恋に恋するお年頃

柳月ほたる

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第三章

10 母の教え

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 ミアの色々と無自覚なところをお説教されていたはずなのに、いつの間にか頬が緩んでしまう。
 えへへと照れ笑いすると、アルベルトが険しい表情を作って眉に皺を寄せた。
「こら、本当に分かってるのか? それに今日のドレスだって胸元が大きく開きすぎだ。こんな姿を他所の男共に見せたかと思うと、嫉妬で気が狂いそうになる」
「それは……っ」
 それはあなたがドレスを乱したから、とは言えなかった。
 なぜなら、また彼に唇を塞がれてしまったから。

「ア……ル……ッ! んっ……ぅ、ん……」
 寝台に繋ぎとめられ、深い深いキスを重ねられた。
 最初は少し戸惑っていたミアも、強く求められているうちに思考が熱を孕んで鈍くなる。
「ミア……、一生君だけを大切にすると誓うよ」
「……ん……、ぅん……」
 もっとずっとこうしていたい。
 二度と離れたくない。
 誰よりもあなたの近くにいたい。
 ああ、彼が自分にこんなに夢中になってくれる日が来るなんて夢みたいだ。

 だからアルベルトの手がそっと胸に置かれてもミアは抵抗しなかった。
 キスをしながら細い絹のリボンを引っ張られ、背中のホックもプチプチと外される。ミアの細い腰を乱暴にまさぐった彼が、きつく締められたコルセットを緩めると、ミアの体がふわんと解放された。
「は……、ぁ……っ」
 そのまま大きな手が、コルセットと素肌の間を滑っていく。
 それは優しくミアの胸を包み込み、ゆっくりと形を確かめるように捏ね回した。じわじわと侵食していくような、穏やかな快感の波。
 たまに先端にある小さな突起を弄られると甲高い声が出てしまったが、それは全てアルベルトの口に飲み込まれる。

「ミア、……いいね?」
「ふ……ぁ……?」
 ちゅ、と音を立てて唇が離れた。
 散々嬲られた唇はじんじんと熱をもっている。
 ミアの小さな唇がすっかり腫れてしまうまで、アルベルトは彼女を放してくれなかったのだ。だがその痛みですら彼から与えられたものだと思うと愛しく感じてしょうがない。
「……?」
 真剣な目をしているアルベルトをぼんやりと見つめ、ミアは彼の言った言葉を反芻した。
『いいね?』の意味とは何なのかと。

 ミアは今、王城の中にある一室で寝台に押し倒されている状態だ。それだけではなくドレスははだけられ、コルセットまでほとんど外れかかっている。
 ミアに跨がったアルベルトは胸元のボタンを外し、たった今シャツを脱ぎ捨てたところだ。
 この状態で同意を得なければならないこととは、一体。
 普段は大して回転しない頭が、今日は必死に動いてその答えを探す。
 そしてしっかりと筋肉をまとった芸術的な裸体に頬を染めながら、ミアはやっと思い当たった。
 そうだ、これが母の言った『結婚までは一線を越えてはならない』の『一線』の部分なのだ、と。

 初めて自分が置かれている状況に気がついたミアは、途端に焦り出す。
 どうしよう、アルベルトは今夜体の関係を結ぼうとしているらしい。
 だがこのまま流されてしまったら両親を失望させるに違いない。それどころか、ミア自身も、そして大好きなアルベルトでさえも、結婚前に不埒な交際に及んだ愚か者だと後ろ指を指されてしまう。
 そんなの、絶対にだめだ。

 おろおろと視線を彷徨わせたミアは、再び覆いかぶさってきたアルベルトをぐいっと押し返した。
 そして決死の覚悟でキッと彼を見つめる。
「ミア……? どうした?」
 突然拒絶の態度に転じたミアに驚き、アルベルトは戸惑うようにミアを覗き込んだ。そして労わるように優しく髪を撫でてくれる。
 優しく温かいその手にミアの決心はグラグラと揺れたが、ミアはもう一度決意して、そしてすっと息を吸い込む。
 本当はミアだって身を任せたい。でも、だめなものはだめなのだ。

「ごめんなさいっ! 私、結婚するまでは純潔でいなければいけないの……!」

 目をぎゅっとつむり、ミアは一思いに言い切る。
 しばらくの沈黙が落ちて、おそるおそる片目を開けると、そこには唖然とした表情のアルベルトがいた。
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