47 / 63
第四章
47話 浮浪児
しおりを挟む
「ありがとうございました。まさか、詐欺だったなんて……」
詐欺露店前から連れ出すと、少女は凛にお礼を言ってきた。
「流石にあれには気付いた方がいいわよ」
「すみません。世間知らずで……」
少女は肩を落として落ち込む。
女の子相手だったが、流石の凛も苦言せざるを得なかった。
「まぁ、ギリギリ防げたからセーフね。こっちはスラムっぽいから、分からないなら入るべきじゃないわ」
「分かってはいたのですが、自分の住んでいる街ですから、一度は目にしておきたいと思いまして」
「なら、一緒に回る? 私もこっちのお店、見て回ろうとしてたところだから」
「是非」
凛は少女と一緒に貧民区の出店エリアを回ることとなった。
二人は露店で買ったアイスクリームを片手に自己紹介がてら、それぞれのことをお喋りながら巡り歩く。
少女の名はクーネといい、地元に住んでいる町娘とのこと。
生粋の地元民であるが、貧民区のことは少し危ない場所ということぐらいの認識でしかなかった為、周りからは止められていたものの、大丈夫だろうと入ってしまったらしい。
「冒険者をしながら旅をしているのですか。いいですね。そういうの憧れます」
クーネは目を輝かせて言う。
「じゃあ、一緒に来る? 同行者いるけど、みんなクーネちゃんくらいの年齢の子よ」
「お誘いは嬉しいのですが、ちょっと難しいです……」
「そりゃそうよね」
当てもない長期の旅など、普通はそう簡単に同行できるものではなかった。
「今、こうしてるだけでも、私にとっては冒険みたいなものです。こんな、食べながら歩くなんてことしたの初めてで、とっても楽しいです」
「買い食い初めてなんだ。さっきから薄々感じてたけど、育ちの良さが滲み出てるわね」
クーネは身形から物腰まで、至る所から育ちの良さが感じ取られた。
貧民区にいるからか、凛からは、それが特に際立って見えていた。
「え。そ、そうですか?」
「もうバリバリ。でもね、私もこう見えていいとこ育ちというか、結構いい学校に通ってたのよ」
凛は育ちの良さマウントを取り始めた。
その時、向かいから走って来た子供がクーネにぶつかる。
「きゃっ」
ぶつかって来た子供は謝罪もせず走り去って行く。
体勢を持ち直したクーネだが、気付くと、手に持っていたはずのアイスクリームが消えていた。
二人が去って行った子供へと目を向けると、その手に、食べかけのアイスクリームがあった。
「アイスクリーム泥棒?」
酷くチンケな窃盗であったが、凛は奪われたクーネのショックを受けている顔を見て、怒りが湧いてくる。
すぐに子供に向けて手を翳す凛だが、人混みのせいで上手く狙いが定まらない。
「あーもう、走って捕まえるわよ」
「は、はいっ」
凛とクーネは子供を追って、走り出した。
追ってきたことに気付いた子供は、急いで細い路地へと逃げ込む。
凛とクーネも後に続いて路地に入った。
その路地は薄暗く、出店エリアより一層荒んでいた。
人気が殆どないと見た凛は、逃げる子供の方に向けて手を翳す。
「飛んで火に入るってね」
直後、子供が走る前方の土が一気に盛り上がり、壁が出来た。
子供は突然現れた壁に驚いて、尻餅をつく。
その隙に、凛達は子供の下へと追いついた。
「……女の子?」
アイスクリームを盗った子供は猫耳の女の子であった。
歳は十三、四ほどで、ボロ布のような服に身を包んだ、みすぼらしい格好をしている。
アイスは逃げている間に食べられてしまったようで、手にはもう何も持っていない。
「スラムの子ですかね?」
「んー、格好からして浮浪児っぽいわね」
この世界でホームレス生活をしている子供を見かけることは、そう珍しくはない。
治安が悪かったり社会福祉が未成熟だったりと、場所によって原因は様々だが、どの国にでも一定数は存在していた。
浮浪児の多くは、窃盗で生計を立てているので、一般市民からは忌み嫌われる存在だった。
壁に驚いていた浮浪児の少女だが、近くまで来た凛達に気付いて、慌てて臨戦態勢を取る。
だが、そこで浮浪児の少女のお腹が鳴った。
「お腹空いてるの?」
浮浪児の少女が空腹であることを知った凛は、シェルターミラーに手を突っ込み、先程買い込んだ食料の中から、そのまま食べれる物を出す。
警戒する浮浪児の少女だが、凛がソーセージや野菜を差し出すと、即座に分捕り、貪るように食べ始めた。
「途中で没収なんてしないから、ゆっくり食べていいわよ」
ゆっくり食べるよう言うが、浮浪児の女の子は無視して全力で食べ続けた。
眺めていると、満腹になったようで手が止まる。
そこで浮浪児の少女が凛に言う。
「ねぇ、みんなにも食べさせてあげたい」
「仲間がいるの? いいわよ。まだ沢山あるから」
凛が快く了承すると、浮浪児の少女は凛の手を引き、案内を始める。
詐欺露店前から連れ出すと、少女は凛にお礼を言ってきた。
「流石にあれには気付いた方がいいわよ」
「すみません。世間知らずで……」
少女は肩を落として落ち込む。
女の子相手だったが、流石の凛も苦言せざるを得なかった。
「まぁ、ギリギリ防げたからセーフね。こっちはスラムっぽいから、分からないなら入るべきじゃないわ」
「分かってはいたのですが、自分の住んでいる街ですから、一度は目にしておきたいと思いまして」
「なら、一緒に回る? 私もこっちのお店、見て回ろうとしてたところだから」
「是非」
凛は少女と一緒に貧民区の出店エリアを回ることとなった。
二人は露店で買ったアイスクリームを片手に自己紹介がてら、それぞれのことをお喋りながら巡り歩く。
少女の名はクーネといい、地元に住んでいる町娘とのこと。
生粋の地元民であるが、貧民区のことは少し危ない場所ということぐらいの認識でしかなかった為、周りからは止められていたものの、大丈夫だろうと入ってしまったらしい。
「冒険者をしながら旅をしているのですか。いいですね。そういうの憧れます」
クーネは目を輝かせて言う。
「じゃあ、一緒に来る? 同行者いるけど、みんなクーネちゃんくらいの年齢の子よ」
「お誘いは嬉しいのですが、ちょっと難しいです……」
「そりゃそうよね」
当てもない長期の旅など、普通はそう簡単に同行できるものではなかった。
「今、こうしてるだけでも、私にとっては冒険みたいなものです。こんな、食べながら歩くなんてことしたの初めてで、とっても楽しいです」
「買い食い初めてなんだ。さっきから薄々感じてたけど、育ちの良さが滲み出てるわね」
クーネは身形から物腰まで、至る所から育ちの良さが感じ取られた。
貧民区にいるからか、凛からは、それが特に際立って見えていた。
「え。そ、そうですか?」
「もうバリバリ。でもね、私もこう見えていいとこ育ちというか、結構いい学校に通ってたのよ」
凛は育ちの良さマウントを取り始めた。
その時、向かいから走って来た子供がクーネにぶつかる。
「きゃっ」
ぶつかって来た子供は謝罪もせず走り去って行く。
体勢を持ち直したクーネだが、気付くと、手に持っていたはずのアイスクリームが消えていた。
二人が去って行った子供へと目を向けると、その手に、食べかけのアイスクリームがあった。
「アイスクリーム泥棒?」
酷くチンケな窃盗であったが、凛は奪われたクーネのショックを受けている顔を見て、怒りが湧いてくる。
すぐに子供に向けて手を翳す凛だが、人混みのせいで上手く狙いが定まらない。
「あーもう、走って捕まえるわよ」
「は、はいっ」
凛とクーネは子供を追って、走り出した。
追ってきたことに気付いた子供は、急いで細い路地へと逃げ込む。
凛とクーネも後に続いて路地に入った。
その路地は薄暗く、出店エリアより一層荒んでいた。
人気が殆どないと見た凛は、逃げる子供の方に向けて手を翳す。
「飛んで火に入るってね」
直後、子供が走る前方の土が一気に盛り上がり、壁が出来た。
子供は突然現れた壁に驚いて、尻餅をつく。
その隙に、凛達は子供の下へと追いついた。
「……女の子?」
アイスクリームを盗った子供は猫耳の女の子であった。
歳は十三、四ほどで、ボロ布のような服に身を包んだ、みすぼらしい格好をしている。
アイスは逃げている間に食べられてしまったようで、手にはもう何も持っていない。
「スラムの子ですかね?」
「んー、格好からして浮浪児っぽいわね」
この世界でホームレス生活をしている子供を見かけることは、そう珍しくはない。
治安が悪かったり社会福祉が未成熟だったりと、場所によって原因は様々だが、どの国にでも一定数は存在していた。
浮浪児の多くは、窃盗で生計を立てているので、一般市民からは忌み嫌われる存在だった。
壁に驚いていた浮浪児の少女だが、近くまで来た凛達に気付いて、慌てて臨戦態勢を取る。
だが、そこで浮浪児の少女のお腹が鳴った。
「お腹空いてるの?」
浮浪児の少女が空腹であることを知った凛は、シェルターミラーに手を突っ込み、先程買い込んだ食料の中から、そのまま食べれる物を出す。
警戒する浮浪児の少女だが、凛がソーセージや野菜を差し出すと、即座に分捕り、貪るように食べ始めた。
「途中で没収なんてしないから、ゆっくり食べていいわよ」
ゆっくり食べるよう言うが、浮浪児の女の子は無視して全力で食べ続けた。
眺めていると、満腹になったようで手が止まる。
そこで浮浪児の少女が凛に言う。
「ねぇ、みんなにも食べさせてあげたい」
「仲間がいるの? いいわよ。まだ沢山あるから」
凛が快く了承すると、浮浪児の少女は凛の手を引き、案内を始める。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる