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そこは、非常に歪な空間であった。天井からたくさんの布が垂らされ、進むにもそれを手で避けながら進むしかないような、そんな場所であった。掠れたクラシックの音が仄かな恐怖を煽る。本当にここでいいのかと、恐る恐る振り向いたが、もうそこに案内をしてくれた侍従の姿はいなかった。
「ようこそ、待ちくたびれたよ。」
「可愛らしい花売り、今宵は君のために宴席を設けてある。存分に楽しまれるといい。」
「え、」
まるで誘い込むかのような二人分の声に、小さく反応してしまった。てっきり一人だけだと思ったのだ。思わず立ち止まってしまう。風がないのに、ゆっくりと布生地が揺れる。宴席というだけあり、どうやら軽食も用意してあるようだった。どうしよう。ミハエルは経験なんてないのに、こんな二人相手に満足させろというのは無茶がすぎる。
変に緊張してきたが、それがバレてしまうのはもっとまずい。
「本日は、お招きいただー…」
ふわりと布生地が揺れ、そのわずかな隙間から、上等な服を着た男が脚を組んで座っている様子が見えたと思った瞬間だった。
「っぁ、あ!?」
ガクン、とミハエルの足に何かが絡みついた。そのまま、まるで罠にかかった獲物のように、その細い体が宙吊りにされると、ミハエルが指していた真っ白い花がふわりと床に落とされた。
ーミハエル、おやまあなんとも間抜けな姿。
「な、何を…っ!」
片足だけで体を支えるせいで、ミハエルの細い脚はみしりと軋む。苦痛に顔を歪めると、サリエルが楽しそうに笑いながらミハエルに絡みつく。
ーなんとも愉快。燃やしてやってもいいが、火事になるかもしれん。
「いっ、」
ー助けてやってもいいが、任務はしくじるだろうなあ。
サリエルはミハエルと同じく、逆さになってそんなことを言う。任務をしくじるのは嫌だ、ゆるゆると首を振って拒むと、乗り切ってみせよと楽しげに笑って消えてしまった。最悪だ、こんな性癖なら事前に教えてほしかった。ソールの音を響かせ、一人の男がミハエルの真下にやってくる。顔立ちの整ったその男は、宙吊りのミハエルに手を伸ばすと、頬を染めながら微笑んだ。
「ああ、やはりあたりだ。まるで天の御使いが俺に祝福を与えてくださるようなシチュエーションではないか。」
「っ、」
狂っている。ミハエルはそう思った。図らずとも伸ばす形になってしまった手を、男はそっと握りしめる。天井から何かが伝って、細いミハエルの脚に絡みつく。振り向きたくても、それができない。怖い、怖い!
「ああ、怯えた顔をしないで。君にぴったりな子を用意したんだ。今楽にしてあげるからね。」
「ひ、っ…!や、な、なにっ…!」
「アウギュスト、」
籠もったような、不思議な声色が空気を震わした。蔦のようなものが服の内側に入り込むと、そのミハエルの細い首にシュルリと絡みつく。やがて何かが寄り添うようにミハエルの体を後ろから抱えあげると、ようやく足の痛みが収まった。
「君の名は?」
「り、リンドウ…」
「アウギュスト、ご挨拶して。」
ミハエルの顔を撫でるように、金色の髪が肌を撫でる。白い手が胸元を撫でるようにミハエルの身体に這わされると、そっとその小さな顔を手で覆うようにしながらゆっくりと顔を横に向かされる。
「マイア、とっても素敵な子。嬉しい、ありがとう。」
「アウギュスト、スミレが居なくなって悲しんでいただろう。これは俺のサプライズさ。」
「ひぅ、っ…」
その男は、ひどく美しい顔をしていた。ミハエルが蔦だと思っていたのは蛇だったようで、太く長い黒の鱗を持つ蛇が男の首に巻き付くと、ちろちろとミハエルの頬をくすぐる。
「あ、あな、たは…っ、」
「おや、ナーガを見たのは初めてかい?美しい生き物だろう。彼は今繁殖期でね。」
「マイア、もういい?夜会を開こう。俺はこのこと遊びたい。」
「ああ、アウギュスト。君の美しい戯れをぜひ見せてくれ。」
「ーーーーーっ、」
じわりとミハエルの瞳が濡れた。怖い、ゆるゆると上を向かされる。天井に垂れた布幕は、アウギュストの長い身を隠すためだったらしい。ミハエルを抱えたまま、その身を起用に操りながら広間に降り立つ。マイアと呼ばれた男のそばには乳母車があり、ちらりと赤子の腕が見えていた。
「へ、あ、赤ちゃ、ん?」
「ああ、彼の番が産んだのさ。やはり混じり物だと一人しか産めなくてね。すぐに死んでしまった。」
「ああ、やはり純粋なものがいい、柔らかな肉、豊富な魔力。リンドウ、君はとっても美味しそうだ。」
アウギュストと呼ばれた魔物は、まるで乳母車の中身など気にしないと言わんばかりに、シュルリとその体をミハエルに絡ませる。マイアは愛おしそうに赤子を抱き上げると、ミハエルに見えるようにした。
「俺はね、リンドウ。この美しい生き物を愛している。俺は彼らの繁殖を助け、そして囲まれて暮らしたい。なのに、一人しか産まないなんて、それは良くないだろう。」
「マイアは変わり者だよね。俺の最初の子は、契約通りお前のところの主が育てる。新たな男娼として。ああ、雌が生まれればよかったのに。」
アウギュストはつまらなさそうにマイアを見ると、ため息混じりにそんなことをのたまった。まさか、そんなことがあるのだろうか。ミハエルは恐ろしい想像に駆り立てられた自身に絶望した。まさか、半魔を得るために魔物と無理やり番わせる。そんなことが、まかり通っているのだろうか。
魔物を愛でる貴族との利害の一致、スミレとは、きっとあの老いた男娼の事だ。解剖したときに見た子宮は、妊娠している様子はなかった。あたりまえだ、だって、もう産み終えていたのだから。
ーナーガか、やつらの子は早熟だからな。ミハエル、どうする。助けてほしいか。
「ま、まって…まだ…!」
「おや、生娘のようなことを言う。リンドウは優しいのがお望み?俺は俺の番には優しくするよ。安心おし。」
ぎちりと蛇の体がミハエルの細い体を締める。マイアは赤子を抱きながら、うっとりとした顔でその行為を見ると、優雅に足を組み替えた。
「ぼ、僕はまだ…っ、妊娠薬をのんでません!」
時間稼ぎになればいいと思った。そう叫ぶように声を上げたミハエルに、アウギュストはピタリと止まる。ちろりとマイアを見た、まるでどうする?と言わんばかりに、ミハエルは小さく息を呑むと、そっとアウギュストの首に腕を絡ませる。
「お子を孕めとおっしゃるなら、僕はまだ準備ができておりません。あなたのお望みを叶えるには、まずはお薬をいただかねば。」
これで、出どころがわかるかもしれない。ミハエルは真っ直ぐにアウギュストを見上げると、嫣然と微笑む。まるで誘うように宣う眼の前の雌に、魔物の理性が刺激されないわけがなかった。
「ようこそ、待ちくたびれたよ。」
「可愛らしい花売り、今宵は君のために宴席を設けてある。存分に楽しまれるといい。」
「え、」
まるで誘い込むかのような二人分の声に、小さく反応してしまった。てっきり一人だけだと思ったのだ。思わず立ち止まってしまう。風がないのに、ゆっくりと布生地が揺れる。宴席というだけあり、どうやら軽食も用意してあるようだった。どうしよう。ミハエルは経験なんてないのに、こんな二人相手に満足させろというのは無茶がすぎる。
変に緊張してきたが、それがバレてしまうのはもっとまずい。
「本日は、お招きいただー…」
ふわりと布生地が揺れ、そのわずかな隙間から、上等な服を着た男が脚を組んで座っている様子が見えたと思った瞬間だった。
「っぁ、あ!?」
ガクン、とミハエルの足に何かが絡みついた。そのまま、まるで罠にかかった獲物のように、その細い体が宙吊りにされると、ミハエルが指していた真っ白い花がふわりと床に落とされた。
ーミハエル、おやまあなんとも間抜けな姿。
「な、何を…っ!」
片足だけで体を支えるせいで、ミハエルの細い脚はみしりと軋む。苦痛に顔を歪めると、サリエルが楽しそうに笑いながらミハエルに絡みつく。
ーなんとも愉快。燃やしてやってもいいが、火事になるかもしれん。
「いっ、」
ー助けてやってもいいが、任務はしくじるだろうなあ。
サリエルはミハエルと同じく、逆さになってそんなことを言う。任務をしくじるのは嫌だ、ゆるゆると首を振って拒むと、乗り切ってみせよと楽しげに笑って消えてしまった。最悪だ、こんな性癖なら事前に教えてほしかった。ソールの音を響かせ、一人の男がミハエルの真下にやってくる。顔立ちの整ったその男は、宙吊りのミハエルに手を伸ばすと、頬を染めながら微笑んだ。
「ああ、やはりあたりだ。まるで天の御使いが俺に祝福を与えてくださるようなシチュエーションではないか。」
「っ、」
狂っている。ミハエルはそう思った。図らずとも伸ばす形になってしまった手を、男はそっと握りしめる。天井から何かが伝って、細いミハエルの脚に絡みつく。振り向きたくても、それができない。怖い、怖い!
