中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第三章 俺様、王都へ行く

12、痛いから放しやがれ。

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 王城まで飛んで、開いている窓から中に入ってみた。
 が、書庫がわからない。廊下に出てポテポテ歩き始めたらすぐに執事っぽい人が来た。優雅に歩いているんだが、凄く早い。キビキビとはこういうことか。その人に案内を頼んでついていった。


「聖竜様!」
『うむ、来たぞ』
「次からはちゃんと入口からお越し下さい」

 執事らしき人に怒られてしまった。
 驚いた顔で出迎えてくれたウェルナー君に借りていた本を返す。
 一昨日の夜の騒ぎで今日も来ないと思っていたそうだ。



『今日は、地理について聞きたい。この国と周辺国家について特に』
「そうですね……では」

 ウェルナー君がどこからか地図を出してくる。
 当たり前のように見せてくれたそれは、アルベルトが持っていたものよりも精緻だった。
 その地図によると、世界はオーストラリアをさらにでかくしたような一つの大きな大陸だった。

『この、大陸の外側。黒く塗られているのが海か?』
「いいえ、この黒い部分は暗黒破壊神の支配地です。……海というのは?」
『む? 泉よりも大きな水溜りだ。世界は、その海に我々の暮らす大地が浮いている』

 しまった。この世界には海という概念はないのか?
 黒く塗られた場所に囲まれているから、海というものを知らないだけという可能性もあるな。
 俺が竜だから、空高くから見た、という説明で一応は納得してくれたが。もともと研究者であったウェルナーは「海」という初めて聞く単語に食いついてしまった。めんどくせぇ。
 俺としては暗黒破壊神の支配地ってやつの方が気になるな。


『話を戻すが、暗黒破壊神の支配地というのは? 人は住んでいないのか?』
「ええ……人はいない、ということになっております」

 モンスターの跋扈する未調査地、それがこの黒く塗られた地域なのだと。
 周辺諸国が何度も調査隊を送っているが、誰一人として帰ってこない、とされている。

 まぁ、その辺の話は興味あるけど今は良いや。
 召喚に失敗したって言うノルドはこの国セントゥロの西、アスーが南でオーリエンは東にあるそうだ。


 各国は領土を暗黒破壊神の支配地に接しており、度々調査団を派遣して国土を伸ばしてはモンスターの襲撃によりそれを失ったりを繰り返しているらしい。
 暗黒破壊神が封印されている内は、セントゥロにも侵攻してくることが度々あったが、復活した今は協定を結びこれに対抗する姿勢だそうだ。
 何その都合のいい扱い。国王がおっとりしすぎてるから都合よく扱われてるんじゃないの?


『勇者が召喚されたと聞いたが』
「はい、その情報は入っております。今はまだ戦える段階ではないので護衛と共にレベル上げをしていると」

 暗黒破壊神がどのくらいの強さかは知らないが、既に二国の勇者が死んでいる。
 聖女も勇者も聖竜も単独では敵わないというのであれば早急に合流すればいいのに。そうならないのは国家間のしがらみか。

『ふん、勇者が来ぬというのなら、癪だが俺様が行ってやろう。どうせ、暗黒破壊神を倒しにこの黒の領域に行かねばならぬでな』
「そ、それは、ルシア様も共に行くということですか?」

 尻尾でビタビタと黒く塗られた部分を叩きながら言うと、ウェルナーは目を見開いて反対した。

『当たり前であろう? ルシアは聖女だぞ。それとも、単体では暗黒破壊神に敵わぬとしっておきながら守る者もいないこの国に一人おいておくのか?』
「ぐっ。そ、それは……ですが陛下が何と仰るか」
『国王が決めることではなかろう? それとも、娘可愛さに暗黒破壊神の支配を良しとするか?』
「聞き捨てならない話をしているね」

 そろそろルシアちゃんが来る時間だからだろうか。おっとり国王が書庫に現れた。
 会話を聞いていたのか、いつになく厳しい顔をしている。
 先日までのルシアちゃんにデレデレしていた男と本当に同一人物か? ってくらいだ。


「あの子が大事なのは確かだよ。でも、見くびらないで欲しい。自分に課せられた使命を重く受け止め、聖女として行動するあの子を止めるつもりはない」
「陛下……」

 見直した瞬間「あぁぁぁどうしようウェルナーくぅうん、あの子が怪我をしたりなんかしたらぁぁぁぁ」なんて涙びしょびしょに飛ばしながら言わなきゃカッコ良かったのにな。


『それで、勇者を擁している国は何と? 力を合わせて戦わねばならぬのだろう?』

 落ち着け、と尻尾でビンタをしてやった。
 気になるのは、勇者の動向だ。こっちから行ってやって入れ違ったら……俺一人で偽物と戦うことになる。つまりは俺の独壇場。良いな、それ。

「勇者は修行中で動けない、の一点張りでね。オチデン連合国の例もあるから、早く勇者とルシアちゃんを合流させたいんだけど……」

 ビンタしていた俺の尻尾をギュっと握るおっとり国王。

「だからね、聖竜殿? うちのルシアちゃんを宜しく頼むよ?」

 ギギギギ、と力む音が聞こえそうなほど尻尾を掴む手に力が籠る。
 本当の本当に頼んだからね、絶対に守ってよ、ね? と涙目で訴える国王。痛いから放しやがれ。

『うむ、全力を尽くそう』

 にこりと満足そうに笑って離れてくれた。
 全力は尽くすとは言ったけど、守るとは言ってないからね? まぁ、守るけどさ。
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