードラゴンの後ろへと回り込む。
炎によって身体の毛が若干焦げてしまったが、被害は最小限に抑えていた。
「よし! いいぞ! ガンガン仕掛けろ!」
フラム達は熱狂的に応援する。
実力はバッファローの方が上のようで、少しずつレッサードラゴンを押していた。
バッファロー優勢の状態で戦いが続いていると、指示を出しているミーシェのところに、ベルガモンスターバトル協会の会長が、駆け寄って来た。
何か怒鳴りつけている様子を見せるが、ミーシェは堅く首を横に振る。
すると、会長は怒りを露わにしながら、そこから離れた。
「ははっ。すげぇ根性あるな。益々ファンになった」
ミーシェはクビ覚悟で戦っていた。
「見た目は弱々しそうなのに、心は強いのね。素敵」
「兎人族って、基本みんな気が弱いから、ほんとに、すげーと思うよ」
裏事情を知っていた凛達は、ミーシェの覚悟と勇姿に、感銘を受ける。
モンスターバトルにあまり興味を持っていなかった凛も、夢中で観戦していた。
度重なる攻撃を受け、レッサードラゴンは足元が覚束なくなってくる。
「うーちゃん!」
レッサードラゴンの状態を見たミーシェが、バッファローを愛称で呼ぶ。
すると、タックルをかましてレッサードラゴンを転倒させたバッファローは、素早く距離を開けて、後ろ足で地面を引っ掻き始めた。
「お! 決着をつける気だ。全身の体重をかけた猛突進。隙は多いが、当たれば、どんな奴でも一撃で倒せる必殺技だ」
ミーシェは十分なダメージを与えたと判断し、ここで決着をつけることを決めた。
バッファローも分かってか迫真の形相で、全身に力を溜める。
レッサードラゴンは慌てて体勢を立て直そうとするが、足元がおぼつかず、すぐには立て直せないようだった。
そうしているうちに準備が完了したバッファローは、勢いよくレッサードラゴンに向かって突撃する。
「行っけー!!」
その巨体からは信じられない速度で、風を切りながら走る。
レッサードラゴンは、まだ動くことが出来ない。
そのままレッサードラゴンに迫ろうとしたその時、バッファローの足元の石畳が割れた。
踏み込んだ足が、出来た窪みに嵌まり込み、バッファローは派手に転倒する。
「マジか!」
必殺技が不発し、観客席からは落胆の声が響く。
バッファローはすぐに立ち上がろうとするが、一足先に立ち直したレッサードラゴンが、バッファローに向けて大きく口を開いた。
「やべーっ、やべーっ」
状態を立て直す前に、その口から炎が吐き出される。
炎は勢いよく放出され、無防備状態のバッファローに浴びせられた。
炎に炙られ、バッファローは悶え苦しむ。
苦しみながらも、炎から抜け出そうとするが、その時、バッファローの身体で、炎が破裂したかのように爆発を起こした。
爆発をもろに受けたバッファローは、力尽きたように倒れる。
炎が止むと、所々焼け焦げたバッファローの姿が観客の前に晒された。
すぐさま審判がカウントと取り始める。
立ち上がれば試合再開となるが、それは叶わないことは、誰の目にも明らかだった。
そのまま十のカウントが終わり、決着がつく。
「はぁー……負けちまったかぁー。八百長ぶっ潰せなかったな。てか、あたしの賭け金がー」
凛達はみんなミーシェ・バッファローペアに賭けていたので、大損してしまっていた。
みんなが残念がる中、凛は訝しげな顔をして言う。
「ねぇ、さっき転んだのって……」
「魔法、ですね……」
他の観客は気付いていなかったが、魔法に秀でた凛と魔女族のラピスだけは気付いた。
すると、シーナも言う。
「爆発したの、多分火薬だよ」
バッファローは罠に嵌められ、無理矢理負けさせられていた。
会長はミーシェが従わなかった時の為に、二重三重の手を打っていたのだ。
リングでは、搬送される重症のバッファローの傍らで、ミーシェが泣きながら同伴していた。
「……許せない。怒鳴り込みに行くわ」
不正をしたうえ、少女まで泣かせた。
凛にとっては到底許しがたい行いであった。
闘技スペースで戦うのはミーシェのバッファローと相手方の小型ドラゴン・レッサードラゴンであった。
バッファローは大柄であるが、ドラゴンは元の種族としての大きさが巨大なので、小型といっても変わらない大きさである。
両者は優勝を賭けて激しくぶつかる。
「いいねぇ。やっぱり勝つ気満々だ」
バッファローは一切の躊躇いを見せず、攻めの姿勢と取っていた。
バッファローの猛攻に、レッサードラゴンは必死に対抗してみせている。
作られたスターとはいえ、曲がりなりにも王者であるので、そう易々と倒せる相手ではなかった。
バッファローの突進により、レッサードラゴンが吹き飛ばされる。
「よっしゃ! 行け!」
