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第四章
49話 行方不明
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それから凛とクーネの二人は、浮浪児の拠点に通うようになった。
「仲間以外の人であっても、相手の嫌がることはしない。相手の為になること、喜んでくれることをしてあげましょう」
浮浪児の拠点にて、凛は浮浪児達を集めて、道徳の授業を行っている。
勉強を教えるとのことで、浮浪児達は嫌がっていたが、食料を提供することを条件に、半強制的に受けさせていた。
無理矢理やらせていることだが、浮浪児達にとって食べ物は何よりも価値のあるものだったので、凛が思っていた以上に真面目に授業を受けてくれている。
授業をしていると、浮浪児の一人が手を上げて質問する。
「何で、仲間じゃない人に、そんなことしないといけないのー?」
「それはね、自分の為になるからよ。一見メリットがないように思えるかもしれないけど、相手に優しくすることで、不要な争いや恨みを買ったりするのを未然に防ぐことができるの。例えば、恨みを買った相手が偉い人だったら、ここに兵士達が一気に攻め込んでくることもあり得るわ。そんなことになったら嫌でしょ? 逆に恩を売っておけば、もしかしたらその人も食べ物とかを持ってきてくれるようになるかもしれない。だから、相手に優しくしてあげた方が得なの。まぁ、見返りを期待してやると、何もなかった時ショックだから、お返しがあったらラッキーぐらいの気持ちでいるといいわ」
質問した子は納得した表情をする。
浮浪児達は即物的な傾向にあったので、メリットデメリットに重点を置いて説明することで、より良く理解させることができていた。
「凛姉ちゃんが食べ物持ってきてくれるのは、何か欲しいからなの?」
「んー、そうね。私が優しくしてるのは、仲間が欲しいから、かしら? 私、まだ知り合い少ないから、仲良くなって、みんなの仲間になれたらなーって思って」
「凛姉ちゃんはもう仲間だよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
食料提供のおかげか、凛はもう浮浪児達に受け入れられていた。
授業を終えると、浮浪児の子達はそれぞれ自由行動を取り始める。
講義を終えて一段落つけた凛は隅の段差に座り、遊んだりしている女の子達を眺めていた。
(女の子だけを連れて行くのは難しいわよねぇ。みんなまとめてなら行けそうだけど、野郎はいらないのよね……)
大分懐いてくれたので、凛は旅に同行させることを考えるが、女子だけを連れて行くとなると色々問題が出てくる為、できそうになかった。
せめてここにいる間だけでも楽しもうと、鑑賞を続けていると、クーネが話しかけてくる。
「凛さんの授業って、なかなか独特ですよね。考えもしなかったことが多いので、私も勉強になります」
クーネは授業の間、講義の手伝いしつつも授業に耳を傾けていた。
「いやぁ、あれは浮浪児の子に合わせた授業だから、あんまり参考にしないで」
「そうなんですか?」
「育ちがいい子には、毒になり兼ねないことだから。クーネちゃんは変わらず清らかなままでいて」
物事を利益だけで考えるのは、あまり良くないことである。
あからさまな詐欺に騙されるくらい純粋なクーネが、そんな考えになっては、色々と台無しだった。
二人が話していると、浮浪児の少女が凛に絡んでくる。
「凛姉ちゃん遊ぼー」
「あ、ミアちゃん。いいわよ。何して遊ぶ?」
その少女・ミアは、浮浪児の拠点に来るきっかけとなった子だった。
浮浪児の中では年長の部類で、群れではボスに次ぐ発言権を持っている。
食料提供をしてくれる凛達を連れてきたことで、みんなから褒められたからか、凛に非常に懐いており、群れの中では一番友好的な子であった。
「鬼ごっこしよー。クーネも一緒に」
「はい」
クーネや他の子達も加え、凛達はみんなで楽しく遊んだ。
夕方。
凛とクーネは夕食の用意をしていた。
「クーネちゃん、時間大丈夫?」
「はい、今日はもうちょっとだけ長く居られます」
自由気ままな旅人の凛と違って、クーネには地元での暮らしがあるので、四六時中入り浸るようなことはできない。
「ご飯まだ?」
二人が調理していると、浮浪児の子が催促してくる。
調理台前には浮浪児の子達がずらりと並んでおり、夕食を今か今かと待っていた。
「待ってて。今から切り分けるから」
丁度、いい具合に焼けていたので、凛は配膳を始める。
だがそこで、浮浪児の子の一人が声を上げた。
「ねぇ、ミア姉ちゃんいないよー」
凛が集まっていた浮浪児の子達の顔ぶれを確認すると、確かにミアの姿はなかった。
「あれ? おかしいわね。これまで、ご飯の時間までには必ず帰って来てたのに」
浮浪児は拠点内に留まっている訳ではなく、生活で使える品を探したりする為に街中を出歩いていた。
ミアは昼間、凛達と遊んでいたが、その後、資源収集へと出かけていた。
それから、戻った姿を見ていないので、それっきりである。
すると、リーダー格の少年が言う。
「しくじったのかもな。戻って来ない時は、大抵死んでる」
「えっ、死んでるって……嘘でしょ?」
「よくあることだぞ。盗み失敗して殺されたり、兵士やマフィアの奴らに殴られて、当たりどころ悪かったりで」
「そんな……」
「それよりご飯早くしてくれよ」
リーダー格の少年は、ミアのことなど全く気にしていない様子で、夕食を催促する。
浮浪児にとって、仲間が命を落とすことなど日常茶飯事だったので、非常にドライであった。
他の浮浪児の子も心配する様子はないが、凛とクーネは気が気ではない。
