なんだか泣きたくなってきた

金大吉珠9/12商業商業bL発売

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2章

3人揃えば

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「き、緊急招集ー!!!!!」

朝から元気に走ってクラスに飛び込んできたのは学だ。何やらひどく慌てた様子でわけのわからないことを言っていると思ったら、わらわらと野球部三人が集まってきた。うそだろ、親衛隊を集めるのはご本人なのかよ。

「なんだなんだ、」

三浦くんが立ち上がって木戸くんと吹田くんを手招きする。わらわらと集まってきたガタイの良い三人が学ぶを囲むとカツアゲのように見えて若干治安が悪い。

「お前ら知恵かせ!!3人の坊さん揃ったら坊主の知恵なんだろ!?」
「坊さんっつーかぼうずだけどな。」
「坊さんつーか文殊が正解だけどな。」
「どーだっていいんだわ!!!男って何もらったら嬉しいの!?あいつ誕生日が卒業式なんだってよおお!!」

言うのおせぇんだよクソが!!と、頭を抱えて喚く学に、俊くんは4月だったなと思い出す。というよりも学も男なので自分が欲しいものを渡せばいいのでは?とかおもいながらも、俊くんが向いてくれたバナナをぱくりと頬張った。

「俊くんなにほしい?4月。」
「んー、とくにねぇな。きいちは?」
「僕もないんだよねぇ。」

もくもくと食べながら、時折聞こえてくる悲鳴やら笑い声をバックミュージックに朝のひとときを過ごす。剥いたバナナの皮は俊くんがクラスのごみ箱に捨てた。ゴキブリでたら多分俊くんのせいだと思う。

「誕プレかぁ…」

益子が天井を見ながら言う。年上の忽那さんと付き合っているから、なんだか大人っぽいものとかおくりそうである。野球部の木戸くんはエロ本がほしいとか言って早急に却下されていた。

わいわいと喧しく騒いで欲しい欲しくないと論争を続けていても時間は立つわけで、結局先生が入ってきた事で緊急招集も終わりとなった。

学が教科書で死角を作りながらスマホでギフトの検索をしているけども実りはなさそうである。僕だったら何がほしいかなぁ、と考えてみたけど、今や自分のものというよりもお腹の子が生まれてきたときに使えるものくらいだ。

腹を撫でる僕の手を、俊くんがじっと見つめていたようだが、黒板をぼけっと見つめている僕はその視線に気づくことはなかった。





「やっぱりさぁ、男のロマンだと思うんだよねぇ、プレゼントは俺って。」

ちうちうと牛乳を飲みながら、俊くんに寄りかかって学をみる。僕がギブアップしたパンをもぐもぐと食べている俊くんが、顔を向けてきたタイミングで口元に牛乳を運ぶ。僕ら阿吽の呼吸もばっちしである。ごくんと最後のひとくちを飲み込んだ俊くんが、めちゃくちゃいい声で呟いた。

「シチュエーションも大切だろうが。」

昼休み、いつもの四人で集まったのは、朝の続きを話すためだ。学は自分が欲しいものを上げるというパターンで行こうと思ったらしいのだが、学の欲しいものを聞くと最新型のゲーム機だったので、それは流石に買えないと諦めたそうな。

というよりも末永くんゲームするのか?そんなイメージはまったくないからどっちにしろ却下である。

「シチュエーションかぁ、」
「保険医は保健室、団地妻には団地。そういうふうに相場は決まってるぜ。」
「目には目を、歯には歯をみたいに言う…」

益子の例えは明らかにアダルトビデオ参照ですね。それにしても俊くんが白衣着て保健室にいたら滾るかもしれない…おっとよだれが。

「はっ‥生徒会長には…生徒会室…?」
「閃いちゃったかぁ~」

キュピーンと、背後に稲妻を走らすかのごとくハッとした様子の学に、今までの理論で行くと抱かれる側に付随するシチュエーションなのでは?と思ったけども細かいことはいい。

「れ、冷静になってみ?生徒会室でしてバレたら不味くない?」
「ふ、きいち。男はいつまでも忘れらんねぇもんがあんのよ。」 
「一応聞くから行ってみ…」
「冒険心だよ…そう、これっきゃねえ!!!」

はっはー!!と急にボルテージが上がってきたのか、先程までの追い詰められた表情からは一転して、いまは益子と肩を組んでワイルドにソフトドリンクを呷っている。ぶどうジュースなのに、なんだか目の前の絵面の治安の悪さよ!これもしかして僕のせいになるのだろうか?
僕が安易に、学がプレゼントって言えばとか言ったから?でもここまで予測できるかぁ!
たすけを求めるように俊くんを見上げると、俊くんは俊くんでシチュエーションプレイかとか意味深なことを呟いている。おっとぉ、知らないうちに僕自身の死亡フラグも立ててしまっているねこれは。

「あ、や、ほら。僕もね?もうママだし今はそういうのはね?」
「ああ、ママだもんな。」

めちゃくちゃいい声で普通のことを言っているのにいやらしい気配がするぞ。おい誰かこの場を纏めてくれ。とりあえず 流れ弾を運んできた学は許さん。

「ていうか、そんな猥談話が平気になるくらいエッチしたんだ。」
「おうっふ」

益子のニヤニヤ顔で見つめられた学は、盛大に墓穴をほったようでガチンと固まった。そうじゃん!
盛大に目を泳がした学は、スッ、と指を3本立てた。

「えっすくな。」
「すくない!?うそだろもう3回もしてんだぞ!?」
「僕のときとか最初から複数回したよね?」
「まあ、ヒートだったし番だってわかってたからな。」
「そ、そういうもんなのか…」

顔を真っ赤にしながら慌てる学に、別に少ないだけで変でもないし、人によることをフォローしておく。でもよく考えたら僕も益子も番の家を行き来してたのと、思春期故のやりたいさかりだったからかもしれん。

「でも、4回目がシチュエーションプレイってのは流石だわ。」
「ウッ」
「きいち、それとどめだわ。」
「あり?」

俊くんの言葉に学の顔を見ると、今まで見たことのないようななんとも言えない表情で固まっていた。
あれ?もしかして余計な事言った?でも多分大丈夫でしょ、末永くんむっつりそうだし。


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