明々の道しるべ

天然カジキ

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褐色のなでしこ

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 「いたぞ、その木の後ろだ!」

 銃を持った男が大木たいぼくを撃ち抜いた。すると、褐色かっしょくはだをした少女が大木の影から飛び出し、あちこちに目を向けながらけ出した。

 「お母さん!どこにいるの⁉︎」

 少女はひたすらに走った。地面に張り巡らされた木の根を飛び越え、母親の姿がないかあらゆる方向に意識を集中した。そして、ふとした時、視界に人の姿が入り込んだ。あまりに急に現れたので、少女は思わずつまづき、そばにあった窪地くぼちの中へ転がり落ちてしまった。すると、一人の男が窪地のふちから現れた。口笛を吹きながら悠々ゆうゆうくさりを回している。

 「よ~う、おじょうちゃん。ママならここにいるよ」

 鎖の男の横から、棍棒こんぼうを持ったおおがらの男が女性の髪をわしづかみにして現れた。女性は顔じゅうに殴られたあとがあり、ゼェゼェと息が上がっている。

 「やったぜ、兄貴あにき!」

 棍棒の男がまるで大魚を釣り上げたかのように誇らしく言った。

 「嬢ちゃん。君もこの女のようになりたくないなら大人しく捕まりなさい」

 「ダメよ、明々めいめい・・・・・・!逃げなさい、汝弥じょやさとへ!」

 女性が力を振りしぼって叫んだ。

 「お母さんを置いていけないよ!」

 明々は、体を震わせながら立ち上がり、周囲を見渡した。——大きな木がたくさんある、森だ。うまく隠れることができれば、男たちから逃げられるかもしれない。だけど、お母さんを置き去りになんてできない——

 すると、鎖の男が、一歩ずつ華麗かれいな足取りで明々に近づいた。

 「嬢ちゃん、いいことを教えてあげよう。俺たちの狙いは君だ。君のママではない」
 
 明々は視線を男に向けた。

 「君は特別だ。特にその肌はね。俺たちは見たことがない。君が捕まってくれれば、ママは逃がしてあげる」
 
 「本当にお母さんを逃がしてくれるの?」

 「もちろん!」

 男が鎖を回す速度を上げた。明々を舐めるように見つめ、口からよだれを垂らしている。

 「さぁ、こっちへ来い。『褐色かっしょくのなでしこ』!」

 明々は母親に視線を移した。母親はりきなく髪をつかまれ、かろうじて目を開けている。
 明々の震えが止まった。そして、ゆっくりと男の方へ足を踏み出した。
 その時、風が吹き荒れると同時に、黒い影が二つ、明々の前に立ち塞がった。

 
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