「ごめん。私、探しに行ってくるわ。ご飯は勝手に分けて食べてて」
「私も行きます」
凛はクーネと共に浮浪児の拠点を飛び出した。
「仲間以外の人であっても、相手の嫌がることはしない。相手の為になること、喜んでくれることをしてあげましょう」
浮浪児の拠点にて、凛は浮浪児達を集めて、道徳の授業を行っている。
勉強を教えるとのことで、浮浪児達は嫌がっていたが、食料を提供することを条件に、半強制的に受けさせていた。
無理矢理やらせていることだが、浮浪児達にとって食べ物は何よりも価値のあるものだったので、凛が思っていた以上に真面目に授業を受けてくれている。
授業をしていると、浮浪児の一人が手を上げて質問する。
「何で、仲間じゃない人に、そんなことしないといけないのー?」
「それはね、自分の為になるからよ。一見メリットがないように思えるかもしれないけど、相手に優しくすることで、不要な争いや恨みを買ったりするのを未然に防ぐことができるの。例えば、恨みを買った相手が偉い人だったら、ここに兵士達が一気に攻め込んでくることもあり得るわ。そんなことになったら嫌でしょ? 逆に恩を売っておけば、もしかしたらその人も食べ物とかを持ってきてくれるようになるかもしれない。だから、相手に優しくしてあげた方が得なの。まぁ、見返りを期待してやると、何もなかった時ショックだから、お返しがあったらラッキーぐらいの気持ちでいるといいわ」
質問した子は納得した表情をする。
浮浪児達は即物的な傾向にあったので、メリットデメリットに重点を置いて説明することで、より良く理解させることができていた。
「凛姉ちゃんが食べ物持ってきてくれるのは、何か欲しいからなの?」
「んー、そうね。私が優しくしてるのは、仲間が欲しいから、かしら? 私、まだ知り合い少ないから、仲良くなって、みんなの仲間になれたらなーって思って」
「凛姉ちゃんはもう仲間だよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
食料提供のおかげか、凛はもう浮浪児達に受け入れられていた。
授業を終えると、浮浪児の子達はそれぞれ自由行動を取り始める。
講義を終えて一段落つけた凛は隅の段差に座り、遊んだりしている女の子達を眺めていた。
(女の子だけを連れて行くのは難しいわよねぇ。みんなまとめてなら行けそうだけど、野郎はいらないのよね……)
大分懐いてくれたので、凛は旅に同行させることを考えるが、女子だけを連れて行くとなると色々問題が出てくる為、できそうになかった。
せめてここにいる間だけでも楽しもうと、鑑賞を続けていると、クーネが話しかけてくる。
「凛さんの授業って、なかなか独特ですよね。考えもしなかったことが多いので、私も勉強になります」
クーネは授業の間、講義の手伝いしつつも授業に耳を傾けていた。
「いやぁ、あれは浮浪児の子に合わせた授業だから、あんまり参考にしないで」
「そうなんですか?」
「育ちがいい子には、毒になり兼ねないことだから。クーネちゃんは変わらず清らかなままでいて」
物事を利益だけで考えるのは、あまり良くないことである。
あからさまな詐欺に騙されるくらい純粋なクーネが、そんな考えになっては、色々と台無しだった。
二人が話していると、浮浪児の少女が凛に絡んでくる。
「凛姉ちゃん遊ぼー」
「あ、ミアちゃん。いいわよ。何して遊ぶ?」
その少女・ミアは、浮浪児の拠点に来るきっかけとなった子だった。
浮浪児の中では年長の部類で、群れではボスに次ぐ発言権を持っている。
食料提供をしてくれる凛達を連れてきたことで、みんなから褒められたからか、凛に非常に懐いており、群れの中では一番友好的な子であった。
「鬼ごっこしよー。クーネも一緒に」
「はい」
クーネや他の子達も加え、凛達はみんなで楽しく遊んだ。
夕方。
凛とクーネは夕食の用意をしていた。
「クーネちゃん、時間大丈夫?」
「はい、今日はもうちょっとだけ長く居られます」
自由気ままな旅人の凛と違って、クーネには地元での暮らしがあるので、四六時中入り浸るようなことはできない。
「ご飯まだ?」
二人が調理していると、浮浪児の子が催促してくる。
調理台前には浮浪児の子達がずらりと並んでおり、夕食を今か今かと待っていた。
「待ってて。今から切り分けるから」
丁度、いい具合に焼けていたので、凛は配膳を始める。
だがそこで、浮浪児の子の一人が声を上げた。
「ねぇ、ミア姉ちゃんいないよー」
凛が集まっていた浮浪児の子達の顔ぶれを確認すると、確かにミアの姿はなかった。
「あれ? おかしいわね。これまで、ご飯の時間までには必ず帰って来てたのに」
浮浪児は拠点内に留まっている訳ではなく、生活で使える品を探したりする為に街中を出歩いていた。
ミアは昼間、凛達と遊んでいたが、その後、資源収集へと出かけていた。
それから、戻った姿を見ていないので、それっきりである。
すると、リーダー格の少年が言う。
「しくじったのかもな。戻って来ない時は、大抵死んでる」
「えっ、死んでるって……嘘でしょ?」
「よくあることだぞ。盗み失敗して殺されたり、兵士やマフィアの奴らに殴られて、当たりどころ悪かったりで」
「そんな……」
「それよりご飯早くしてくれよ」
リーダー格の少年は、ミアのことなど全く気にしていない様子で、夕食を催促する。
浮浪児にとって、仲間が命を落とすことなど日常茶飯事だったので、非常にドライであった。
他の浮浪児の子も心配する様子はないが、凛とクーネは気が気ではない。
「ごめん。私、探しに行ってくるわ。ご飯は勝手に分けて食べてて」
「私も行きます」
凛はクーネと共に浮浪児の拠点を飛び出した。
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