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第三章

41話 温泉施設

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 コロシアムでの戦いを終え、凛達はシェルターミラー内へと帰って来る。

「吠え面かかせてやったわ」
「勧誘、凄かったわね。あの会長なんて、土下座して、うちに所属してくださいって言ってくるし」
「全部蹴っ飛ばしてやった時は、実に気持ちよかったの。賞金も手に入って大満足じゃ」

 協会に一泡吹かせることができ、多額の賞金も手に入ったので、みんな気分良く、にこやかな顔をしていた。

「当面の旅費は心配なくなったけど、これだけあるなら、ここの施設を拡張をしてもいいわよね」
「賛成ー。小屋、六人になって、ちょっと手狭だったもんな」

 フラム他、みんなも小屋の増築に賛成するが、凛は首を横に振る。

「いえ、作るのは温泉よ。ずっと前から、みんなで一緒に入りたかったの。小屋もそのうち広げるけど、まずは温泉が最優先」

 小屋にも浴室は付いていたが、最低限の広さしかなく、複数人で入ることは厳しい為、一人ずつ使用していた。
 裸の付き合いは、交友を深めるのに、非常に友好的な手段である。
 女の子と触れ合いたい、仲良くしたい凛にとっては、何よりもの優先事項であった。

「いいわよね? というか、もう材料揃えちゃったから作るのは決定」
「あぁ、帰りに何を買っていたかと思っていたら。あたしは別にいいぜ」

 フラムに続き、他の子も賛成意見を述べる。
 凛のような下心はないが、作って困る物でもなかったので、設置に反対する子はいなかった。

「じゃあ早速始めるわ」

 凛は小屋の横で道具を出し、温泉施設のクラフトを開始する。

「うおおおおおおお!!」

 欲望によるブーストで、凄まじい勢いで作られて行く。
 そして、ものの数時間で、立派な温泉施設が完成した。



「すげぇ……。一人で全部作っちまった」

 フラム達は唖然とした表情で、完成した温泉施設を眺める。

 小屋隣りに作られた露天風呂からは湯気が昇り上げており、その広さは現在の小屋の敷地よりも広かった。
 ここには女の子しか住んでいないが、手抜きはされておらず、しっかりと柵で囲まれていて、付属している建物には脱衣室からトイレ、休憩室まで完備されている。

 魔法によるクラフトでも、一人でここまでのものを作ることは、普通できなかった。

「もう入れる状態になってるから、好きな時に入っていいわよ」
「おっ、じゃあ入ろっと。実はあたし、結構風呂好きなんだ」

 フラムは入りたい気持ちを我慢していたようで、その場で衣服を脱ぎ去ると、全裸で温泉へと突撃して行った。
 それを見たシーナも服を脱いで後に続く。

「おほっ、じゃあ私も一緒するわ」

 凛も後を追うと、顔を見合わせたクレアとラピスも続いた。

「儂も付き合うかの」

 玖音も続き、結局みんなで入ることとなった。



 広々とした露天風呂に浸かる女子一同。
 それぞれ泳いだり、雑談に花を咲かせたりしながら、温泉を楽しむ。

 みんなが楽しむ中、凛はそんな女の子達を舐めるような視線で観察していた。

「あんなに燥いじゃって。フラムちゃんとシーナちゃんは無邪気に燥いで可愛いわね。お淑やか組のクレアちゃんとラピスちゃんも素敵だわ。玖音は……堪能中かしら?」

 玖音は隅で一人、気持ちよさそうに浸かっていた。
 凛の視線を受け、玖音が口を開く。

「視線が厭らしいの」
「だだだ誰が視姦プレイしてるって? 失礼よっ」
「そこまでは言っておらん……」
「邪な気持ちなんてないわよ。うちの女子高、女子寮だったから、見慣れてるし。私はただ、この絶景を堪能してるだけ」
「絶景と言ってしまっておるぞ」
「微笑ましいって意味よ」
「そうなのか? ま、どうでもいいがの」
「つれないわねー」
「主がどんな趣向じゃろうと、儂は興味ない。止めはせぬから、主の好きにすればいいのじゃ」
「そ。なら、好きにさせてもらうわっ」

 凛は勢いよく、玖音へと飛び掛かった。

「おわっ!? 何するのじゃ! 止めいっ」
「好きにしていいって言ったじゃないのっ。言ったことは守ってもらうわよ」

 凛は興奮した様子で、激しく玖音に抱き着く。

「そういう意味ではないわっ」

 玖音はしがみついてくる凛を尻尾で思いっきり叩き、剥ぎ落とす。

「ふぅー、ふぅー……。主にしがみつかれると、生きた心地しないわ」
「怖がらないでよ。最初の時以外、危害加えることなんてしてないじゃないの」
「今のは含まれておらぬのか。正に襲われてたのじゃが……」
「コミュニケーションよ。コミュニケーション。触れ合って仲良くしましょ」

 凛は手をワキワキさせならが、玖音へとにじり寄る。
 色んな恐怖を感じた玖音は、顔を強張らせながら、後ろへと下がった。

 そこに、フラムとシーナがお湯を掻き分け、やってくる。

「鬼ごっこしてるの? あたしらも混ぜて」
「! いいわよっ。ガオー」

 凛はすぐさま標的を切り替え、二人を追いかけ始めた。
 端でほっと息をつく玖音を余所に、騒がしく追いかけっこをする。

 二人は笑顔で逃げ、それを凛が大喜びで追いかけていた。

(もう最高っ……! ここは楽園だわっ)

 楽しく無邪気に遊ぶ女の子との触れ合い。
 凛が望んでいた楽園が、ここにあった。
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