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第四章 俺様、西方に行く
(閑話)聖女の旅 1
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「どうぞ、あらゆる災厄からこの地を守る力をお与えください」
いなくなったリージェ様をすぐにでも追いかけていきたかったのですが、お勤めを放り出していくわけにはいきません。
ましてや、教皇様がお亡くなりになった今、やることは山積みです。
そのせいで運ばれた岩を聖別する式典が一日遅れてしまいました。
リージェ様が「天罰」として教皇及び教会を滅ぼしてから一夜明け、いなくなった騎士団長の代わりに、副団長だったジェレミア様が繰り上げでその地位に就きました。
兼ねてよりエミーリオ様の補佐として敏腕を振るっていらっしゃったそうで、「いなくなっても何も変わらない」とまで言われておりました。
教会では、教皇の側仕えだったシスター達全員が見習いに降格。救護院で修行を積むことになりました。
新しい教皇様にはジャンパオロ様が就かれました。ジャンパオロ様はかつて先代教皇様の下で堅実に教会や救護院の運営を仕切っておられた方で、教皇交代と共に王都の郊外に蟄居されていたそうです。
さっそく祈祷料の一律金貨一枚という規定が取り払われ、贅沢や交遊を制限する決まりが作られました。
厳格な方らしく、教会や救護院の収支報告にも問題を見つけたとかで、今日も改革に勤しんでおられます。
式典の最初にジャンパオロさまが教皇が就任のご挨拶をされた時、前教皇の悪事を明らかにした上で頭を下げられ、祈祷料についての変革などを公表されておりました。
本来このような式典の場で行う事ではありませんが、これでジャンパオロ様が公正な方だと知れ渡ったようです。
この式典における教皇の役割は祝詞を上げ、場を清めることなのですが、最後の岩の設置場所を清めると早々に教会に戻られてしまいました。
移動中先代教皇への憤りや、リージェ様への感謝を終始語っておられましたっけ。
「では、結びます」
式典は私が王都の四隅に運ばれ設置された岩を巡って祈りを捧げ結界を張って終わります。
祈りを捧げ聖別した岩は清浄な空気を纏っており、元々が白い岩なのですが更に光り輝くようです。
今聖別を終えた岩でちょうど四つ目。
私が祈りを捧げると同時に、目の前の岩から光が伸びていきます。その光は聖別された岩へと届き、その岩からまた光が伸び。そうして王都を包み込むように幕を張ると、一瞬強く光ってまた透明になりました。
「終わりました。これで今宵から皆安心して眠れるでしょう」
周囲で見守っていた人々から歓声が沸き、大地を揺らしました。
救護院ももう私抜きでも大丈夫ですし、これでようやくリージェ様を追いかけられます。
お父様からこの日のためにいただいた馬車はもう宿屋の停車場にあり、準備は万端。
「もう行くのかい?」
「お父様」
いつの間に先回りしたのか、式典に沸く民衆の中をくぐり抜け宿へとたどり着いた私を宿の入り口で待っておりました。
「ルシア、ちょっと」
中で話そう、と促すその顔も口調も、いつもとはまるで違っていて。
混乱する宿の主人に椅子を一脚部屋に運んでもらい、人払いをお願いしました。
「それで、一体どうしたのですか?」
「殉職した教皇は、オチデン出身だった」
何が言いたいのかよくわからず、首を傾げてしまいます。
オチデン連合国……確か、私が産まれる前まで戦争をしていたと授業で教わりました。
「教会を腐敗させ、国力を落とそうとする工作員だった可能性がある」
「そんなバカな! 何を考えているのです!」
今は戦争などしている場合ではありません! と憤る私をお父様が宥めます。
ですが、実際に教会の祈祷料が上がったことで加護を得られず死傷する人が多かったのも事実です。
騎士団にも多くの死者が出ました。人々の信仰が薄れれば加護も薄れます。それが結界が容易に破られた要因の一つでしょう。
セントゥロは確実に護国の力が落ちていたのです。
「それと、オチデンに潜入させた調査員からの報告で、気になる点があった」
暗黒破壊神に攻められて勇者が殺されたというオチデン。
ですが、街はどこも破壊された形跡はなく、人々の出入りも物流もいつも通りだというのです。
その上、暗黒破壊神から民を守るという名目で軍備を拡大しているのだとか。
「ルシア、危険を承知でオチデンの調査を頼みたい。何、結界は普通の人の目には見えん。暗黒破壊神の襲来で壊された結界を修復するという名目で行ってもらいたいのだ」
「ですが、勇者様は……」
「当初の予定通り聖竜殿が行動していれば、勇者は聖竜殿が保護しているだろう。逆方向になるが、もし、公表されている通り勇者が死んだのではなく、どこかに隠されているのだとしたら?」
勿論、公表通り、或いは不慮の事故で亡くなっている可能性もあります。
ですがもしお父様の推測通りその存在を隠されているのだとしたら、他国の国力を下げ、自国では着々と戦争の準備を進めているのだとしたら。
「不可侵条約は暗黒破壊神が再び滅されるまでだ」
疲弊しきったところを一気に攻め込まれる可能性があります。そして、隠されていた勇者がその戦力に使われる可能性も。
「わかりましたわ。きっと、オーリエンとアスーの勇者はリージェ様が保護してくださいます。私は、至急オチデンに向かい勇者の情報を集めます」
「使命を前に、本当にすまない」
「いいえ、勇者様が絡むのであれば、私にも関係のあることですわ」
もしかしたら、召喚に失敗したとしているノルドでも本当は成功している可能性が出てきましたわね。
「お父様、私はオチデンの後、ノルドへ向かいます。その後アスーへと向かいますわ」
「気を付けて」
暫くリージェ様や勇者様と別行動になる私に、お父様が護衛としてアルベルト様達を雇ってくださいました。この王国で最強と言われる高位冒険者のパーティーです。これ以上心強い方々はいません。
この国の防衛が不安になりますが、ダンジョンで着々とレベルを上げている冒険者の方々がいらっしゃるし、結界もあるから何とかなるとのこと。
お父様は通信水晶で国境の各砦と、アスー皇国とオーリエン国に私が先に結界修復のためオチデンに向かうと連絡を入れてくださるそうです。
「よっ、またしばらく宜しくな」
「ええ、宜しくお願い致しますわ、アルベルト様」
手を引かれ馬車へと乗り込みます。共にダンジョンを駆け抜けたメンバーがそこにいました。ただリージェ様だけがいないのが残念です。
お父様の話だと、国境の砦で動向を報告してくれれば、入っているリージェ様の情報を教えていただけるとのことでした。あちらの動向を掴んでいれば、合流もしやすいだろうと。
お父様の好意には感謝しかありません。きっとすぐに追いつきますから、アスーで待っててくださいね、リージェ様!
いなくなったリージェ様をすぐにでも追いかけていきたかったのですが、お勤めを放り出していくわけにはいきません。
ましてや、教皇様がお亡くなりになった今、やることは山積みです。
そのせいで運ばれた岩を聖別する式典が一日遅れてしまいました。
リージェ様が「天罰」として教皇及び教会を滅ぼしてから一夜明け、いなくなった騎士団長の代わりに、副団長だったジェレミア様が繰り上げでその地位に就きました。
兼ねてよりエミーリオ様の補佐として敏腕を振るっていらっしゃったそうで、「いなくなっても何も変わらない」とまで言われておりました。
教会では、教皇の側仕えだったシスター達全員が見習いに降格。救護院で修行を積むことになりました。
新しい教皇様にはジャンパオロ様が就かれました。ジャンパオロ様はかつて先代教皇様の下で堅実に教会や救護院の運営を仕切っておられた方で、教皇交代と共に王都の郊外に蟄居されていたそうです。
さっそく祈祷料の一律金貨一枚という規定が取り払われ、贅沢や交遊を制限する決まりが作られました。
厳格な方らしく、教会や救護院の収支報告にも問題を見つけたとかで、今日も改革に勤しんでおられます。
式典の最初にジャンパオロさまが教皇が就任のご挨拶をされた時、前教皇の悪事を明らかにした上で頭を下げられ、祈祷料についての変革などを公表されておりました。
本来このような式典の場で行う事ではありませんが、これでジャンパオロ様が公正な方だと知れ渡ったようです。
この式典における教皇の役割は祝詞を上げ、場を清めることなのですが、最後の岩の設置場所を清めると早々に教会に戻られてしまいました。
移動中先代教皇への憤りや、リージェ様への感謝を終始語っておられましたっけ。
「では、結びます」
式典は私が王都の四隅に運ばれ設置された岩を巡って祈りを捧げ結界を張って終わります。
祈りを捧げ聖別した岩は清浄な空気を纏っており、元々が白い岩なのですが更に光り輝くようです。
今聖別を終えた岩でちょうど四つ目。
私が祈りを捧げると同時に、目の前の岩から光が伸びていきます。その光は聖別された岩へと届き、その岩からまた光が伸び。そうして王都を包み込むように幕を張ると、一瞬強く光ってまた透明になりました。
「終わりました。これで今宵から皆安心して眠れるでしょう」
周囲で見守っていた人々から歓声が沸き、大地を揺らしました。
救護院ももう私抜きでも大丈夫ですし、これでようやくリージェ様を追いかけられます。
お父様からこの日のためにいただいた馬車はもう宿屋の停車場にあり、準備は万端。
「もう行くのかい?」
「お父様」
いつの間に先回りしたのか、式典に沸く民衆の中をくぐり抜け宿へとたどり着いた私を宿の入り口で待っておりました。
「ルシア、ちょっと」
中で話そう、と促すその顔も口調も、いつもとはまるで違っていて。
混乱する宿の主人に椅子を一脚部屋に運んでもらい、人払いをお願いしました。
「それで、一体どうしたのですか?」
「殉職した教皇は、オチデン出身だった」
何が言いたいのかよくわからず、首を傾げてしまいます。
オチデン連合国……確か、私が産まれる前まで戦争をしていたと授業で教わりました。
「教会を腐敗させ、国力を落とそうとする工作員だった可能性がある」
「そんなバカな! 何を考えているのです!」
今は戦争などしている場合ではありません! と憤る私をお父様が宥めます。
ですが、実際に教会の祈祷料が上がったことで加護を得られず死傷する人が多かったのも事実です。
騎士団にも多くの死者が出ました。人々の信仰が薄れれば加護も薄れます。それが結界が容易に破られた要因の一つでしょう。
セントゥロは確実に護国の力が落ちていたのです。
「それと、オチデンに潜入させた調査員からの報告で、気になる点があった」
暗黒破壊神に攻められて勇者が殺されたというオチデン。
ですが、街はどこも破壊された形跡はなく、人々の出入りも物流もいつも通りだというのです。
その上、暗黒破壊神から民を守るという名目で軍備を拡大しているのだとか。
「ルシア、危険を承知でオチデンの調査を頼みたい。何、結界は普通の人の目には見えん。暗黒破壊神の襲来で壊された結界を修復するという名目で行ってもらいたいのだ」
「ですが、勇者様は……」
「当初の予定通り聖竜殿が行動していれば、勇者は聖竜殿が保護しているだろう。逆方向になるが、もし、公表されている通り勇者が死んだのではなく、どこかに隠されているのだとしたら?」
勿論、公表通り、或いは不慮の事故で亡くなっている可能性もあります。
ですがもしお父様の推測通りその存在を隠されているのだとしたら、他国の国力を下げ、自国では着々と戦争の準備を進めているのだとしたら。
「不可侵条約は暗黒破壊神が再び滅されるまでだ」
疲弊しきったところを一気に攻め込まれる可能性があります。そして、隠されていた勇者がその戦力に使われる可能性も。
「わかりましたわ。きっと、オーリエンとアスーの勇者はリージェ様が保護してくださいます。私は、至急オチデンに向かい勇者の情報を集めます」
「使命を前に、本当にすまない」
「いいえ、勇者様が絡むのであれば、私にも関係のあることですわ」
もしかしたら、召喚に失敗したとしているノルドでも本当は成功している可能性が出てきましたわね。
「お父様、私はオチデンの後、ノルドへ向かいます。その後アスーへと向かいますわ」
「気を付けて」
暫くリージェ様や勇者様と別行動になる私に、お父様が護衛としてアルベルト様達を雇ってくださいました。この王国で最強と言われる高位冒険者のパーティーです。これ以上心強い方々はいません。
この国の防衛が不安になりますが、ダンジョンで着々とレベルを上げている冒険者の方々がいらっしゃるし、結界もあるから何とかなるとのこと。
お父様は通信水晶で国境の各砦と、アスー皇国とオーリエン国に私が先に結界修復のためオチデンに向かうと連絡を入れてくださるそうです。
「よっ、またしばらく宜しくな」
「ええ、宜しくお願い致しますわ、アルベルト様」
手を引かれ馬車へと乗り込みます。共にダンジョンを駆け抜けたメンバーがそこにいました。ただリージェ様だけがいないのが残念です。
お父様の話だと、国境の砦で動向を報告してくれれば、入っているリージェ様の情報を教えていただけるとのことでした。あちらの動向を掴んでいれば、合流もしやすいだろうと。
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