「ああ、怯えた顔をしないで。君にぴったりな子を用意したんだ。今楽にしてあげるからね。」
「ひ、っ…!や、な、なにっ…!」
「アウギュスト、」
籠もったような、不思議な声色が空気を震わした。蔦のようなものが服の内側に入り込むと、そのミハエルの細い首にシュルリと絡みつく。やがて何かが寄り添うようにミハエルの体を後ろから抱えあげると、ようやく足の痛みが収まった。
「君の名は?」
「り、リンドウ…」
「アウギュスト、ご挨拶して。」
ミハエルの顔を撫でるように、金色の髪が肌を撫でる。白い手が胸元を撫でるようにミハエルの身体に這わされると、そっとその小さな顔を手で覆うようにしながらゆっくりと顔を横に向かされる。
「マイア、とっても素敵な子。嬉しい、ありがとう。」
「アウギュスト、スミレが居なくなって悲しんでいただろう。これは俺のサプライズさ。」
「ひぅ、っ…」
その男は、ひどく美しい顔をしていた。ミハエルが蔦だと思っていたのは蛇だったようで、太く長い黒の鱗を持つ蛇が男の首に巻き付くと、ちろちろとミハエルの頬をくすぐる。
「あ、あな、たは…っ、」
「おや、ナーガを見たのは初めてかい?美しい生き物だろう。彼は今繁殖期でね。」
「マイア、もういい?夜会を開こう。俺はこのこと遊びたい。」
「ああ、アウギュスト。君の美しい戯れをぜひ見せてくれ。」
「ーーーーーっ、」
じわりとミハエルの瞳が濡れた。怖い、ゆるゆると上を向かされる。天井に垂れた布幕は、アウギュストの長い身を隠すためだったらしい。ミハエルを抱えたまま、その身を起用に操りながら広間に降り立つ。マイアと呼ばれた男のそばには乳母車があり、ちらりと赤子の腕が見えていた。
「へ、あ、赤ちゃ、ん?」
「ああ、彼の番が産んだのさ。やはり混じり物だと一人しか産めなくてね。すぐに死んでしまった。」
「ああ、やはり純粋なものがいい、柔らかな肉、豊富な魔力。リンドウ、君はとっても美味しそうだ。」
アウギュストと呼ばれた魔物は、まるで乳母車の中身など気にしないと言わんばかりに、シュルリとその体をミハエルに絡ませる。マイアは愛おしそうに赤子を抱き上げると、ミハエルに見えるようにした。
「俺はね、リンドウ。この美しい生き物を愛している。俺は彼らの繁殖を助け、そして囲まれて暮らしたい。なのに、一人しか産まないなんて、それは良くないだろう。」
「マイアは変わり者だよね。俺の最初の子は、契約通りお前のところの主が育てる。新たな男娼として。ああ、雌が生まれればよかったのに。」
アウギュストはつまらなさそうにマイアを見ると、ため息混じりにそんなことをのたまった。まさか、そんなことがあるのだろうか。ミハエルは恐ろしい想像に駆り立てられた自身に絶望した。まさか、半魔を得るために魔物と無理やり番わせる。そんなことが、まかり通っているのだろうか。
魔物を愛でる貴族との利害の一致、スミレとは、きっとあの老いた男娼の事だ。解剖したときに見た子宮は、妊娠している様子はなかった。あたりまえだ、だって、もう産み終えていたのだから。
ーナーガか、やつらの子は早熟だからな。ミハエル、どうする。助けてほしいか。
「ま、まって…まだ…!」
「おや、生娘のようなことを言う。リンドウは優しいのがお望み?俺は俺の番には優しくするよ。安心おし。」
ぎちりと蛇の体がミハエルの細い体を締める。マイアは赤子を抱きながら、うっとりとした顔でその行為を見ると、優雅に足を組み替えた。
「ぼ、僕はまだ…っ、妊娠薬をのんでません!」
時間稼ぎになればいいと思った。そう叫ぶように声を上げたミハエルに、アウギュストはピタリと止まる。ちろりとマイアを見た、まるでどうする?と言わんばかりに、ミハエルは小さく息を呑むと、そっとアウギュストの首に腕を絡ませる。
「お子を孕めとおっしゃるなら、僕はまだ準備ができておりません。あなたのお望みを叶えるには、まずはお薬をいただかねば。」
これで、出どころがわかるかもしれない。ミハエルは真っ直ぐにアウギュストを見上げると、嫣然と微笑む。まるで誘うように宣う眼の前の雌に、魔物の理性が刺激されないわけがなかった。
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