こっち向いて、運命。-半神騎士と猪突猛進男子が幸せになるまでのお話-

だいきち

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「時短契約で恋人とはなかなかに面白い。」

 カインに伝えた通り、ルキーノとダラスにこんな話をしましたと伝える。報連相の大切さはルキーノからしっかりと教え込まれているので、ミハエルは割と素直というか、あまり隠し事が出来るような性格ではなかった。

「ケイデンシー、返したいんですけど、入館証だと思えって。」
「随分な効果のある入館証だなあ…」

 こんな最強の虫除け、なかなかないぞ。ダラスはそう言うと、改めてそのループタイを見る。これはカインから受け取ったものであった。誕生日プレゼントかとも思ったのだが、どうやら違うらしい。 
 ダラスが直接確認をすると、どうやら先んじてジルバに言われて用意したものらしかった。 
 いわく、一応ミハエルが許嫁の予定だから、お前のケイデンシーを刻んだループタイくらいは送っとけと言われたとのことだ。まじで事前準備万端か。用意したカインも凄いが、今日のこの日を指定してきたことも考えると、頭のいい二人だ。時短契約を取り交わす前提で静かに動いてきたのかも知れない。
 ループタイさえ受け取らなければ、ダラスはルキーノにもミハエルにも責められることはなかったかもしれない。そんなことを思っても後の祭りだが。

「というか、受け取った時点で報告をしなさい。僕はてっきり兄さんが用意したものだと思いましたよ。」
「ちがう。しかし、石の色までミハエルに合わせるという小細工は小癪だな。」

 帰りの馬車は断わって、せっかくだから気を取り直してミハエルの誕生日を城下で祝おうと言う話になったのだ。
 おめかししたまま外に出るのは少しだけ照れくさいが、ダラスもルキーノも正装はしてきていた。結局既知なせいか砕けた会話になったらしいが。

「グレイシス様から二人目の妊娠について労りの言葉を頂戴しました。」
「ほう、なんだって?」
「孕ませておいて家に帰らずに職場にこもるようなら、局長という役職を剥奪してやるですって。実に頼もしくていらっしゃる。」
「はあ!?」

 そんなことをしたら研究に支障がでるだろうと喚くダラスは、家庭に支障がでるのは宜しいと?と笑顔で宣うルキーノに窘められていた。医術局の元白百合がカカア天下だということを知る人は、きっと少ないのだろうなあと思う。

 ダラスについていくように、ミハエルはルキーノと寄り添って歩く。一度誘拐されてから、3人で外を歩くときは大抵こうだった。一番動けるダラスが守るように前に出るのはたしかに心強いが、気にかけられるような過去を持ってしまって申し訳なくもおもう。
 ミハエルの中のトラウマは、こうして両親にとってのトラウマにもなってしまったのだ。

 城を出て暫くして、賑わいのある通りまできた。
 市井は今が夜に向けてのかきいれ時らしい、バルの前では呼び込みもしていて、なんだか活気があって楽しそうである。ミハエルは真っ直ぐにお家に帰ることが多いので、あまりこうして飲み屋が連なるような場所は向かわない。
 粗野な人が多くて、こういった店では馴染めない気もする。だけど、こういうところでお酒を飲むのはちょっとだけかっこいいなあと思ってもいた。

「それにしても、本当にここらへんの店でいいのか。もっとあるだろう、レストランとか。」
「ううん、行ったことないから行ってみたいんです。ちっちゃい樽みたいなのでお酒を飲むんでしょう?」
「ああ、ジョッキのことか。まあそうだな、行ったことない割に詳しいな?」
「本で読みました。今どきの若者は、バルでひっかけてから街に繰り出すと。」

 息抜きに買った本をちまちまと読み始めたのはいいが、ミハエルにとっては想像が追いつかないことばかりでイマイチ入り込めなかった。バルでいい雰囲気とはどうやって作るのだろう。サディンはきっと行きなれてるに違いないから、後学のためにも体験してみたかったというのもある。

「酒によった勢いで行きずりの相手と一夜をともにするやつも多いぞ。」
「ミハエルに変なことを教えないでください。」

 行きずりで一夜の意味は測りかねるが、なんだかそれはすごく大人な響きだ。ルキーノの鋭いツッコミから、恐らく風紀的にはあまり良くないのだろうなあとおもいながら、さてどの店に入るかとダラスが視線を巡らせたときだった。

「まあミハエルにはまだワンナイトは早、ああ?」

 立ち止まったダラスの背中に、ぼけっとしていたミハエルの顔がボスンと当たった。急に立ち止まるものだから、つい気を取られてぶつかったのだ。
鼻を抑えて蹌踉めくと、間抜けな息子の様子にルキーノが前を見て歩きなさいと窘めた。

「はえ」

 言われた通り、素直に前を向いたミハエルは間抜けな声を漏らした。
 横ではルキーノと、そして少し前にいるダラスまでもが呆れた様子である。3人の視線の先にはミハエルの想い人でもあり、現在三連敗中のサディンが細身の男性とともに出てきたところであった。店を見る。バルだ。もしやこれってあれではないのか。
 ダラスもルキーノも、間抜けな顔をして呆けているミハエルには気付かず、あろう事が呼び止めまでした。

「サディン。お前また行きずりか。いい加減刺されても知らんぞ。」
「げえ…ダラス、と、ルキーノ。」

 呆れたようなダラスの言葉に、サディンも面倒くさそうな顔をする。また?またってなんだ。ミハエルの頭の中をぐるぐると回転する二文字に、ミハエルはダラスの背に隠れるようにして縮こまった。

「そちらの方は?」
「職場の同僚家族。」
「おいお前、サディンだけはやめておけ。これは善意の忠告だ。」
「お前のお節介はあいかわら、」

 どうやら相手はそういう職業の人らしい。とても綺麗な人で、サディンと並んでも絵になった。ミハエルはルキーノの手を握りながら、呆けた顔で大人しくしていたから気づかれなかったらしい。ダラスが声をかけようと身をずらして漸く気がついたようで、ミハエルを目にしたサディンの声は不自然な位置で途切れた。


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