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第三章

43話 正式加入

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 馬車で現地まで来た一同は、少し離れた位置でキャンプを行う。
 討伐対象であるゴブリンは昼行性とのことで、討伐は深夜に決行されることとなり、時間まで休憩をすることとなった。

 日は既に落ちており、決行まで、あと数時間。
 それぞれ討伐に向け、夕食を摂ったり仮眠などしていたが、冒険者の様子には温度差があった。

 教官やある程度経験のある冒険者は、休んでいる間も真剣な表情をしているのに対し、若手の冒険者は経験の少なさから、事態をそこまで重くは考えおらず、任された役割が簡単なものということもあって、比較的呑気にしている。
 状況を理解したうえで、呑気にしていたのは凛達くらいであった。

 焚火を囲って、楽しくお喋りしながら夕食を食べる凛達を、アラン達は少し離れたところから恨みがましく見つめる。

「調子に乗りやがって、あいつら。どうにかして痛い目見せてーな……」
「ええ、ほんとムカつく。でも、あの女、強過ぎるから、手出しできないわ」

 楽しそうにしている姿を見て、アラン達は益々恨みを募らせていた。
 恨み節を言っていると、パーティの一人が言う。

「あのさ。前に後をつけていた時、急に消えたことあったじゃないか。ずっと考えてたんだが、あいつ、アーティファクト持ちなのでは?」

 その言葉を受け、一同は考え込む。

「……あり得る。俺らと大して変わらない癖に、あの強さは異常だ。アーティファクトの力だとするなら、納得がいく」
「そんなのもう、私らに勝ち目なんて絶対ないじゃない」
「いや、アーティファクトの力なら、奪えばいい。奪ってしまえば、あんな奴、脅威でも何でもない」
「奪うっていっても、そう簡単にできる?」
「どさくさに紛れてやるんだよ。今夜の襲撃は激しい戦いになるらしいから、きっとチャンスは来るはずだ。アーティファクト手に入ったら、俺ら大金持ちだぞ」

 大金持ちになると聞き、メンバー達は顔をニヤつかせる。

「アランってば天才。やっちゃいましょ」
「ああ、ついでに、これまでの恨みも晴らしてやる」

――――

「っていう話してた」

 シーナが凛達に、アラン達がしていた会話を報告する。
 ここに来るまで、ずっと恨みがましい視線を向けられていたので、シーナは警戒して、暇していた時間で監視をしていたのだった。

「まったく、しょうがないわねー。あの人達は」
「このメンバーに仕掛けてくるとは。命知らずにも程があるの」

 凛達は報告を聞いて呆れる。
 アーティファクトを除いても、チート級の能力を誇る稀人にプラスして、こちらには神獣と元エリート暗殺者までいる。
 知らないとはいえ、敵に回すにはあまりにも凶悪な面子であった。

「大丈夫だとは思うけど、一応警戒しておきましょ」



 そして時間が過ぎ、作戦開始の時間となった。
 各パーティは、それぞれの配置につく。

 凛達は担当場所である丘の上へとやってきた。
 高台となっており、そこからはゴブリンの巣が見下ろせた。
 ゴブリンの巣は、石や木の枝の寄せ集めで作られた不格好な要塞であった。

 突入班が中へと突入すると、程なくして騒がしくなり、ゴブリンが逃げ出すように外へと出てくる。

「こっちにも来るわね。今更だけどシーナちゃん、モンスター相手、大丈夫?」
「ん」

 シーナは返事の後に、向かってくるゴブリンに向け、ナイフを投げた。
 一直線に飛んだナイフは、ゴブリンの頭に刺さり、そのゴブリンは倒れる。

「大丈夫。ちゃんと準備して来た」

 シーナはスカートを自ら捲って、太腿に仕込んでいた何本もの投げナイフを見せる。

「さっき、それに致死性の猛毒塗っておったぞ」
「ヤバいわね……」

 戦いとのことで、暗殺者として万全の準備を整えて臨んでいた。
 アーティファクトの破血小刀も持たせたままだったので、戦力的に玖音にも劣らない恐ろしさがあった。

「余裕そうだから、ラピスちゃんの指導でもしながら迎え撃ちましょうか」
「はいっ」

――――

 襲い掛かって来る三匹のゴブリンを、ラピスは氷の槍三連発で倒す。

「いい感じ、いい感じ。ラピスちゃんも大分強くなったわね」
「はいっ。凛さんの指導のおかげです」

 当初と比べ、積極性が大分上がっており、術式改変により魔法性能自体も大幅に強化され、冒険者としての戦闘力は格段に上がっていた。
 ラピスもそのことを実感しており、今度はしっかりと自分の実力を把握して、上辺だけではない確たる自信を持っていた。

「もう教えることもなくなってきたことだし、免許皆伝してもいいかもね」
「えっ、まだ全然教わり足りませんっ」

 ラピスは吃驚して凛に縋る。
 強くはなっていたが、まだ凛や玖音、そしてシーナにも遠く及ばなかった。

「教えられることは大体教えたわ。後は自己鍛錬や依頼で経験を積んでけば、勝手に伸びて行くわよ」
「で、でも、私はまだ凛さんの指導受けたい……」
「嬉しいこと言ってくれるわね。そう言われたら、もう少し付き合ってあげたくなっちゃうけど。んー……私、一応旅人だから、いつまでも、この町に留まっている訳にもいかないし……」

 凛がそのように話していると、ラピスは悲しそうに俯く。
 その姿を見て、凛が言う。

「一緒に来る? 教えることは、そんなないから、ハーレ……じゃなくて、仲間としてだけど」

 旅への同行を誘われたラピスは、表情を明るくさせる。

「はい! どこまででも、ついて行きます!」

 こうしてラピスが正式にハーレム入りした。
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