ヤンキー、お山の総大将に拾われる。-理不尽が俺に婚姻届押し付けてきた件について-

だいきち

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天嘉の本音 **

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 狭い布団の中で、縺れ合うようにして重なっていた。熱い、中も外も、全部が火傷してしまいそうだ。
腹を手で隠そうとした天嘉の腕を、蘇芳が己の首に絡ませる。熱いから布団の外に出たいのに、体をずらそうとすると腰を引き寄せられて深くまで押し込まれる。

 弾みで出てしまう声は、泣きたくなるくらいに情けない。

「ひぃ、あっ!」
「どこにも行くな、許さぬ」
「あ、ぁつ、くっ、んぁ、あ、あっ」

 熱くて、と言う言葉も続けられずに、天嘉は涙の膜で視界をぼやかせながら蘇芳に縋り付く。
 恥ずかしい。腹を撫でられるのが、すごく恥ずかしかった。

「ぃや、ら、あっ!は、腹…ぁ、あっやだ、あっ」
「お前の全てを見ているのに、孕み腹を見られたくないなどと、」
「ひぅ、あ、あっ」
「俺がおまえを嫌悪するわけがないだろう!」

 ぐっ、と腰を強く押し付けられ、顔の近くで吠えられた。びくりと肩を揺らし、天嘉の目からぼたりと涙が溢れる。蘇芳と番ってから、天嘉の情緒が安定しない。一挙手一投足に心の軸を揺れ動かされることが悔しくて仕方がないのに、好きになんかなってしまったから、自分がどんどん雌にされていく。心は蘇芳をこんなにも求めているというのに、男の自分が膨れる腹を気にするのだ。

「お、ぉれが…っ、さ、さいしょからっ、おんな、だったら、っぁ、アッ…」

 悲痛な声で、か細く口をついて出てしまった。天嘉のその言葉に、目を見開いた蘇芳は腰を止めた。揺さぶられ、激しい運動に荒い呼吸を繰り返していた天嘉は、束の間の休息に身を浸すことを許される。
 上下する白い胸はかすかに膨れ、天嘉の慎ましかった胸の頂きも少しだけ大きくなっていた。

 男だった天嘉の体を、蘇芳が雌にしたのだ。
 蘇芳は、少しだけ乱れた呼吸を整えるようにして体を持ち上げると、身を投げ出すようにして肺を膨らます淫らな姿の番いを見下ろした。

「………、」
「ん、ん…っ、」

 腹に触れていた手のひらを、ゆっくりと胸元に滑らせる。指先に触れた胸の頂きを押し込むようにして刺激をしてやると、じわりと何かがしみ出た気がした。

「お前の矜持は、まだ雄のままなのだな。」
「ふあ、っ…」

 甘く静かな低い声は、慰めるようにも聞こえた。
天嘉は性感でとろけた思考のまま、ぼんやりと蘇芳を見上げた。
 唇に触れた親指をぺしょりと舐める。ほのかに甘く感じる指先は、まるで躾けるかのようにして舌の上を擦る。

「お前は、俺の雌だ。俺に無条件に愛され、そしてその身を呪いのように同じ紋で縛っている。」

 蘇芳がそっと体で囲うようにして、天嘉の体を抱き込んだ。
 腹の奥で、性器を待ちわびるように内壁が媚びたような動きをする。
 唇が触れ合うような距離まで顔を近づけると、天嘉の長い睫毛がフルリと震えた。

「お前がまだ、己を人だと思っているのならそれは違う。人間の常識は捨てろ。お前は俺のものだ、俺に合わせて生きろ。俺がお前の全てを奪ったのだ、だからお前には俺の全てをやる。」

 お前は人ではない、俺の雌だ。

 酷く突き放したように人を辞めろと宣った。理不尽な物言いは真っ直ぐに天嘉の胸に突き刺さる。蘇芳の瞳は、剣呑な光を点して見つめていた。普通ならきっと怖がって、罵って、違うと叫んで否定をするのだろう。 
 天嘉の駄々を待つように、蘇芳は至近距離でじっと言葉を待った。

「後悔してもいい、それはお前の権利だからな。」
「すお、」
「だが否定はするな。お前自身を貶めるような言葉は、この俺が許さぬ。」

 指を絡めて握りしめられた手の力が、かすかに強まる。腹に性器を納めたまま、天嘉はまるでその言葉をゆっくりと飲み込むようにして胸を上下させた。

 弱いなあ、天嘉は自身の事をそう思う。自分で納得して、受け入れたくせに。いざ本格的に腹が膨れると怖くて仕方がなかったのだ。
 睫を涙で濡らしながら、ぺしょりと蘇芳の唇を舐めた。まるで許しを請う雌である。

 口を開かねば許さぬ、そう蘇芳の瞳は語っていた。

「お、おれ…は、…」

 慄える、声に出して言うのは怖い。嫌わられたらどうしよう、その意識が苛んで、誤魔化してしまいたくなる。

「お前を、雄として見てるから…恥ずかしかった」

 ぐすりと鼻をすすりながら、蘇芳の手の平を膨れた腹に添える。
 この歪な体を晒して、次はもういいと言われるのが怖かった。

「ふ、ふとったし…だらしねえって、お、おも、われ、たくね…」

 蘇芳の手のひらの上に、天嘉の手のひらが重なった。腹の中の子にはまだ胎動がない。しかし居るなという感覚はある。言葉にするのは難しいが、腹の子が妖力を吸う感覚があるのだ。

 膨れて、腰回りの肉付きも良くなった。己のだらしなくなった体を見られる勇気がなかったのだ。

「子が嫌ではないのか。」
「うん…、」
「ほんとうに?」
「おれは、」

 蘇芳の体を引き寄せた。首に縋り付き、頬を寄せながら不器用に甘える。濡たけ天嘉の声は、空気を震わしながら言葉を紡ぐ。

「俺は子で縛れる…だから、うれしい」
「お前、」

 蘇芳はその言葉に、全身の神経がさざなみのようにざわめいた。鼓膜を震わした天嘉の本音は、なんとも醜い独占欲の塊だ。蘇芳と同じ、腹に抱え込んで離したくないという醜い独占欲。
 己の暗い欲と同じものを、番から差し出されたのだ。

 蘇芳はその言葉に身を侵されるかのようにして打ち震えた。甘い毒だ、その言葉は酷く身を溶かす。
 この幼い雌は、きっとその欲こそ汚く思っているのかもしれない。縁のない腕の中の番いを孕ませたのはこちらなのに、今は天嘉のほうが決してな離さぬという執着を己に感じているとは。

 興奮し過ぎて、思わずその手に脚鱗が走る。醜い腕に滑らかな素肌の対比のほうが、酷く歪だ。

「見ろ、お前の言葉でこうなるほど、俺は喜びに震えている。」

 鉤爪になってしまった己の手を見せつける。黒い爪は湾曲している。興奮するとすぐに妖力の制御が出来なくなる。人の肉など簡単に引きちぎれるその手を、天嘉はなんの衒いもなくそっと触れた。

「俺が、孕み腹晒したんだ、お前も見せろ、それで抱け。」
「まじでか」
「ふはっ、うん…抱いて、それで。」

 天嘉の言葉に驚いた。だって、蘇芳の気に食わぬこの姿で抱けというのだ。傷つけるかもしれないという恐れに戸惑うと、天嘉はその脚鱗の先を口に含んで奉仕する。
 好きにして、孕ませたなら最後まで責任を取ってお前の好きにしてくれと、まるで乞い願うように蘇芳の腰に足を絡ませ引き寄せる。


「俺を満足させて、お前の恥ずかしいとこ全部見せて。」
「…わかった、晒そう。」
「わ、」

 天嘉のおねだりに、蘇芳が折れぬはずはないのだ。
 蘇芳は瞼を閉じて俯くと、ざわりと妖力を漲らせた。長い黒髪が徐々に羽に変わり、そうして首から上は整った顔を仮面で隠すようにして、徐々に猛禽の顔へと変貌を遂げる。繋がった下肢は人のままなのに、脚鱗の浮いた鉤爪や、肩甲骨から伸びた羽は立派なのものだった。

 天嘉は嬉しそうに顔を弛めると、その蘇芳の薄く開いた嘴から見える分厚い舌に吸い付いた。まるで性器に奉仕するように、舌先に吸い付いて口で扱う。クルルと甘えるような声が喉の奥から漏れ出た。蘇芳は鉤爪で優しく腹を撫でると、細腰を鷲掴む。

「っぃ、んぅ…」
「お前は、ほんとうに出来た雌だ。己が番いの全てを受け入れる出来た雌である。いっそ、腹の中側にしまい込んでやりたいよ。」
「死んだら、食っていいよ。でも産んでから死にたい。」
「けったいなことを抜かすな、死なさぬ。母として生きよ。雌の職務を果たせ。」
「うん、ぁあ、ぁ、くっ!」

 じゅくりととろけたそこに、蘇芳の性器が深く突き刺さる。そうだ、わかっている。蘇芳は天嘉の情けない姿も可愛らしいという頭のおかしい妖怪だ。それに惚れ込んだ天嘉も、またこの蘇芳の醜い姿を愛しいと思う。

 自分の見た目を気にする天嘉が、蘇芳の見た目を気にしないように、また蘇芳も天嘉の見た目を気にしていなかった。
 女だったらと囚われていた頑なな思考は、蘇芳によって引きちぎられ、天嘉はこうして蘇芳の羽の内側で与えられる歪んだ愛情を嬉しく思う。

「あ、ぅっ、んん、あ、あー‥っ!」
「鳴け、媚びよ。俺の雌なら楽しませろ、そうだ。お前はほんとうに出来る子だ。ああ、幼く愛らしい。」

 鉤爪が天嘉の腰に食い込む。ガツガツと揺さぶられ、蘇芳の豊かな漆黒の羽に精液を散らしている。
 振り子のようにゆれた性器に興奮した蘇芳が、がぶりと肩口に嘴を食い込ませる。

 鋭い痛みだ、でも天嘉はそれが嬉しかった。マゾなのかもしれない。そんなことを思いながら、嬉しくて嬉しくて、はしたなく小便を漏らす。

「す、ぉっ…蘇芳、もっと、ぁっい、いぃ、っ」
「もっとか?うん、可愛い、可愛いなあ、」 
「ひゃ、ぁあっあっ!い、イぅ、あっ、ぁあっあ!」
「ほら、喜んでいる。わかるか天嘉。」
「はぁ、あ、あっ、んぅ、ふ…っ、」

 揺さぶられ、奥の部屋をガツガツと堀削する。妖力を晒した蘇芳が無理くりこじ開けだ結腸に、注ぎ込んだ妖力は貪欲に天嘉の腹に飲み込まれていく。

 甘やかに喘ぎながら、キツく性器を締め付ける。
 ウルルと喉を震わせた己の番いが、ごちりと奥深くまで含ませる。その性器の先端から、夥しい量の精液を注ぎこんだ。

「ーーーーーっぁ、」

 ごくごくと飲み込んでいる。己の腹が、そういうものになっている。蘇芳によって作り変えられたその体が、貪られるのを喜んでいるのだ。
 食い込んだ鉤爪が、嘴が痛い。きっと明日にはえらいことになっているだろう。だけど、この身に蘇芳の証が残るのは嬉しかった。

 甘い味だ、天嘉の血はとろめくような蜜である。
 蘇芳は己の身体が漲るのをしかと感じ取っていた。質の悪い妖怪に愛された哀れな人間、普通はそう見られるはずなのに、天嘉は自分の体型の変化を蘇芳に厭われる方が嫌だったという。他人の目よりも俺の目か。その狭い視野が哀れで愛おしい。

 天嘉は馬鹿だ。無知で視野が狭くて子供っぽい。でもそれでいい。その幼いままずっと、蘇芳の羽の内側で愛されていれば良い。

「あ、愛し、て…っ、」

 媚声の合間、掠れた声で小さく囁かれた言葉は、蘇芳の恐ろしく研ぎ澄まされた聴覚がしかと拾った。
 こうして確かめないと愛も囁やけぬ不器用な番い。蘇芳が無意識に呟いたであろう天嘉の言葉に応えたら、きっと羞恥でまた泣くのだろう。そう思うと、子供染みた駄々も等しく愛おしい。
 だから蘇芳は言葉を返さなかった。其のかわりに包み込むように抱き込んで、天嘉の声が枯れるまで腹に教え込んでやったのだ。


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