バッファローは更に追撃しようと、倒れたレッサードラゴンに向かって突進する。
だがレッサードラゴンは倒れた状態で首を向け、口を大きく開けた。
「やばっ」
レッサードラゴンの口から炎が吐き出される。
バッファローに炎が迫るが、突進中である為、急に止まることは出来ない。
「前に出て!」
ミーシェが指示を出すと、バッファローは斜め前に踏み込み、炎に煽られながら、レッサードラゴンの後ろへと回り込む。
炎によって身体の毛が若干焦げてしまったが、被害は最小限に抑えていた。
「よし! いいぞ! ガンガン仕掛けろ!」
フラム達は熱狂的に応援する。
実力はバッファローの方が上のようで、少しずつレッサードラゴンを押していた。
バッファロー優勢の状態で戦いが続いていると、指示を出しているミーシェのところに、ベルガモンスターバトル協会の会長が、駆け寄って来た。
何か怒鳴りつけている様子を見せるが、ミーシェは堅く首を横に振る。
すると、会長は怒りを露わにしながら、そこから離れた。
「ははっ。すげぇ根性あるな。益々ファンになった」
ミーシェはクビ覚悟で戦っていた。
「見た目は弱々しそうなのに、心は強いのね。素敵」
「兎人族って、基本みんな気が弱いから、ほんとに、すげーと思うよ」
裏事情を知っていた凛達は、ミーシェの覚悟と勇姿に、感銘を受ける。
モンスターバトルにあまり興味を持っていなかった凛も、夢中で観戦していた。
度重なる攻撃を受け、レッサードラゴンは足元が覚束なくなってくる。
「うーちゃん!」
レッサードラゴンの状態を見たミーシェが、バッファローを愛称で呼ぶ。
すると、タックルをかましてレッサードラゴンを転倒させたバッファローは、素早く距離を開けて、後ろ足で地面を引っ掻き始めた。
「お! 決着をつける気だ。全身の体重をかけた猛突進。隙は多いが、当たれば、どんな奴でも一撃で倒せる必殺技だ」
ミーシェは十分なダメージを与えたと判断し、ここで決着をつけることを決めた。
バッファローも分かってか迫真の形相で、全身に力を溜める。
レッサードラゴンは慌てて体勢を立て直そうとするが、足元がおぼつかず、すぐには立て直せないようだった。
そうしているうちに準備が完了したバッファローは、勢いよくレッサードラゴンに向かって突撃する。
「行っけー!!」
その巨体からは信じられない速度で、風を切りながら走る。
レッサードラゴンは、まだ動くことが出来ない。
そのままレッサードラゴンに迫ろうとしたその時、バッファローの足元の石畳が割れた。
踏み込んだ足が、出来た窪みに嵌まり込み、バッファローは派手に転倒する。
「マジか!」
必殺技が不発し、観客席からは落胆の声が響く。
バッファローはすぐに立ち上がろうとするが、一足先に立ち直したレッサードラゴンが、バッファローに向けて大きく口を開いた。
「やべーっ、やべーっ」
状態を立て直す前に、その口から炎が吐き出される。
炎は勢いよく放出され、無防備状態のバッファローに浴びせられた。
炎に炙られ、バッファローは悶え苦しむ。
苦しみながらも、炎から抜け出そうとするが、その時、バッファローの身体で、炎が破裂したかのように爆発を起こした。
爆発をもろに受けたバッファローは、力尽きたように倒れる。
炎が止むと、所々焼け焦げたバッファローの姿が観客の前に晒された。
すぐさま審判がカウントと取り始める。
立ち上がれば試合再開となるが、それは叶わないことは、誰の目にも明らかだった。
そのまま十のカウントが終わり、決着がつく。
「はぁー……負けちまったかぁー。八百長ぶっ潰せなかったな。てか、あたしの賭け金がー」
凛達はみんなミーシェ・バッファローペアに賭けていたので、大損してしまっていた。
みんなが残念がる中、凛は訝しげな顔をして言う。
「ねぇ、さっき転んだのって……」
「魔法、ですね……」
他の観客は気付いていなかったが、魔法に秀でた凛と魔女族のラピスだけは気付いた。
すると、シーナも言う。
「爆発したの、多分火薬だよ」
バッファローは罠に嵌められ、無理矢理負けさせられていた。
会長はミーシェが従わなかった時の為に、二重三重の手を打っていたのだ。
リングでは、搬送される重症のバッファローの傍らで、ミーシェが泣きながら同伴していた。
「……許せない。怒鳴り込みに行くわ」
不正をしたうえ、少女まで泣かせた。
凛にとっては到底許しがたい行いであった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
86
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる