86 / 228
第五章 俺様、北方へ行く
17、ルシアちゃんマジ天使!
しおりを挟む
『そう言えば1号、弟の息子が勇者の一人と言ったな。つまり貴様の甥だろう? 誰だ?』
ベネディジョンへの道中、馬車に揺られながらふとそんなことを聞いてみた。
確か、クラスには木下なんて苗字の奴はいなかった気がしたのだ。
「ああ、お前友達いなかったもんな」
『ぐっ、今はそんなことは関係なかろう! それに俺様は高貴な存在なのだ友人など……』
「はいはい」
ニヤニヤ笑う1号に軽くあしらわれてキーッと奇声を上げる。またからかわれた……!
「本庄だよ。本庄香月」
『ああ……』
名前を言われて思い出すのは、栗毛の髪に気の強そうな釣り眉釣り目の男子生徒。苦手なタイプかと思いきや、割と世話焼きな上に穏やかに話す大人びた奴だった。常に人に囲まれている割に、一歩引いてそれを見守っているような印象で。武谷同様俺にも散々構ってきた奴だ。
『名字が違うのだな』
「ああ、婿養子に入ったからな」
『きのこが?』
「俺じゃねぇよ。弟の方」
良かった、複雑な事情じゃなくて。何も考えずに聞いてしまったが他人の家庭の事情なんて背負いきれない。少なくとも俺の経験値やコミュ力はそこまで高くない。
「その香月様という方も、すぐに見つかると良いですね」
にっこり微笑むルシアちゃんマジ天使!
会えたら良いねー、うんうん、と話題終了。
その後、ルシアちゃんが乗っている方の馬車を引く二頭に、俺が並走するエヴァと後ろの馬車を引く二頭に回復魔法を幾度かかけ、ベネディジョンへ到着した。
急いだ甲斐があってまだ日は高い。エミーリオが馬の世話をしている間に調査をしてしまおうということになった。
馬車から降りて目に入ったのは、濁りまくって底の見えない泉。パトゥリモーニオのものよりは小さいが、それでもノルドの生活を支える基盤となっていた水源だけあってかなり巨大だ。俺の通っていた学校の敷地二つ分はあるんじゃないだろうか?
「まぁ、明らかに割れてんだが、念のためな」
「そうだね。何が潜んでいるかわからないし、慎重に行こう」
目的の黒岩は泉の畔にあり、完全に割れてしまっていた。爆発したかのように欠片が四散している。
辺りはこれまで同様荒地が広がり、泉も土地も元の色がわからないほどどす黒く変色してしまっている。そして、同じように変色し崩れ落ちた建物が1軒。その瓦礫の下から地下室らしい扉が覗いていて、そこを調べようというのだ。
まずは鑑定だな。情報を入手するには一番手っ取り早い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ベネディジョン】
ノルドで二番目に大きな泉。及びその周辺地域。その昔聖女が暗黒破壊神を封じた際に、封じるしかなかったことを嘆いて流した涙が泉になったとされる。その泉の周りには常に様々な花が咲き乱れ、木は果実を実らせたという逸話からベネディジョン(恵み)と呼ばれる。土地の管理者は25名だった。
半年前に発生したスタンピードが贄となり暗黒破壊神が復活。その瘴気に毒されてしまって浄化をしなければモンスター以外の生き物は住めないでしょう。どうかお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何か頼まれた。この地を浄化しろ? 何で俺が?
と思ったけど、建物に近づいたドナートとチェーザーレが急に咳き込んで倒れた。これはヤバいかもしれない。
『ルシア、結界を張れ! 総員その中に避難するんだ!』
「は、はい!」
ルシアちゃんに馬車の周りに結界を張らせる。ドナートとチェーザーレはアルベルトとバルトヴィーノが布で口を押えながら引っ張ってきた。
「ルシア様、土地の浄化はできる?」
「え、はい。結界の要領で……」
同じく土地を鑑定したベルナルド先生がルシアちゃんに浄化を頼んでいる。
結界の要領ね……。あの黒いのがなくなるようにイメージすれば良いのだろうか? いや、その前に俺結界使えねぇわ。
『ベルナルド先生の鑑定では誰か生存者はいるのか?』
「いいや、ここは死の土地となっているね」
「おいおい、先に言えよ!」
「それならもうここは調べなくて良いんじゃないか?」
生存者はなし、瘴気に冒されモンスター以外生きられない土地になっていると俺と全く同じ鑑定結果をベルナルド先生が口にする。それを聞いてバルトヴィーノが知っていれば不用意にうろつかないのにと怒り、アルベルトが調査をするまでもないから早く脱出しようと提案する。
「で? どうする聖女様?」
「……浄化してから行きます。見たところここに暗黒破壊神はいません」
「いたら俺達の索敵に引っかかってるし、それ以前にとっくに殺されてるな」
アルベルトが決定をルシアちゃんに委ねると、ルシアちゃんは後から来た人がドナート達のように知らずに立ち入って瘴気で死ぬのは防ぎたいと訴えた。
黒岩から脱した暗黒破壊神はバルトヴィーノの言う通り索敵に反応はなく、ここを拠点にはせずにどこかへ行ったようだ。
「女神様、どうかお力をお与えください。この土地の汚れを取り払い、生きとし生けるものに安息の地をお与えください……」
ルシアちゃんが祈りを捧げる横で、俺はドナート達に回復魔法をかける。瘴気の中をうろついていた他のメンバーと馬達にも。
気づけばルシアちゃんを中心に眩い光が辺りを包み、視界が戻ったと思ったら地面や建物、泉に染みついていた黒い物は綺麗さっぱり消え去っていた。
ベネディジョンへの道中、馬車に揺られながらふとそんなことを聞いてみた。
確か、クラスには木下なんて苗字の奴はいなかった気がしたのだ。
「ああ、お前友達いなかったもんな」
『ぐっ、今はそんなことは関係なかろう! それに俺様は高貴な存在なのだ友人など……』
「はいはい」
ニヤニヤ笑う1号に軽くあしらわれてキーッと奇声を上げる。またからかわれた……!
「本庄だよ。本庄香月」
『ああ……』
名前を言われて思い出すのは、栗毛の髪に気の強そうな釣り眉釣り目の男子生徒。苦手なタイプかと思いきや、割と世話焼きな上に穏やかに話す大人びた奴だった。常に人に囲まれている割に、一歩引いてそれを見守っているような印象で。武谷同様俺にも散々構ってきた奴だ。
『名字が違うのだな』
「ああ、婿養子に入ったからな」
『きのこが?』
「俺じゃねぇよ。弟の方」
良かった、複雑な事情じゃなくて。何も考えずに聞いてしまったが他人の家庭の事情なんて背負いきれない。少なくとも俺の経験値やコミュ力はそこまで高くない。
「その香月様という方も、すぐに見つかると良いですね」
にっこり微笑むルシアちゃんマジ天使!
会えたら良いねー、うんうん、と話題終了。
その後、ルシアちゃんが乗っている方の馬車を引く二頭に、俺が並走するエヴァと後ろの馬車を引く二頭に回復魔法を幾度かかけ、ベネディジョンへ到着した。
急いだ甲斐があってまだ日は高い。エミーリオが馬の世話をしている間に調査をしてしまおうということになった。
馬車から降りて目に入ったのは、濁りまくって底の見えない泉。パトゥリモーニオのものよりは小さいが、それでもノルドの生活を支える基盤となっていた水源だけあってかなり巨大だ。俺の通っていた学校の敷地二つ分はあるんじゃないだろうか?
「まぁ、明らかに割れてんだが、念のためな」
「そうだね。何が潜んでいるかわからないし、慎重に行こう」
目的の黒岩は泉の畔にあり、完全に割れてしまっていた。爆発したかのように欠片が四散している。
辺りはこれまで同様荒地が広がり、泉も土地も元の色がわからないほどどす黒く変色してしまっている。そして、同じように変色し崩れ落ちた建物が1軒。その瓦礫の下から地下室らしい扉が覗いていて、そこを調べようというのだ。
まずは鑑定だな。情報を入手するには一番手っ取り早い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ベネディジョン】
ノルドで二番目に大きな泉。及びその周辺地域。その昔聖女が暗黒破壊神を封じた際に、封じるしかなかったことを嘆いて流した涙が泉になったとされる。その泉の周りには常に様々な花が咲き乱れ、木は果実を実らせたという逸話からベネディジョン(恵み)と呼ばれる。土地の管理者は25名だった。
半年前に発生したスタンピードが贄となり暗黒破壊神が復活。その瘴気に毒されてしまって浄化をしなければモンスター以外の生き物は住めないでしょう。どうかお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何か頼まれた。この地を浄化しろ? 何で俺が?
と思ったけど、建物に近づいたドナートとチェーザーレが急に咳き込んで倒れた。これはヤバいかもしれない。
『ルシア、結界を張れ! 総員その中に避難するんだ!』
「は、はい!」
ルシアちゃんに馬車の周りに結界を張らせる。ドナートとチェーザーレはアルベルトとバルトヴィーノが布で口を押えながら引っ張ってきた。
「ルシア様、土地の浄化はできる?」
「え、はい。結界の要領で……」
同じく土地を鑑定したベルナルド先生がルシアちゃんに浄化を頼んでいる。
結界の要領ね……。あの黒いのがなくなるようにイメージすれば良いのだろうか? いや、その前に俺結界使えねぇわ。
『ベルナルド先生の鑑定では誰か生存者はいるのか?』
「いいや、ここは死の土地となっているね」
「おいおい、先に言えよ!」
「それならもうここは調べなくて良いんじゃないか?」
生存者はなし、瘴気に冒されモンスター以外生きられない土地になっていると俺と全く同じ鑑定結果をベルナルド先生が口にする。それを聞いてバルトヴィーノが知っていれば不用意にうろつかないのにと怒り、アルベルトが調査をするまでもないから早く脱出しようと提案する。
「で? どうする聖女様?」
「……浄化してから行きます。見たところここに暗黒破壊神はいません」
「いたら俺達の索敵に引っかかってるし、それ以前にとっくに殺されてるな」
アルベルトが決定をルシアちゃんに委ねると、ルシアちゃんは後から来た人がドナート達のように知らずに立ち入って瘴気で死ぬのは防ぎたいと訴えた。
黒岩から脱した暗黒破壊神はバルトヴィーノの言う通り索敵に反応はなく、ここを拠点にはせずにどこかへ行ったようだ。
「女神様、どうかお力をお与えください。この土地の汚れを取り払い、生きとし生けるものに安息の地をお与えください……」
ルシアちゃんが祈りを捧げる横で、俺はドナート達に回復魔法をかける。瘴気の中をうろついていた他のメンバーと馬達にも。
気づけばルシアちゃんを中心に眩い光が辺りを包み、視界が戻ったと思ったら地面や建物、泉に染みついていた黒い物は綺麗さっぱり消え去っていた。
0
あなたにおすすめの小説
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる