31 / 273
ストロー事件
しおりを挟む
「え、なに?」
「お前、ちゃんと食ってる?」
ぐるりと回された手を見て俊君がなんとも言えない顔をしてくる。どうやら僕の体を心配してくれているようだが、その前に君の手が大きいんだからね!?
「いやいや、ほらこれ。」
「…はぁ。」
「なんで!?」
これで理由がわかるだろうと俊君の手を掬うようにして手のひらを重ねた。丁度第一関節の中腹位で収まった僕の手は、しっかりとした男の人になっている俊くんの手に比べるとなんだか細っこくて情けない。
追い打ちをかけるかのように、ぎゅうと指を絡めてくるように握ってくるもんだから、余計に。
「…俊くんの指カワウソみたいで可愛いね。」
「かわうそ…」
ちょっと深爪過ぎやしないかと指先をむにむに押す。雄臭い手に憧れはするが、このちっさい爪とかみてると可愛いところもあるのかと思う。
「んふふ、食べちゃいたいくらい可愛い。」
「お前が言うか…」
「んえ?」
なんもねーよ。と、若干不機嫌になりながらも諦めて手を貸してくれている。ひとしきり満足するまで俊君の手指を存分に愛で終える頃には、耳を赤らめながら無言になっていた。
なんだか最近俊君のご機嫌が不安定である。僕のせいだったらどうしようと思わなくもないが、怒られてから考える事にした。
「そろそろ出よう。周りの目が気になる。」
「周りの目?」
なんで?、と周りをみやれば慌てて逸らされた。僕と俊くんの謎のやり取りは、午後の有閑マダム達や学校帰りの学生、そしてウエイトレスさんまでバッチリ見られていたようだ。おい、パンダ扱いか!
俊君も呆れたように見せもんじゃねーっての、と、低く呟いていたが、僕はその声の良さに思わず反応してしまい、ワンモア!と気持ちを込めて見上げれば、下心はバレているとばかりに料金表を挟んだバインダーでおでこを叩かれた。解せぬ。
結局割り勘にするつもりが俊君が全部払ってくれるというスパダリ行動をして、僕はなぜかレジのお姉さんに飴をもらうという小さい子のような扱いを受けた。
「レモンがいいです…」
「結局選ぶんかい。」
「あて、」
最近小突かれること多い気がする!こんっ、て痛くない程度に頭を小突くという細やかな気遣い。
場面に応じた痛みの強弱をつけるとは…俊くんにサドの気配を感じる。イケメンでサド…悪くない、悪くないぞ…うふふいいぞもっとやれと内なる僕が客観的にもうしておりまする。
結局レジのお姉さんからはかごに入っているレモンキャンディー全部くれたぞ、いいんか。
持ちきれない分は俊くんのズボンのポケットに押し込んだ。これくらいはしてもいいと思う。
お店を出て目についた新作のフラペチーノに反応をしまくったせいか、俊くんを巻き込んでシェアして飲もうと拝み倒して無事にゲットしました。
みてこのシラタマソイソースフラペチーノショット追加ウィズあんこ生クリームマシマシ。
まあみたらし団子風味だよね普通に。んまぁ。和。マジ和。
「きいち、さっきの店でもパフェくってたよな…?」
「いや駄目でしょ、こんな新作を全面に出されちゃ買わねばならんよな誠に。」
「何キャラだよ…。」
ちうちうと太めのストローで飲みながら商店街を歩く。なんと僕と俊くんをの家は同じ方向なのだ。いいだろう!うんうん。放課後のデートみたいじゃんね?でも、朝は部活があるとかで被らないんだけどね。
かじかじとストローを噛む。これも実は八ツ橋の味がする硬めのクッキーだ。たべれるストローってやばないですか。サスティナビリティーな時代ですね。よき。
「んま。」
「別に飲み方はお前の自由だからいいんだけどさ…」
「飲む?」
「…ストロー食ったら吸えないだろ?」
絶対それ食う順番間違えてんだよなぁ…というご指摘に、最後のひとくちをサクサクいっていた僕は我に返る。
まだフラペは半分以上残っている。まさかそんな…だってアイスのコーンのようなものだと思うよね!?もしくはウエハース。
全部いっちゃったよ、ときすでに遅しと言うやつである。
「ぐ、蓋開けて直のみ…」
「やめれ、ペットボトルもうまく飲めねーのになにいってんだ。」
「うう、お店戻ってストローもらう?」
「めんどくせ、もうここまで来たら帰ったほうが早いだろ。」
たしかし。もう角を曲がればすぐなのである。むしろ俊君の家なんかそこの道路渡ってすぐだしな。僕んちのが少し離れてるくらいだ。
中学校に通うときは反対方向だったのだ。しかも近道するせいで、なかなか会う機会がなかったし。
今更ながら角を曲がるか曲がらないか一つで学区が変わるとは…。まあいい、問題は今はそこじゃない。
「うう、ストローのないフラペもってひとりでかえんのはずかしい…ああ、やっちゃったんだなあのこって見られるのすごく嫌…」
「べつにそんな気にして見ないだろ…」
「だとしても聞かれる前に説明すんのもめんどくさい。」
「ああ、お前そういつやつだったよな。」
なら余計に言わなきゃいいだろという最もなご指摘を甘んじて受けるも、こればっかりは性格ですからぁしゃーないですね。
ご近所さんに聞かれる前に自分で説明して自爆するタイプです僕は。説明したあとよく言われる言葉第一位は、そこまできにしてなかったのに。である。
「なら、俺んちくる?久しぶりに。」
「え、いく。」
「えっ」
「えっ」
食い気味に即答したら驚かれた。なんで!
「お前、ちゃんと食ってる?」
ぐるりと回された手を見て俊君がなんとも言えない顔をしてくる。どうやら僕の体を心配してくれているようだが、その前に君の手が大きいんだからね!?
「いやいや、ほらこれ。」
「…はぁ。」
「なんで!?」
これで理由がわかるだろうと俊君の手を掬うようにして手のひらを重ねた。丁度第一関節の中腹位で収まった僕の手は、しっかりとした男の人になっている俊くんの手に比べるとなんだか細っこくて情けない。
追い打ちをかけるかのように、ぎゅうと指を絡めてくるように握ってくるもんだから、余計に。
「…俊くんの指カワウソみたいで可愛いね。」
「かわうそ…」
ちょっと深爪過ぎやしないかと指先をむにむに押す。雄臭い手に憧れはするが、このちっさい爪とかみてると可愛いところもあるのかと思う。
「んふふ、食べちゃいたいくらい可愛い。」
「お前が言うか…」
「んえ?」
なんもねーよ。と、若干不機嫌になりながらも諦めて手を貸してくれている。ひとしきり満足するまで俊君の手指を存分に愛で終える頃には、耳を赤らめながら無言になっていた。
なんだか最近俊君のご機嫌が不安定である。僕のせいだったらどうしようと思わなくもないが、怒られてから考える事にした。
「そろそろ出よう。周りの目が気になる。」
「周りの目?」
なんで?、と周りをみやれば慌てて逸らされた。僕と俊くんの謎のやり取りは、午後の有閑マダム達や学校帰りの学生、そしてウエイトレスさんまでバッチリ見られていたようだ。おい、パンダ扱いか!
俊君も呆れたように見せもんじゃねーっての、と、低く呟いていたが、僕はその声の良さに思わず反応してしまい、ワンモア!と気持ちを込めて見上げれば、下心はバレているとばかりに料金表を挟んだバインダーでおでこを叩かれた。解せぬ。
結局割り勘にするつもりが俊君が全部払ってくれるというスパダリ行動をして、僕はなぜかレジのお姉さんに飴をもらうという小さい子のような扱いを受けた。
「レモンがいいです…」
「結局選ぶんかい。」
「あて、」
最近小突かれること多い気がする!こんっ、て痛くない程度に頭を小突くという細やかな気遣い。
場面に応じた痛みの強弱をつけるとは…俊くんにサドの気配を感じる。イケメンでサド…悪くない、悪くないぞ…うふふいいぞもっとやれと内なる僕が客観的にもうしておりまする。
結局レジのお姉さんからはかごに入っているレモンキャンディー全部くれたぞ、いいんか。
持ちきれない分は俊くんのズボンのポケットに押し込んだ。これくらいはしてもいいと思う。
お店を出て目についた新作のフラペチーノに反応をしまくったせいか、俊くんを巻き込んでシェアして飲もうと拝み倒して無事にゲットしました。
みてこのシラタマソイソースフラペチーノショット追加ウィズあんこ生クリームマシマシ。
まあみたらし団子風味だよね普通に。んまぁ。和。マジ和。
「きいち、さっきの店でもパフェくってたよな…?」
「いや駄目でしょ、こんな新作を全面に出されちゃ買わねばならんよな誠に。」
「何キャラだよ…。」
ちうちうと太めのストローで飲みながら商店街を歩く。なんと僕と俊くんをの家は同じ方向なのだ。いいだろう!うんうん。放課後のデートみたいじゃんね?でも、朝は部活があるとかで被らないんだけどね。
かじかじとストローを噛む。これも実は八ツ橋の味がする硬めのクッキーだ。たべれるストローってやばないですか。サスティナビリティーな時代ですね。よき。
「んま。」
「別に飲み方はお前の自由だからいいんだけどさ…」
「飲む?」
「…ストロー食ったら吸えないだろ?」
絶対それ食う順番間違えてんだよなぁ…というご指摘に、最後のひとくちをサクサクいっていた僕は我に返る。
まだフラペは半分以上残っている。まさかそんな…だってアイスのコーンのようなものだと思うよね!?もしくはウエハース。
全部いっちゃったよ、ときすでに遅しと言うやつである。
「ぐ、蓋開けて直のみ…」
「やめれ、ペットボトルもうまく飲めねーのになにいってんだ。」
「うう、お店戻ってストローもらう?」
「めんどくせ、もうここまで来たら帰ったほうが早いだろ。」
たしかし。もう角を曲がればすぐなのである。むしろ俊君の家なんかそこの道路渡ってすぐだしな。僕んちのが少し離れてるくらいだ。
中学校に通うときは反対方向だったのだ。しかも近道するせいで、なかなか会う機会がなかったし。
今更ながら角を曲がるか曲がらないか一つで学区が変わるとは…。まあいい、問題は今はそこじゃない。
「うう、ストローのないフラペもってひとりでかえんのはずかしい…ああ、やっちゃったんだなあのこって見られるのすごく嫌…」
「べつにそんな気にして見ないだろ…」
「だとしても聞かれる前に説明すんのもめんどくさい。」
「ああ、お前そういつやつだったよな。」
なら余計に言わなきゃいいだろという最もなご指摘を甘んじて受けるも、こればっかりは性格ですからぁしゃーないですね。
ご近所さんに聞かれる前に自分で説明して自爆するタイプです僕は。説明したあとよく言われる言葉第一位は、そこまできにしてなかったのに。である。
「なら、俺んちくる?久しぶりに。」
「え、いく。」
「えっ」
「えっ」
食い気味に即答したら驚かれた。なんで!
21
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
【運命】に捨てられ捨てたΩ
あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる