中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
79 / 228
第五章 俺様、北方へ行く

11、忘れてた。

しおりを挟む
『ここもか……』

 一夜明けて、俺達はセントゥロから一番近いという泉、プントへと辿り着いた。
 しかし、泉は枯れ果てて一滴の水分もなくただ乾いた大地が広がるのみ。泉とその周辺の牧草地を管理するために定住している者がいるという話だったが、その建物らしき残骸で辛うじてここがプントであるとわかる程度だ。

「ここも、モンスターに襲われたのでしょうか?」
「そうじゃなきゃここまで荒れないだろ」

 ルシアちゃんの呟きにアルベルトが何を当たり前のことを、と答える。

「人が隠れられそうな場所もなかったぜ」
「足跡もありすぎて追えないね……」

 周囲を見回ってきたチェーザーレとドナートが何も見つけられなかったと言う。
 チェーザーレよ、こんな見通しの良い場所に人がいればすぐわかるだろ? 隠れるって、土の中にか? 怖えーよ!


『ドナート、馬車の轍はあるか? 最近のものだ』


 ドナートは元々猟師だったらしく、足跡を見極められるというので聞いたが、最近のものは俺達の足跡くらいだそうだ。

「皆踏み荒らされているから、最近は馬車は来ていないようだよ」

 俺達が踏み荒らしていない範囲で一番新しいのはモンスターの物らしき足跡だそうだ。国境に向かう小さな点が多数と、国内奥地へと向かう大型のもの。小さいのはイナゴだろうとのこと。


「キャッ?!」
「地下にも何もないぞ」
『貴様はどこから生えてるんだ!』

 ルシアちゃんの悲鳴に振り返ると、1号と4号が泉の中心地からにゅっと生えていた。もぞもぞと動くと泉から出てくる。

「いや、ほら、泉が枯れてるだろ?」
『見ればわかる』
「じゃあ、その泉の水はどこから来てると思う?」

 1号がこちらに向かって歩きながら問いかけてくる。4号はいつの間にか消えていた。
 1号が言うには、泉の源泉はたいてい湧き水なのだそうだ。泉が枯れるということは地下水が枯れるということで、地盤沈下の原因になると。

「地盤沈下って何ですか?」
「わかりやすく言うと大地が割れてその上で生活している人や町、土地ごと地中に飲み込む現象だ」
「えぇ?! それは、暗黒破壊神の所業ではないのですか?!」

 地中の水が枯れることで地下に空洞が云々かんぬんという説明を省いて結論だけ言う1号に、エミーリオだけではなく他のメンバーまで驚いた顔をしいている。
 こっちではそういう自然現象は全部神の仕業か。

『どちらにしろ、昨日今日枯れたわけではないと』
「地下の方はまだ幾分湿り気があったけどな」

 正直、泉が枯れたことを何故そこまで1号が気にするかわからない。

「泉が枯れたから人が移動したのか。移動する前にモンスターに襲われて滅んだのか。いずれにしろ、この世界の人間が地下に隠れてないかと今4号に探らせてる」
『泉が枯れたのが人がいない理由であれば、襲われる前に移動している可能性がある訳か』
「ご名答」

 優秀な生徒をもって先生は嬉しいですよ、とわざとらしく目元を拭うふりをする1号は取り敢えず殴る。

「一応鑑定も使ってみたけど、ここに勇者は埋葬されていないようだしね」
『ほう、そんな使い方もあるのか』

 ベルナルド先生が土地そのものに鑑定がかけられることを教えてくれた。
 さっそくやってみよう。

「全てを見通す神の眼!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【プント】

ノルドの南に位置する泉。またその周辺地。三年ごとにノルドの遊牧民たちが移り住む。定住としている土地の管理者は16名だったが半年前のスタンピードによって壊滅。
さらにロクスタの襲撃によって放牧地のミスカンタスも食い尽くされたため、遊牧民たちが戻ってくるにはあと1年は必要。土の栄養状態は良くなってるから、種と水を撒けば良く育つよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 だから誰だよ、ちょいちょい鑑定に介入してるの! 種なんて撒かないよ。持ってないし。育ててる暇ないし。

『何にしろここにいてもどうにもならんな。先へ進もう』




 エミーリオの案内で次の目的地であるパトゥリモーニオを目指す。そこはノルドで一番大きな泉だから枯れずに残っている可能性があるとのこと。
 ついでに聞くと、今年はそこに王族を始めノルドの民が移住している土地なのだという。それはつまり、そこで勇者召喚が行われた可能性が高いということで。


 それから二日ほど進んだが行けども行けども同じ光景。いったいイナゴ共はどこから来たのだろうか?
 道中、1号がおっとり国王の所にいる7号と連絡を取っていた。ノルドの現状、イナゴの被害、生存者が誰もいないことを報告しこれからパトゥリモーニオを目指すと伝える。

「もしかしたら、モンスターはベネディジョンを目指しているのかもしれない」

 とおっとり国王。そこには女神が暗黒破壊神の一部を封じたとされている黒く大きな岩があるのだそうだ。

「ちょっと行って様子を見てきてよ」
『俺様は貴様の小間使いではないのだが?』
「うん、でも、ほら暗黒破壊神の力が解放されちゃったら大変だよ?」

 遠回しにめんどくさいと言ったのだが、それに被せるように言い含められてしまった。この狸め!
 王族探しに、勇者探しに、黒岩の確認。やることが増えてしまったではないか。

『一体あとどのくらいかかるのだ? いつになったら着く?』
「そろそろ見えてきてもおかしくないのですが……」
「お前飛べるだろ? 文句言ってないでちょちょっと飛んで様子見てこいよ」
『あ』

 忘れてた。そうだ、俺飛べるんだった。

しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...